見出し画像

022_マニュアル魂

マニュアル車を好んで乗っているカーオーナーは一定数います。私もその一人です。

マシンはシルバーのスズキスイフト初代。国内生産車です。今となっては絶滅危惧種で、かつマニュアル車であるこれのオーナーになった経緯は、つまり義理の母からもらい受けたからです。母は高齢のため運転免許を自主返納しましたが、その時に車を処分するにあたり、勿体ないと言って私が引き取ったのです。3年前の事でした。

田舎の納屋に半年眠っていたその車は、登録から10年以上経過していましたが走行3万キロでした。近所の買い物にしか使っておらず、それ以外の用途ではほとんど乗っていなかったのです。
納屋に格納していたとは言え数ヵ所に擦り傷があり、廃車処分するしかなかったものをなぜか私は気に入りました。理由は特にありません。

実は私はマニュアル車に乗るのは3台目です。550㏄時代のスズキアルト、カローラワゴンと、「よく売れた割には歴史に残っていない車」に乗っていました。ところが、長男が大学に入って免許を取得すると、さすがにマニュアル車にこだわるわけにはいかず、オートマ車に乗り換えました。トヨタガイアでした。
そのガイアを6年後にアイシスに乗り換えて、私の車歴はオートマ車に完全移行するはずでした。

そこに母の免許自主返納と車を処分するという話が来て、私のマニュアル車のキャリアは再開したわけです。

母は昭和ひとケタで、実は40代になってから免許を取得しました。ご承知の通り日本の農村がモータリゼーションを迎えるのは昭和50年代以降です。その時代にはオートマ限定免許はなく、教習は当然マニュアルで行いました。それからずーっとマニュアル一筋。その理由は「事故が怖いから」。多くのドライバーがオートマに乗り換える中で、馴れているからとマニュアルにこだわっていました。

私の実父もマニュアル党で、昭和ひとケタでした。やはりオートマは怖いと言っていましたね。

マニュアルでもオートマでも、両方乗れる私にとっては特にオートマが怖いという事はありません。ただ息子が車を運転するようになり、その車でマイカー通勤をしています。そのうちに、完全に自分の専用の車が欲しいと思うようになりました。そうであれば51対49でマニュアル車がいいなとぼんやりと考えていたのです。その矢先の免許自主返上の話でした。

自動運転、無公害エンジン、何よりも政府が進める温暖化対策による急速な社会改革。マニュアル車は内燃機関を動力とする構造上、その絶滅までのカウントダウンに入りました。

しかしシフトレバーでギアチェンジをし、クラッチペダルを操作して動力を路面に伝えるという、まるで人体が車体に変身して走行するという独特の感覚はマニュアル車ならではです。

運転に労力を使わず、無公害で地球の永続性を約束するはずの新しい自動車にはこうした感覚を求めようがありませんが、単にこだわりや頑固、偏屈といったマイナス面でマニュアル党を認識して欲しくないという思いはありますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?