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魚たちの愛すべき知的生活

題名:魚たちの愛すべき知的生活 ~何を感じ、何を考え、どう行動するか~ 

作者:ジョナサン・バルコム

翻訳者:桃井緑美子

出版社:白揚社

・誤解されている魚たち

・魚は何を知覚しているか

・魚は何を感じているか

・魚は何を考えているか

・魚はだれを知っているか

・魚はどのように子をつくるか

・水を失った魚


海、川での釣りはおろか、スキューバダイビングも潮干狩りもしない私だからではなく、魚のことを良く知る人にとってもきっと驚きの連続だと思う内容です。

イカの知能は犬並みとか、タコは2~3歳児の幼児を上回る知的動物、なんて話は時々聞きますが、この本を読むと、魚たちがそんなレベルではない知性と感情を持ち、社会的な生活を営んでいることがよ~~~くわかります。

魚に限らず生き物に興味がある人なら、きっと最後までワクワクしながら読み進めることができると思います。

興味深いエピソード満載で、どれが一番、ということは言えませんが、

・魚はだれを知っているか の章の中の

「魚同士のおつきあい」は特に面白かったです。

ベラ、スズメダイ、ジャックフィッシュ、キコバンザメなどの掃除魚が、身のこなしや明るい体の色を利用して目立たせるのが「営業開始」の合図。床屋さんの店先のくるくる回るトリコロールのやつと同じ発想なんですね。寄生虫や死んだ皮膚組織をなどの不要物をとってもらいたい「お客さん」は、掃除魚のところに集まってきて順番を待つわけですが、なじみの客は新規よりも優遇されるし、複数の掃除魚が営業している場合、お客さんの魚はぶらぶらどちらも観察し、より忙しい(人気がある=お掃除スキルが高い)掃除魚を選ぶそうです。

掃除魚はお客の魚の寄生虫や皮膚組織、藻などをかじり落としてそれを自分の食料にするわけですが、本当に欲しいのはもっと栄養価の高い粘膜。でも自分の体を守っている粘膜層をかじられたい魚はいません。そこで、一見平和な「お掃除タイム」にもじつはしたたかな共生関係が築かれ、利害の衝突をうまく避けるシステムが回っている。掃除魚によっては種も様々な100以上の客の好みや利用頻度を記憶しているし、「信頼」「罪と罰」「好みのうるささ」「第三者評価」「評判」「おべんちゃら」などが絡み合う長期的な関係が基盤になっています。

この相利共生は自然界の社会システムの中でも非常に複雑なものと考えられているそうですが、ほんと人間の社会と変わらないですよね。

おすすめ度 ★★★★★



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