伝えなかったら、なくなっちゃう(かもしれない)から #PIECESの本棚

こんにちは!
PIECESマガジンリレー2周目、 #PIECESの本棚 のバトンを受け取りました。インターンの若林碧子です。
(自己紹介は #私の子ども時代 にて。)

PIECESメンバーがお気に入りの本をご紹介する今回のリレー企画。
実家だったら絵本の紹介をしたかったなあ…と思ったのですが、今回は最近読んでとっても心あったまった文庫本をご紹介します。

『思いを伝えるということ』 -大宮エリー

伝えたくて、伝わらなくて、臆病になって、面倒になって。
思いを伝えることから遠ざかってしまうことってきっと日常の中にたくさんあるんじゃないかなと思います。伝えることが苦手な人も多いと思う。

ぜひ、そんな方に読んでほしい優しい本です。


私がこの本に出会ったのは、大学のゼミで「オススメの本交換」をした時でした。(めっちゃ素敵ゼミなんです!)

自分がおすすめする本の表紙を隠して、好きな理由を記し、ゼミに持ち寄ります。それを机の上に40人、全員の思い出のある本を並べる。
わくわくしながら、どきどきしながら、思い思い好きなものを取っていく。
その時に私の元に来てくれたのが、この本、大宮エリー著『思いを伝えるということ』でした。

ちょっと小ネタを挟むと、実はこの本の元の持ち主は、これを私に読んでほしいと思って本を選んでくれたらしいのです。(!)「みこりんのところに行ってほしいって思って持って来たんだよ〜!よかった〜」と。


詩と短編小説で構成されているこの本を私なりの一文で表すと、誰かの夢の中をのぞいているような、でもなんだか自分を外から見ているような、そんな感覚に誘われる本です。
そしてあの人に思いを伝えたい、そんな勇気が持てる。

その中でも私が一番好きな話を少し、ご紹介します。

『言葉のプレパラート』

ある森の中に、言葉を消えないように凍らせて、結晶をつくる職人がいました。

言葉は結晶のような形をしていて、それをプレパラートに乗せて顕微鏡を覗き込むと言葉の奥にある「思い」を見ることができる。
でもここは、目に見えないものを見えるようにすることが禁止されている国。言葉を結晶にして、顕微鏡で見るなんて、決して許されることではありません。

そんな職人の元を訪れた女性がいました。
彼女がみたかったのは、亡くなった夫の最期の言葉「ごめんね」。

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「ごめんね」が幾重にもなったその奥に、あった言葉が「ありがとう」。そんな物語なのですが、短編小説で言葉が美しいのでぜひ読んでみてください。

伝えなかったら、なくなっちゃう(かもしれない)から

この本を読むと、私は誰かに「ありがとう」とか「大好き」とか、そんな思いを伝えたくなります。そしてそれは、自分自身に対しての時もしばしば。

誰かを思い、伝えることは、ちょっと勇気がいることかもしれません。でも、勇気を出して伝えてみてほしいと思います。

「伝えなかったら、ゼロになっちゃうから」

大切な人を突然亡くして、伝えたかった思いを伝えることができなかった後悔が今の私にはまとわりついています。これを読んでいるあなたにも、そんな後悔があるかもしれません。
伝えなくてする後悔は、もうしたくない。

だれかが私を思ってくれているならば涙が出るほど嬉しい。それが言葉でも、態度でも、LINEやメッセンジャー、なんでも嬉しい。たまの家族や友人からのあったかい言葉は、今の自分には元気が出る嬉しい薬だ。


思いを伝えるということ

思いは、思いやることだと思うのです
だから相手を思っているということを伝えるだけで十分で
つまり
相手の幸せを願う
そういうことなんだと思います

ときどき自分自身にも
きちんと思いを、伝えてほしい
そう思います
そんなことを言っておいて
なかなか私はできないのですが
それでは、お元気で。
       大宮エリー『思いを伝えるということ』


何気ない日常で幸せを感じた時
誰かに恋して思いが溢れそうな時
心が苦しく押しつぶされそうな時
何を感じているのか心が鈍くなっている時

誰かに、そしてあなた自身に、思いを伝えるということ。

そして思いを受け取ったあなたは、その言葉をプレパラートにして顕微鏡で覗き込んでみてほしい、そう思います。


今回はここまで。

今回の担当:若林碧子(わかばやし みこ)
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