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まるで小さな子どものように。

子どもの頃から眠りは浅い方で、大人になってからも眠れないことはよくある。離婚が原因で、その不眠はもっと酷くなった。原因は恐怖と怒り。

大きな敷地の中に建つ古民家に、まだほんの少年の息子と私の二人きり。おまけに家には泥棒が何度も入ったこともあるのだから、当然だ。

一度目は、子供がまだ小さかった頃。元夫が仕事でリビングを出た3分後。
今よりうんと小さかった息子と私が寝室に移動してすぐに侵入したようで、元夫が忘れ物を取りに来たのかなと思ったけど、いつもと物音が違ったから泥棒なんだとわかった。

その時携帯は、泥棒が入っていると思しきリビングにあった。まだ3歳にならない息子をそっと抱き抱えて、縁側から裸足で逃げて、近くのコンビニで警察を呼んでもらったあの夜。足の裏に当たるアスファルトの冷たい凸凹。すぐに来てくれたパトカーの後部座席のシートが思いの外立派だったことをたまに思い出す。

それから何年かして、元夫が家を出て泥棒は何度か入った。当然怖くて眠れない。おまけに、離婚の前からとってもひどいことがたくさんたくさんあったので(離婚の原因は夫のモラハラと夫の不倫)、行き場のなさすぎる怒りが自分の中で暴れて飼い慣らせないでいた。怒りはもはや殺気になっていた。自分の体に毒だとわかっているのに、手放すことがどうしてもできない。うまく呼吸ができなくなり、自律神経はどんどん乱れ、府民はひどくなり、小さな体調不良は重なり、数年後にはついに子宮を病んでしまった。

こんなに体調が悪くなる前に、よしもとばななさんのエッセイで「足もみ力」という本が紹介されていた。著者は若い頃に患った甲状腺癌を毎日の足もみで治したのだという。「ばななさんが言うなら、きっと足もみってすごいんだ」とすぐさま本を購入。本を見ながら自分でも揉んでみたけれど、揉み方が合ってるのか間違ってるのか分からなくて、3日坊主でやめてしまった。

その後、足もみをやってくれる整体に通うようになり、ほんの10分揉んでもらうだけで、弱っている胃がすぐに動き出してお腹が空くようになった。ああ足は物理的に臓器と繋がっているんだな、と体感していたから、健康診断で「甲状腺が腫れている、子宮頸がんの疑いがあり」と結果が出た時、すぐさま足もみをしたいと思った。自分の体を自分の手で癒したいと思った。

ネットで「足もみ力」の著者が元々学んだと書かれていた「若石健康法」を探し、近くのサロンに片っ端から電話した。でも近場のサロンはひとつも電話が繋がらなくて、少し遠いけれど天王寺のサロンまで足を伸ばそうかと思った。さらに検索すると、天王寺のサロンの先生が、うちの近くまで出張されている日があるという。予約日は、忘れもしない2022年3月3日。占いで、3がラッキーナンバーだよ、と言われていたから、きっといいことがあるんだと思った。

足もみは約1時間。先生に色々体のことを話しながら、若石の考え方についても聞いた。施術が終わるとお風呂上がりでもすぐに冷えてしまう私の足は、運動をした後のように暖かくてそしてどうしようもなく眠くなった。眠くなるのは、血流が促進され、副交感神経が優位になっているから。こんなにどうしようもなく眠くなったのは何年かぶりのことだった。

「眠くなる人は、疲れてるから。運転無理せずに寝てね」と、先生に言われたものの、息子が学校から帰ってくる時間。なんとか家に辿り着いた。

帰ってきて制服も脱がずに早速ゲームを始めた息子に「ママ、すごく眠い。ごめんけど、寝てもいい?」と聞いた。息子は私の方を見もせずに「いいよ」とゲームに夢中だ。そして私はベッドで眠ってしまった。いつもはそのベッドで眠るのが怖いのに、まるで小さな頃ごくたまに眠りに落ちてしまった時のように何ひとつ心配せず。まるでのび太くんが一瞬で寝落ちるかのように、すぐに眠りに落ちてしまった。そして思った。この深い眠りを、大きな病気ではないけれどちょっとした体調不良がある人、災害で被災した人や、戦争で心と体が大きく傷ついた人にも同じように感じてもらいたい。それはきっと、自分がつくることができる平和だ。

それで、若石健康法のプロ講座を受けることにした。


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