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クリスマス前には 2022

またクリスマスがやってくる。それを待ち望んでいるわけでも楽しみでもないが、子供とかは楽しみにしているだろう。そういう世界のイベントというか日常だ。私も子供の頃は少し楽しみにしていた。クリスマス会とか親からのプレゼント、そういう楽しさがクリスマスそのものだった。しかし私はサンタクロースから物をもらったことはない。親からだけだ。それはいい。でも親からクリスマスにもらったものの中で一番いいものは毎年書いているこれである。クリスマスの日にビング・クロスビーのクリスマスアルバムをかけ、ケーキを食べる。私の父親が欧米かぶれの人だったのでそういう日常を愛していたのだ。父親をかぶれ呼ばわりするのもどうかと思うが、もう他界しているし生きていたとしても同じようにいうだろう。そのおかげでクリスマスソングやクリスマスキャロルを好きになり、特にビングのアルバムが大好きになった。それは今でも変わらない。クリスマスがやってくると同じことを繰り返してしまう。この文章やここに書いている曲たちとかね。

ホワイト・クリスマス WHITE CHRISTMAS - 江利チエミ 原信夫とシャープスアンドフラッツ

江利チエミさんのクリスマスソング。ホワイト・クリスマスはクリスマスソングの中では一番の王道だろう。どれだけの歌手が歌っているか想像もできない。もちろんビングのアルバムの心と体に響きわたるホワイトクリスマスも大好きだし選んでもよかった。しかし以前おてもやんの時にも書いたが、江利チエミさんの歌はとてもカッコよくて好きだ。ホワイト・クリスマスを歌えるような歌手はどの歌手でも上手なんだろうと思う、しかし江利チエミさんは彼女にしか出せないかつてのジャズを彷彿とさせる。ここでのジャズはフランク永井さんのステージのMCで聞いた、洋楽全般をおしなべてジャズといっていた時代、そういう意味のものだ。その当時、進駐軍のキャンプでジャズを歌っていた、それが江利チエミさんのベースというし、しかも歌手としてアメリカ進出もしている。それが理由でもないが、現実にこのホワイトクリスマは日本の大スターが歌い、しかもバンドは原信夫とシャープスアンドフラッツだ。これはとても豪華。時代的なものもあるが、今聞いてもとてもいい。アメリカでも流れているような音が今も聞こえている。

99%のクリスマス - カジヒデキ

カジヒデキさんというとやっぱりTrattoriaレーベルでbridgeというイメージだった。当時のフリッパーズギターのようなネオアコで、そこからソロになりポップさが増したように感じた。当時知り合いの女性が大好きでカジくんカジくんと言ってたのを憶えている。それから断続的に聞きながらもデトロイトメタルシティという映画でも露出していてびっくりした。時代的にも曲も本人も。その昔の知り合いを思い出すような追体験というか、出来事だった。この曲はSWEET SWEDISH WINTERというアルバムに入っていて、後にサブスクに加入してから聞いた。アルバムも上質なポップで頭に残っている。そしてこの曲もやっぱりカジヒデキさんの世界が明確にあって、曲も歌詞も少し重い。いや、歌詞にもあるけど、重苦しい曇り空の中、音楽という癒しにつつまれるようなクリスマス。一人きりでも音楽につつまれていれば結構幸せなもんだ。ずっと一人で生きてゆくわけじゃない。それに99%は99%だから。そんな感じ、そんな気持ち。そしてピアノの旋律に雪を感じる。それは私だけだろうか。

Corcovado - João Gilberto

これはクリスマスソングではないが、私の好きな曲、それに歌詞がクリスマスとも大きくは外れていないと思うのもある。クリスマスにこういうボサノヴァを聞くのもいい。アストラッド・ジルベルトさんも歌うゲッツ/ジルベルト盤のCorcovadoもいいけれど、シンプルでよりクリスマスに近いのはこのバージョンではないだろうか。どっちもいいのだけれど。歌詞は二種類あって、この歌はGene Leesさんが書いているものらしい。それは写真や映像でしか知らないが、コルコバードの丘を思わせるものだと思う。いや、コルコバードのキリスト像から導かれるような、そう言ってもいいような歌詞がとてもいい。そしていつものジョアン・ジルベルトさんの鼻にかかった歌声、これぞボサノヴァだと安心させられる。この曲のシンプルだが音の太いオケ。ゴージャスというワケでもないが、クリスマスにはもってこいの厳かさ、その中にある贅沢さ、それが感じられクリスマス似合う曲だなといつも思っている。

It's Beginning to Look a Lot Like Christmas - Bing Crosby

私のクリスマスには絶対にやってくるビング・クロスビーさんの歌。世界最高のクリスマスアルバムもビングさんのものだと思っているし、多分多くの人もそう思ってるんだろうなと思う。毎回ビングさんの歌のことをを書いているけど、前々回は厳かなクリスマスキャロル、前回はとてもポピュラーなクリスマスソングだった。今回は日本では有名な曲ではないけど、私が子供の頃聞いていたビングさんのアルバムの中でも軽快であり優雅な、とてもアメリカらしい歌詞のクリスマスソング。アメリカのとてもいい時代、今より貧富の差も少ない時代、何もかも満たされていて、そこには楽しいクリスマスがありショッピングがあったような。店にゆくと何でもそろっていて、世界のすべてがあるような、そういう世界。この曲もそういう風景を歌っていて、ビングさんの素晴らしい歌声が沁みる。現実だが夢の世界。そういうものが感じられ、魅せてくれるような。その当時その場所でクリスマスを楽しめているような曲だ。

神を忘れて、祝えよX'mas Time - 高橋幸宏

高橋幸宏さんの繊細な曲がとても沁み入るクリスマスソング。歌詞はザ・ビートニクスで盟友の鈴木慶一さんで、広大であり儚い歌詞である。ドラマーの幸宏さんだからかドラムのリフが特徴的で、ブラシを使ったようなリフがずっと流れている。それともパーカッションの音なのか私にはよく分からない。しかしその特徴的なリズム音が頭の中に響き残る。そして鐘の音がとてもいい。それとは別にKyonさんのパイプオルガンも入ったようなキーボード?オルガン?も最初やサビ、アウトロまで鳴り響いていてとても好きだ。それと排他に聞こえるアコーディオン風のオルガンもいい。それらの要素がクリスマス的なものを音の面から作っていて、一体化した喜びの曲になっている。そういう曲だと思う。歌詞は慶一さんの素晴らしい歌詞でタイトルも含めて神への言及やクリスマスそのものであるが、その表現がとても日本人的でいい。また一部現在の世界情勢と何も変わらないのかと思ってしまうくらい"今"にシンクロしている部分もある。それを感じれば少し失望してしまうけど、語られる愛を考えると思い直すべきだとも思える。慶一さんの歌詞の世界、その素晴らしさだろうか。私はこういう歌詞をとても好む、それして自分に書けるのならどれほどいいかと思ってしまう。別に歌詞じゃなくてもこういう感性があればどれだけいいだろうと妄想してしまう。また、この曲の入っているアルバムのA Day In The Next Lifeにはもう一曲、X'mas Day In The Next Lifeというクリスマスソングも入っている。この曲も幸宏さんの曲に慶一さんの歌詞で優しくて甘いクリスマスソング。この曲とは別のクリスマスの側面を歌っていて甲乙つけがたい。今回はどちらかというとただ今の好みでこの曲を選んだが、その日になればどの曲もかかるだろう、聞くだろう。ずっと大好きな幸宏さんのこの曲は慶一さんの歌詞と溶けあった、こころに響き体の芯にズシンと残る曲で、多分これは幸宏さんにしかできない世界なんだろうと思う。これからも幸宏さんの世界を見ていたい。待っている。

クリスマス前には 2021


クリスマス前には




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