見出し画像

終電車

この間、この映画の事を話していて、『「終電車」って言い方、珍しい。』って言われたんですね。あぁ、なるほど、確かに普通、「終電」って言います。仕事や食事の後とか。

でも「終電車」って響きがいいです。鉄道の持つ趣きを感じます。

なぜタイトルが「終電車」なのか。それは当時のパリの人々が戦争の最中にそうしなければならなかった暮らしのスタイルのことなんですけれども。

フランスのフランソワ・トリュフォーが1980年に撮った映画です。主演は大女優、カトリーヌ・ドヌーヴ、相手役に若かりしころのジュラール・ドパルデュー。

音楽は名作曲家、ジョルジュ・ドリュデュー。映画は真っ赤なバックグラウンドのクレジット・タイトルにリュシエンヌ・ドリールの唄うシャンソン「サンジャンの私の恋人」で始まります。この映画で初めて知った曲ですが、すぐに気に入って、今ではとても好きな歌です。


トリュフォーとドヌーヴはかつて恋仲だったのですが、二人のプライベートの会話でドヌーヴが言ったことをそのまま映画の台詞にしてしまうのでドヌーヴが唖然としたこともあったそうです。

トリュフォーはドヌーヴの姉で早逝したフランソワーズ・ドルレアックとも恋仲だったようで、トリュフォーはモテたのでしょうが、推測するに女性依存も大きかったんだと思います。

物語はタイトルについてでも書きましたが第二次世界大戦中のパリが舞台。舞台女優であるドヌーヴの夫は舞台演出家でユダヤ人。ナチスの迫害を受けています。ここから映画は始まります。

夫を南米に逃したと見せかけて、実は劇場の地下に匿いながら二人で活動を続けています。夫の新作の準備の中、劇団に若い俳優、ドパルデューが現れます。そして、ドヌーヴは次第にドパルデューに惹かれていきます。

三角関係の話なんですが、さっぱりしているというかカラッとしてるというか。ひたすら人間ぽく美しいっていうのか。ドロっとしてないんですよ。物語が。フランスの文化、フランス人の人柄もあるんでしょうけれども。

人が人に惹かれて戸惑いながらもそれに逆らわない。それを見守って許容していく人がいて。そういう三人の物語。

シネマトグラフィーはネストール・アルメンドロス。水彩画のような透明感ある映像に物語を焼き付けています。

映画はジョルジュ・ドリュデューの美しいメロディとともに終わります。美しい純粋な心を持った三人の姿。厳しい時代を乗り越えて堂々と舞台に立ち晴々と上を向くドヌーヴの笑顔が心に残ります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?