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Chiptune序章 #後編 (当時の情景 あるいはセガの海)

前編

の続きです。

Make Me Dance - ザ・スーパー忍

そうして時が進むとセガが夢の16bitゲーム機、mark Vことメガドライブを出した。セガ・マークIIIやマスターシステムも頑張っていたがアーケードゲームの完全移植には少し遠かった。しかしこのメガドライブには可能性を感じた。初めに出たスーパーサンダーブレード、スペースハリアーII、獣王記に。スペースハリアーIIは完全な家庭用タイトルで、アーケードの移植ではないにしろスペースハリアーの雰囲気は出ていた。何より不思議なBGMがいい。アーケードのはっきりした分かりやすいBGMも大好きだが、家庭用のIIという世界観を作るためのものだったのか。そしてスーパーサンダーブレード。大型筐体のゲーム機だが惜しい感はあるもののそこそこ移植できていた。そして獣王記、これは後々にも散々遊んだ。コミカルなクマは忘れない。ROM容量の制約かグラフィックはあともう一歩だったけど、ゲームセンターの雰囲気は感じた。同じような感想のサンダーブレードよりもゲーム感はよかった。次の年にはファンタシースターIIも出て、大戦略も出た。そこで重要だったのがサードパーティーが参入しそうな雰囲気が出てきて、実際テクノソフトがサンダーフォースII MDで参入したということ。サンダーフォースはパソコンで知っていたが、サンダーフォースII MDはあらゆる面で初期のメガドライブ的な出来だった。そしてもう一つはセガのカプコンタイトルの移植だ。大魔界村と、ロストワールドの名前を変えたフォゴットンワールズはどちらも素晴らしい移植で、特に後者はアーケードで特殊なスイッチを使ったシステムだったが、それをメガドライブのコントローラーでうまく楽しめるようになっていた。前者は大容量ロムで美しい仕上がりになっていて文句なしの移植。この頃、以前パソコン系の雑誌だったBeepもBEEP!メガドライブになり情報も増えてきた。そして毎年盛り上がる年末にはヴァーミリオン、ゴールデンアックス、ザ・スーパー忍が出る。ヴァーミリオンはいきなり驚くAM2研クオリティでグラフィックもサウンドも色々な意味で凄かった。私にはサウンドが特にインパクトが強く迫力に圧倒された。ゴールデンアックスは獣王記と同様だが移植のクオリティもパワーアップしているし、協力プレイも楽しかった。何度デスアダーを倒したか分からない。そしてザ・スーパー忍。ゲームはアーケードの忍の流れを踏襲しているのだけど、何倍もパワーアップしていて家庭用にふさわしい。そして音楽。セガのゲームに古代祐三さんが起用されたというのも凄かったが、その音楽自体も凄すぎる。88mk2 SRの時と同じように、いやそれ以上にMDのOPN2とPSG(DCSG)を使いこなしまくる凄い技、最初のThe Shinobiという曲から凄すぎる。和の雰囲気漂うファンクっぽい感じが時間が経つに連れ力強い一本の幹になる。そしてそれが夢となり弾け飛ぶような曲。左右に振り分けられた細かい音の繊細さに感激。それは音楽の完成度も感じる。そしてMake Me Dance、暗いダウンタウンを進んでゆくような緊張感、あるいは薄暗い中にブラックライトやネオンライトが浮き上がる室内を静かに進むような、ヒップホップを感じさせるファンク。しかしそのいかがわしさを突き破るパワー。音色も凝っていて一音表現するのに二音重ねている箇所が感じられるが、気のせいかもしれないし、ここでは違うけど音の厚みを出す手法としてはよくありそうだ。そしてザ・スーパー忍の音で忘れられないのはサンプリングされたちょっとヘンテコなスネア。しかし意図したのか意図していないのかスネアと和太鼓の間のような、なぜか和太鼓を感じさせるような響きというのも面白い。シンバルの音の種類を聞くと案外スネアの音は意図してるのかなとも思える。


Toy World & Monster World - アレックスキッド・ウィズ・ステラ ザ・ロストスターズ

アレックスキッドというと雑誌のBeepなどで見ていたセガ・マークIIIのキャラで家庭用というイメージ、だけど自分にはSYSTEM16のロストスターズが最初だった。SYSTEM16のゲームは美しさ、音楽に秀でていてロストスターズ以前にも既にファンタジーゾーン、カルテットなどに浸っていた。ゲーム性もよかった。そうしているとある日ゲームセンターで見かけたのがアレックスキッド・ウィズ・ステラ ザ・ロストスターズだった。ルンルンした音楽が流れていてワケも分からず難しい。進めないのだ。しかしその音楽にハマった。だけど思うようにプレイできない。もうその当時は色々なゲームがあって、ロストスターズを置いている店も少なかったのでそんなに遊べた記憶はない。しかし置いてある店に行ったときは必ずプレイしていた。そしてメルヘンの世界の中の出来事とは正反対の不毛なゲームバランスに辟易した。これディップスイッチいじってゲームセンター側が難易度上げてるんじゃないかと本気で思ってたくらい。でもこの音楽だけは大好きで耳から離れなかった。それだけの為にプレイした。このゲームの音楽はいわゆるHiro師匠、川口博史さんだ。セガのゲーム音楽の生きる伝説でゲーム好きなら多分Hiro師匠の音楽を聞いたことがない人はいないはずだ。だからセガの人としては必然としてこれ以前から出会ってはいる。上のヴァーミリオンとかの一部もそうだ。しかしSYSTEM16でファンタジーゾーンのようなゲーム音楽の王道、シューティングゲームとしては異色だがゲームとしては王道の中の王様なのに、ロストスターズでは音楽も王様、SYSTEM16もグラフィックやサウンドの土壌として最高、しかしゲームの難易度は…という少し残念な印象になっている。存在自体も少なかったのであの世界のあの音楽に会いたくてもなかなかできないという日々だった。それでも今も耳に残る音楽。今でもそれだけのために聞きたいなと思う。後に聞いたMachine World & Giant's BodyやWorld of Make Believe & The Shrine Jiggarat、Water Worldもその世界と同じものでとてもいい曲達だ。この一面からのToy World & Monster Worldは楽しさや夢の世界の遊泳というような曲で、メロディにはポルタメントがかかっていて、そこが甘ったるくウキウキな世界を浮き出している。実際は結構地獄ではあるが、それも思い出の一部。曲は今でも聞いているけどね。そして今度のアストロシティミニにも収録されているようで、セガの人々中心だろうが多くの人に聞いてもらえれば嬉しいと思うようなキラキラした曲たちかな。ウキウキして甘ったるくキラキラ。そんなゲームのそんな音楽。


Say Papa - ダライアスII(MD)

メガドライブの三年目は前年末のザ・スーパー忍やゴールデンアックスらを経て、やっとセガの家庭用ゲーム機が少しメジャーになった感じがした。サードパーティも多く参入し、なんか未来が広がった。セガのゲームができればいいといえばそうなのだけど、ナムコやタイトーやカプコンのゲームも各社が責任をもってリリースできる環境になったのが嬉しかった。大魔界村やフォゴットンワールズはとても素晴らしい移植だったけど、それらをカプコン自ら開発したり販売するのはとても素晴らしい。それもメガドライブでだ。とはいえカプコンが本格的に参入するのはまだまだ先だけど。その年はゲームセンター派だった人間からしたらタイトーやナムコ、東亜プランが参入したのはうれしい驚きだった。何がリリースされるのか興奮していた日々。PCエンジンで実績のあったメサイヤや、PCではメジャーな日本テレネット(とウルフチーム)の参入も嬉しかった。セガの家庭用ゲーム機らしいタイトルはマイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー、アイラブミッキーマウス ふしぎのお城大冒険などが発売され品質も大全開。メサイヤのレイノスや、テクノソフトの前年からの続編のサンダーフォースIIIも発売された。アーケードゲームならナムコからは第一弾としてフェリオスも発売され、セガのスーパーモナコGPも家庭用っぽくパワーアップして出たし、セガ移植によるカプコンのストライダー飛竜も発売され、東亜プランの鮫!鮫!鮫!も出た。東亜プランは年末にコンパイルの武者アレスタも出している。そのどれにも熱狂した。ナムコや東亜プランと同じく新規参入したタイトーは、大手アーケードのパブリッシャーとしてはいち早くソフトを出したが、ニュージーランドストーリーは悪くはない程度でその後リリースされたものもメガドライブらしい力強いものではなかった。だがやはり年末、待って待って待って待った力強いものがついに来た。ダライアスIIだ。ゲームセンターで二画面、三画面の大型筐体。しかも横スクロールシューティング。画面の数は別としてシューティングゲームなんてメガドライブに持ってこいでしょ。移植がどうなるか不安もあったしアーケード版とは少し違うけど自分には大いに許容範囲。というか画面を縮小しているのもあるけどかなり好きで好感触。そして音楽がかなり再現できている。そこは特に驚いた。一面のOLGA BREEZEのツナサシミはさすがに再現できてはいないがOPN2とPSG(DCSG)でかなり頑張ってるように感じる。アーケード基板ではOPNを二つ搭載しているらしいが、スペック的にはあまり違いがないように感じる。しかし現実に違いがあるのは音色や曲のデータ量等の違いかサンプリングの容量か、メガドライブ版は全体的に軽い。しかしアーケードは一聴した瞬間リッチなサウンド。それはアーケードのROM音源からのCDをずっと聞いていたためマスタリング等でそう感じたのかもしれない。音楽は小倉久佳さん。いわゆるOGR。タイトーアーケードの音の神。タイトー開発らしいけど音楽は岩垂徳行さんの移植。後にハマるジノーグのサウンドを作った人。曲そのものはダライアスのぶった斬りシューティングサウンドとは少し違いIIは洗練されているというか大人っぽい感じだ。それがいい。全曲好きだしその中でも好きな曲を上げることもできる。しかしメガドライブ版の場合は最終面の演出も含めてSay Papa。最終面が始まり曲が流れるが効果音は一切鳴らない。この演出は曲を聞かせる為ではなく曲そのものが伝える事柄、そしてダライアスIIの集大成、戦いの中の静寂、生と死、それが最終面という演出に帰結しているのだと思う。ゲームセンターでは最終面にたどり着けなかったので知らなかったが演出は違うという。あの裏と表ではないが冷静さと高揚感、戦いの厳しさ、生きるということ。シューティングゲームでも伝わるものはたくさんある。物語を語るRPGやアドベンチャーゲームだけではない。それを知った。

と、ここまで書くとさすがに長い。この次をかくのもいいけどChiptuneということで今回最後は新しめのChiptuneを。

Amplifire - RaveGuru

前回PETの影響でMZ-80に傾倒したと書いたが、その後ビジネスっぽいCBMは置いといてVIC-1001やマックスマシーンが発売されて電器店でもよく見た。VIC-1001はよくあるVDPの廉価ホビーコンピュータで、マックスマシーンはゲームコンピュータというジャンル。ぴゅう太やSORD M5、セガSC-3000と同じという感じだった。記憶ではM5には存在感があった。それはもしかしてナムコのおかげか。あとMSXの最廉価のパソコンにも似ていた。その後Commodore 64が発売されたが広告や雑誌の海外事情っぽいのを見ただけで実機は見たことはない。後に海外のDEMO sceneでの活躍を聞き深く知った。当時は既にAmigaやST、DOSのDEMOや4k introとかが有名でエミュレータを使って再現することもできた。当時は動画を転送する帯域が乏しかったので直接見るには再現するしかない。そしてAmigaにMODがあるように、Commodore 64にもよりDEMO直結のSIDというファイルが存在した。それはCommodore 64搭載サウンドチップのSID 6581を直接叩くという意味だろうか。この曲は2008年のHorizon, InstinctによるAmplifireというDEMOの曲。X'2008というオランダで行われたDemo Partyでリリースされた。DEMO sceneには色々なDEMOや音楽があって全部を追うことはできない。しかし数少ない経験の中でもこれは好きなんだ。この曲が。ゲーム音楽もそうだがChiptuneはプロデュース能力というか、曲全体をどう伝えるかの作業も作者が負う。それもとても少ないリソースで。そういう作り上げられたものが好きなんだ。ここまで長々と書いたものを横目に見ながら聞くのもいいなと思っている。こういう曲を聞くともっとChiptuneを聞きたくなる。

Amplifire(DEMO)


最後はPC-88若しくはMDのソーサリアンにしようか考えた。しかしそれも他のゲーム音楽もまた別の機会、また別のChiptuneの機会に。


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