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街の選曲家#ZZ1111

音楽が好きというのはどういうことなのだろうか、と考えたりする。分からないけどね。私の好みはどう積み重ねられてゆき、どう作られてきたのだろう。そしてこれからどう作られるのか。経験をし物事を知れば、さまざまなものに対する感じかたも変わってくる。世界に音楽は蓄積され、淘汰されているように見えても、どこかに残り続ける。それはどうなるのだろうか、そんなことを考えたりする。どうでもいいこと。たけどたまに見えるような気がする光は、なにかを指し示しているような気もしなくもないなあ。どうだろう。

キストピックス - ハナエ

ハナエさんもサブスクのリコメンドにて知った人。彼女のこの曲が入っている"十戒クイズ"というアルバムを中心に好きになった。というかそれ以外そのサブスクには存在していなかったが。それでもアルバムのすべての曲を好きになり、そしてアルバムそのものが好きになり、くりかえし何度も聞きプレイリストにも入れた。ハナエさんは少しウィスパーボイスっぽいところがあるが、私が苦手な聞き取りにくいようなそれではないのがいい。かわいい声という範疇に止まっていて、その印象がよく、くり返し聞いていたい。もちろん動機はそれだけではない。

この曲は短調で始まる少し悲しげな雰囲気、シンセポップというジャンルにも通ずると思われるが、いわゆるJ-POPで、独特の雰囲気も心地よく、特に歌詞の言葉で遊んでいるようでも歌詞として破綻していないというところが、とても私を曲や歌に引き入れてしまう。そして前述の程よいウィスパーボイスのような彼女の声は、そのような曲や世界観に合っている。そして私の中で突出しているのは歌詞がとてもいいということ。言葉の選び、積み重ね、嫌でも韻を踏んでやるといような気持ちを感じる部分、それらの言葉が不思議な力でまとめられて、リズムや気持ちのよい歌詞に昇華しているのだ。歌詞のやり過ぎ感が曲のいそがしさを呼び、そしてそれを破綻しないようなスピード感でまとめていると感じる。

そんな出会いで好きなったアルバムや楽曲、アーティストだが、後に知ることになったのは、このアルバムは全曲作詞作曲、アレンジを真部脩一さんがやっているということ。あの曲も、歌詞も、雰囲気そのものがハナエさんとともに彼が作っている事実を知り、彼の在籍していたバンドの相対性理論のアルバムの、彼の存在してる時期のものを聞きたくなった。だが、それはまた別の話だろう。相対性理論というバンドは当時そのサブスクでもリコメンドに時々出ていたのだけど、なんだかやくしまるえつこさんの雰囲気が苦手で近寄れなかった。これも別の話だ。どっちにしろ私にはネタがないので別の話ばかりに飛ぶな。


Grandma Is Still Alive - GEISHA GIRLS

この曲は実は12インチシングルを持っているのだけど、そんなことは忘れていた。買って聞いていた動機は坂本龍一さんの存在や、テイトウワさんなどがあったが、それだけに惹かれて買ったわけではなく、もちろんダウンダウンの存在でもない。そう書いたが実際は複雑で、ある意味ではどちらもそうで、私はYMO世代だし、それを追いかけていた事実もある。そして同時にコミックソングや、例えば好きな芸人がいたとして、その人たちが出す音源ならコミックソングでもない真面目な歌も選んで買っていた。だからGEISHA GIRLSの場合はそれら二つが重なって12インチシングルを買ったということにもなる。

コミックソングのことを言えば、間寛平さんの"ひらけ!チューリップ"がヒットしたころは私はまだ物心もついてなかったのか、あまり知らないかった。それでも有名なフレーズは知っていて、それから成長し音楽を聞くにつれ、ラブソングやバラードでなくても素晴らしいものがあると気づく。そして知っていてもそれ以上は意識していなかったコミックソングやプロテストソングなどがあることを肌で感じ、私はそういう方向も大好きなのだと気づいた。もちろんラブソングやバラードも嫌いではない、だが歌詞によっては自分に合わなかったり、ベタベタと自分にまつわりついてくるような言葉を使っているものを嫌ったりもしている。それは完全に個人の感覚であり好みだ。

昔はコミックバンドも多く存在し、それぞれが実力を持った奏者でもあった。一世を風靡したクレイジーキャッツは世代はまったく違うが、大瀧詠一さんの流れからアルバムも買い、聞きこんだものだ。それは当たり前になり、いわゆる芸人の出す音源で気に入ったものがあれば聞くようになり、今に通じているのだ。もちろん好みで選んでいるが、そういうアーティストが見せる普段の芸とは違う、初々しさや真摯に取り組んでいるような部分、そしてGEISHA GIRLSのような一見やぶれかぶれにも見えるような突っ走りも好きだ。

GEISHA GIRLSは12インチのビニール盤以外、後に買ったレンタル落ちのCDくらいしか持ってなかったし、時間が経ち、曲を憶えていたとしても存在は記憶の彼方に行っていた。そこへサブスクリプションに颯爽と現れたのだ。この曲はKenとShoの昔からある漫才のネタで、時系列は定かではないが、彼らが上方漫才大賞新人賞を取った時代に見ていたようなネタだ。それがあるからか、入っている掛け合いは照れもあり、適当に感じ、それらが録音当時も今もダウンタウンということになるのだろうと思う。

曲は突出したなにかがあるわけでもないが、うまくまとまっていて、深い。サブスクリプションで発見して以降、インストゥルメンタルバージョンをよく聞くようになった。そこで感じたのは薄っすら聞こえてくるダウンタウンの声が、浮き上がってくるようで距離的な広がりを感じてしまう。そういうこともあり、深く広く、ある意味落ち着ける曲なのだと最近は思っている。


5/4 - Gorillaz

好きな曲。いつもというか、そういうシリーズだが、サブスクリプションのリコメンドで出会ったのは変わらずで、しかも私はGorillazのことはまったく知らなかった。ジャケットのgeepに惹かれて聞いてみることにしたという経緯、いわゆるジャケ買いで、さらに言うとそれ以降現在でもGorillazのメンバーのビジュアルの表現は好きではない。そんな出会いのアルバム、それがGorillazというバンドの一枚目の"Gorillaz"だった。

GorillazはBlurのデーモン・アルバーンさんがやっている覆面バンドということらしく、オーソドックスな4ピースバンドとでも言うのだろうか、それぞれのキャラクターには特徴もあって、実は日本人キャラもいるようだ。上記のようにビジュアル面には全くの興味はなく、どちらかというと嫌悪すら抱きそうな勢いでもある。だが、なんとなくこのアルバムを聞いていて、音楽はいいなと思った。その最初がこの曲で、アルバムでは二曲目の"5/4"だ。5/4拍子ということらしいが、確かに最初から登場するギターのリフは5/4拍子だ。しかし他のリズムは4/4拍子で、そのギャップが心地よいのかもしれない。最初にそれだけで始まるギターのリフがリズムと思えば、実際はドラムなどのメインの4/4拍子とずれている、そしてそれを聞き重ねてゆくうちに、二つの拍子が離れたり近づいたりしてシンクロしたような心地よさになってしまうのだ。ズレとシンクロの心地よさ、先ずそれがこの曲の大きな部分だと思った。

ボーカルの2-Dさんの歌もよく、日本人のキャラというギターのNoodleさんのコーラスと相まっていていい。うっすら入るピコピコの電子音は控えめで、後に入ってくるキーボードの音は一つの流れになるし、ジリジリいうベースやスクラッチの音もいい。全般的に音が多いという感じはしないのにシンプルとは思えぬ独特の存在感のある曲だ。歌詞は不思議なものだと思うが、後にGorillazのキャラクターを調べていたら、ボーカルのNoodleさんのことが詳しく書いてあり、それを読んで直撃したのはこの歌詞だった。これは彼の幼少期を歌ったものなのだろう。だが、そのバックボーンがなくても不思議な歌詞で誰かを惹きつけてしまう。そうだ、それは私だったりもする。


Taxman - The Beatles

ビートルズとの物としての出会いは、小学生のころ友達がラジカセを買った日、彼がなにかを聞くということで買ったのがビートルズの赤盤か青盤のどちらかと、私が紹介したYMOだった。赤青のどちらかはなぜか憶えていない。一度は書いたかもしれないが、そのラジカセ購入事件の出会いは鮮烈だった。YMOはなぜか買ったのその日に借りることができたし、その後ビートルズも貸してもらえた。なぜビートルズだったのだろうと考えると、二人とも子供ながらに人気は知っていて、なんとなくロックの王道だと思っていたし、レコード店のカセット売り場にも大きな面積を占めるスペースがあった。そしてなにより、それ以前の子供のころ、夏休みになると午前中にビートルズの短いアニメーションが繰り返し放送されていたのだ。その中でビートルズの様々な曲が流れたが、オープニングのCan't Buy Me Loveは特に頭に残っていて完全に憶えるくらいだった。

その友人のラジカセ購入からビートルズを当たり前に聞くようになり、年齢を重ねるにしたがって自分でも買うようになった。後に著作権が切れ、安いCDが売れられていたりもしたが、その頃はまだ東芝EMIのアップルが回るレコードを買っていた。全部持っていたわけではないが、好きなアルバムは買った。中古レコード屋さんである日ビートルズのブートレグ盤を見つけて買いたかったがお金がなく、次の日に行くと売り切れていたということもあった。ある日ふと気づくと利用していたサブスクに以前はなかった(と思い込んでいたのかもしれない)はずのビートルズの楽曲が存在していると気づく。そしていろいろと聞いてみたが、懐かしさもあり、当たり前すぎてプレイリストには入れたりはしなかった。だがプレイリストとは別に、二度ふたたびリボルバーから好きなアルバムをかなりの頻度で聞き始めた。最初に戻ってきたのがリボルバーだった。そしてこの曲をここに書くのはアルバムとともに、とても気に入っているからだ。

リボルバーの最初にかかるこの曲は、エッジが立ったリズムギターで始まるガレージロック風の曲で、そのディストーションがかかってジリジリしたギターと、特にベースがカッコよすぎる。ドラムもタイトでカッコよく、構成もシンプルでいて存在感があり、効果的に使われるカウベルなど本当にパーフェクト。そしてギターソロから入るリードギターも素晴らしいとしか言いようがなく、特にソロはすごい。カッコいい、すごい、素晴らしい、づくしなのだ。これは聞いてみれば誰でも分かることだと思っている。単なる好みだとも思うが、やっぱりそれ以上のものだという気もしている。最初の1,2,3,4,1,2という声さえも、この曲やアルバムの世界を表現していると思う。それに対比してではないが、歌詞には魅力を感じていない。そしてリボルバーの素晴らしさは、この曲から始まる流れ、Taxman,Eleanor Rigby,I'm Only Sleepingと続く流れも最高だと思っている。聞けばそれだけで分かるような、そういうアルバムの口火となる曲だ。



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