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逃げないは似気無い

高校入学前に課題図書の宿題が出た
太宰治の『人間失格』。
27にもなればこの本が課題になった理由が気になるし、
何と答えれば良かったのだろうと考えを巡らす。
15の私は「恥の多い生涯を送ってきました。」で始まる
主人公の独白に魅入られてしまった。

小学生からイジメにあっていたと周りには言ってきた。
中学生でもイジメにあってきた。
高校生でもイジメにあってきた。
今は、自分だけはみ出そうとしていたのを
狭いコミュニティが気付かせてくれようとしてたのだと思う。
イジメていた誰もがイジメようと思ってなかったと分かる。
そのくらい当時の自分勝手を呼び起こす事がある。
当時に向かって「何がしたいの?」と聞くと
どの自分も「楽しみたかった。」と答えてきた。
「楽」の語源は楽器から来ている。
楽器を楽しむには調和が大事だと、ド素人ながら思う。
調和をとれる人間だと思っていた。
皆で演奏する事は楽しいと分かっていた。
でも本当はそうではないと今になって気付く。
誰より自分の時間が必要で、他は分からないだろうな、
伝わらないだろうな、と思うものがたくさんある。
そうやって他人の器を決めつけて覆水を自分でせっせと作る。
「恥の多い生涯を送ってきました」

恥とは、気付くまで恥だと思わない。
気づいた時はゲームなら上がりの段階で
恥のスコアが身体中にきざまれていく。
嘘だってそうだ。
前借りしたその場の安心という借金が
バレる上がりのターンに一斉に降り掛かってくる。
もう借金は数年分しているし、
返済の目途がギャンブルで一発当てる以外に立つことはない。
「恥の多い生涯を送ってきました」

「恥じることのない生涯」を持っている人は
エンカウントしたもの全てに勝った人ではなく
エンカウントしたもの全てと戦った人。
勝とうが負けようが良かったんだ。
「百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり」
なんて理想の勝率を考えながら生きなくて良かったんだ
もし過去に戻れるなら何かを変えるのではなくて
野球が上手くなっていくという、生々しい成功体験を
生まれてはじめて味わってた9歳に伝えたい。 
上手くなったって引越して努力が無駄になって
一番下手なテニスクラブの身が入らない練習をしてた
11歳にも伝えたい。
高校に入ってクラスと馴染もうとしないのが
格好いいと思って失敗した16歳にも伝えたい。
良いんだよ、負けても。
ただ逃げるなよ、自分だけ救おうとするなよ。
自分の殻が堅くなったって破るのも自分なんだよ。
そう伝えてあげたい。
「恥の多い生涯を送ってきました」

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