見出し画像

Chiptune序章 #前編 (当時の情景 あるいはマイコン黎明期)

子供の頃の出会ったのはやはりゲーム音楽、Chiptuneをオリジナルソングとして考えた場合、広義ではゲーム音楽もChiptuneだろう。しかし音源チップだけで鳴らすと考えるとゲーム音楽こそそのものとも言える。そのコンピュータゲームだが当時はビデオゲームしか選択肢はなくゲームセンターはいかがわしい場所とされてたし、いわゆる不良の場所でもあった。でも最初期はそのゲームセンターもなくゲーム喫茶やドライブインに行かないとできなかった。ほんのガキなのに自分も含め優良とは呼べない友達と薄暗いゲーム喫茶でビデオゲームをプレイした。はるばる郊外のドライブインに自転車で出かけてまた違うゲームをプレイした。そして町の喫茶店、ゲームセンターができ、駄菓子屋などにも置かれるようになった。好きなゲームは数々あるけど好き嫌いではなく製品というか作品として完成されていたメーカーがあった。ナムコだ。ジービー、ボムビーの時代からそれは変わらないと思う。自分はセガの人ではあるが初期のアーケードゲームの総合力といえばナムコと答える。ゲーム性、グラフィックス、音楽の総合力。話は逸れたがそういう夢のようなコンピュータゲームが音とともにやってきて、やがて音楽が鳴るようになり、ゲームの感覚と一緒に、そしてまた別に頭いっぱいに満たされた。


ディグダグ

ナムコのゲーム音楽。このゲームが出る少し前、パックマンの頃まではゲームから出る音は開始のファンファーレや効果音程度だった。しかしパックマン、ギャラガ、ニューラリーXの頃からは音楽が鳴り始めた。そしてディグダグ、ニューラリーXと同じように全面的に軽快な音楽が鳴りゲームは進む。グラフィックもカラフルでゲームも工夫に富んでおりパックマンでお馴染みのフルーツターゲットも出る。軽快な音楽はマッピーのような楽しさもあるがこの曲は慶野由利子さん。以前ビデオゲーム展を見に行き慶野さんの講演を聞くことができたが当時の制限の中で如何に表現するか、その水準をさらに押し上げるか、等を想像できるような話を聞け楽しかった。この頃のナムコの音源は波形メモリ音源でPSGではない。またマッピーの時のようにC15チップでもないようだ。独特の音が出て、コロコロ弾むような音色でしかも何となく温かい。


その後家にもマイコンが入ってきてBeep音やZ80チップファミリの8253による単音の矩形波のみだったものがPSGやFM音源になり表現力が増していった。初期のBeepを上手に制御し、うまく鳴らす手法もあったし後に知るChiptuneの高速アルペジオなどの手法を開発してマイコンベーシックマガジンに投稿している人もいた。しかしMZ-80Kシリーズのベーシックでの高速アルペジオでは分解能もたかが知れている。三十二分音符若しくは六十四分音符だったような記憶があり、うんアルペジオだなとか思った記憶がある。

SeeNa

家にはマイコンがあった、贅沢なガキだった。初期はMZ-80でアルゴ船を見てコンピュータそのものを感じ、途中でPC-8801mk2でフロッピードライブの恩恵を受けた。それ以前はコンピュータショップや家電店に入り浸りというような世代だ。PET直撃世代でその影響でMZ-80に傾倒した。88mk2以降はフロッピーの恩恵は受けたがPC-8801mk2はホビーなのかビジネスなのか中途半端で不満だったし、他社のホビーユースの8bitパソコンも魅力的だったのでPC-8801mk2 SRが出たときには自分的にいいタイミングですぐに買い替えることができた。下取とかね。それでもこれらはどれも思いがあるのだけれど。SRが出たと同時にその機能を生かしてテグザーが発売された。キュービーパニックもあったけどゲームアーツという聞きなれないメーカー、テグザーのメカニカルでビームな宇宙に熱狂した。音楽もFM音源を最低限使いこなしいて月光ソナタとかにもしみじみした。しかしSRが出て本当に待っていたのはSeeNaのようなゲームだった。レースゲームっぽくもあり迷路ゲームでもあり、アドベンチャー要素もある。そしてなにより音楽が素晴らしい。作者のたいにゃんさんはPC-6001シリーズで有名で、パブリッシャーのシステムソフトはNECのPCシリーズで有名。PC-8801mk2もSRもDEMOディスクはシステムソフト製だと記憶している。BGMは日の丸ファクトリーというシステムソフトのある福岡のインディーニューウェイブデュオらしく、曲もニューウェイブっぽいし当時の空気感を感じる。その頃とは違うがその後長く福岡にいる。そして福岡にはインディー的な感覚や空気感、今も少しそういう雰囲気がある。大都会で田舎、それがとてもいい。

misSioN 76496 - hally

上にも書いたが、いつしか自分はセガの人だ。アーケードゲーム中心。家庭用のSC-3000は注目はしたが当時よくあるVDPの画面でビデオ出力ができるがRGB出力のような美しさはなかった。しかしゲームセンターではセガのゲームが好きでPSG(SSG)もFM音源もいい感じだった。そしてSG-1000が出たときに友達が買ったらしく後に一週間だけ借りることができた。画面はしょぼいがゲームセンターでしていたゲームができることに感動した。そしてそれ以降家庭用を買うことになりずっとセガの人でいる。今では夢は消えたが記憶や感覚には鮮明にある。そしてインターネットを使い始めて少しした頃、もうテレホーダイでもなくなったその頃にエミュレータ関係を調べてて発見した。SMS Powerの第一回のミュージックコンペティション。そのコンペにVORCのhallyさんの曲があった。しかも全曲ダウンロードして聞き比べたがダントツ、他の曲も好きなものはあるしゲーム音楽のロックアレンジとかもあったけどレベルが違った。あのエミュレータ系の検索からたどり着いたSMS Powerに、日本で精力的にChiptuneの情報を発信されていたVORC、そのhallyさんの作品があったのだ。ミッションインポッシブルからだがmisSioN 76496という曲名もセンスもいいし気が利いている。家庭用のゲーム機の音源、オリジナルという事でこの曲は純粋なるChiptuneと言える。その後hallyさんの活躍は所々でお見受けするがこういう曲を懐かしむのもいいだろう。いや、自分にとってはこれも現在だ。


Beat of the Terror - Ys

PC-8801mk2 SRを買ってよかったのは音の表現力が増えたため音楽に注力するゲームが多く出てきたことかもしれない。上記のSeeNaのようなものもあるけど日本ファルコムのシリーズは大ブレイクしたし本当に面白かった。ドラゴンスレイヤー時代からそれなりに面白かったがPC-8801ということもあり音楽はそうでもなかった。それがシリーズが進むにつれ新しいハードウェアに対応して音楽が素晴らしくなってゆく。ザナドゥの物悲しいBGMは忘れもしない。そしてYsが出た。いやパソコン雑誌は一通り買ったり読んだりしていたので知ってはいたし、もしかして店頭DEMOもあったかもしれない。Ys-IIは店頭DEMOをよく憶えているがYsは記憶がはっきりしない。それはともかくYsは出た。そこで音楽に度肝を抜かれた。まさに度肝を抜かれる、使わないような言葉がしっくりくる衝撃だった。ゲームもストーリーがしっかりしていてそれもまた衝撃だった。Ysは当時の日本ファルコムに古代祐三さんが在籍していて、後に他のゲームでもセガでも感動させられ続けた。OPNでもFMとPSG(DCSG)の使い方というか使い分けも素晴らしく、その技と曲でこのゲームの音楽を何段階も引き上げている。そのなかでもBeat of the Terrorはゲーム中でも何度も聞き音楽に浸った曲。


書いてゆくといちいち尾ひれがついてどうでもいいことが長くなってしまう。だからということでもないが、今回は前編、ここまでとする。ゲーム音楽やChiptuneを好きな人も多いだろう。それに携わった人々の素晴らしい音楽。仕事。それを思うとついつい色々と長々としみじみと。そんなことを思いながら今もまた聞いている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?