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【全曲感想】才能に溺れること確定な藤井蓮 1st full album「0:00」

1.0:00

アルバム名にもある名前の曲、そしてアルバムの幕開けになる曲。
どんな曲が来るのか、ワクワクしながら聴いてると、インスト曲であることに気づいた。
元々インスト職人だったのかと訊きたくなるくらい、耳に馴染む。

3分31秒という時間の中で、アルバムの先頭を切るに値するような曲だった。
3分31秒が体感1分に変わってしまうようだった。
シンデレラの魔法が解けてしまう0:00とは対称的に、彼の音楽の魔法にかかってしまった、そんな0:00だったような気がする。

2.miles

ゼロカラコンピ vol.12「3分以内」収録曲。

個人的に藤井蓮の数多ある曲の中で、1番好きなのがこの曲というのは、耳にタコができるほど言ってきたが、「0:00」の最後の最後にスイッチを押したような音から、刹那「バイバイもう行かないといけないから」のメロディが流れる。
そこでいとも簡単に感嘆の声が漏れてしまった。
「うわぁ……」
してやられた。
2曲目はアルバムのリード曲という暗黙の了解、セオリーのようなものを聞いたことがあるが、このアルバムの「miles」はその概念すらぶち壊す、藤井蓮自身のこれからの挑戦を謳っているような気がしてならない。

3.TEENAGER(2023 Recording Version)

紛れもない藤井蓮の代表作。
初めて聴いた時はMrs.から始まるバンドに影響を受けたんだろうなぁ…と思ったと同時に、歳下でこんな曲を作れる人がいるんだと感動したのを、昨日のように覚えている。
これから先、彼自身が20代、30代…と歳を重ねるにつれて、味と説得力が滲み出るであろう。
何歳になってもこの曲と共に生きて欲しい、そして歌っていてほしいと切に願う。

4.Brotherhood

ゼロカラコンピ vol.13「ラブソング2023」収録。
自身の兄の結婚式で披露したというエピソードを想像しては、感動してしまう兄弟愛に溢れている楽曲。
兄弟ならではの愛を伝える時の照れ臭さ。
それを隠すように、歌にして届けることができる。
音楽というのはその時の感情などを、写真のように閉じ込めておくことができる。
そんな音楽の醍醐味、大切なことを思い出させてくれる。

5.OMG

藤井蓮というのは、カメレオンだなとこの曲を聴いて思う。
ジャンルレスに姿、イメージを変幻自在に変える。
しかもそれが付け焼き刃のような完成度ではなく、あたかもどれもが自分の主戦場だと言い張るようなレベルだから、同じ作曲者として恐怖を覚える。
「Brotherhood」が愛に溢れる修道者なら「OMG」は激しく踊る韓流スターのようだった。
月岡さんが言うように、彼の歌声の表現力の幅が広がったからこそ完成した曲だった。

6.idiot

2nd single
歌詞がほとんど英詞というぶっ飛びにぶっ飛んだ楽曲。
それでいて聞くに耐えない英語の歌い方ではなく、まるでたまたま英語の詞になりましたみたいなすんなりとした歌い方でこれまた驚愕。
「TEENAGER」のイメージが色濃く残る聴き手に、うるせえと言わんばかりに予想外のジャンルをぶっ込む。
常に聴き手の耳に挑戦しているような闘志すら感じる。
ただ彼のひたむきな何かを伝えるようとしている真っ直ぐなメッセージ性だけは、どの楽曲にも共通している。

7.社畜前線納期マン

恐らく聴き手全員の頭が「!?」となっていたであろう楽曲。
昭和アニメのOPを幼少期から聴いていた自分でも、混ざっていてもわからないレベルでありそうである。
これだけでも面白いテーマであるものの「社畜前線納期マン」という爆発的なパワーワード。
この楽曲は恐らくTiktok等で投稿しても、バズる可能性を秘めているように感じる。
しかも彼と仲の良い仲間たちが関わっていると聞いて、類は友を呼ぶって本当なんだなと感じた。
ってことは俺も類ってことだね!!!!!!!!!!!

8.逃避行

ゼロカラコンピ vol.14「挑戦」収録曲。
初めて聴いた瞬間に、耳がすぐに惚れてしまった楽曲。
私と彼が共通して好きなアーティストの曲をリファレンスとして作られたこの楽曲だが、その話を聞くまで全く気づかなかった。
しかも今までの藤井蓮になかなか見られなかった、より密接な日常がテーマで、常に挑戦を続ける彼の中でも、群を抜いた挑戦のように感じて納得した。
穏やかな「日常」を色濃く映した楽曲をもっと聴きたいと思える爽快で癖になる曲。

9.Smile(feat.月岡彦穂)

「よくがんばった」「よく踏ん張った」が印象的な、聴き手の毎日を讃えてくれる曲。
個人的には同じくゼロカラレコードアーティストである月岡さんの「よく踏ん張った」が立場も人生の経験値、これまでの軌跡も相まって、泣いてしまいそうなくらい感動した。
共感性の高いエピソードを歌詞に踏み込んでおり、全肯定してくれるような暖かさを感じた。
サビ前の転調が印象的である。
てか毎回思うけど、藤井蓮の楽曲歌うの難しそう。

10.春夢

前曲「smile」が嘘かのように曲調が暗くなり、自身の苦悩を描いた当該曲。
そういえば彼の歌う暗いバラードを聴いたことがないことに今気づいた。
鍵盤が切ない歌声に呼応するように、世界観が固められていく。
どんなことがあっても、必ず春は来るという確かな希望を内包しており、単に切ない暗いではない、これまたメッセージ性のある曲だった。

11.また君の唄を聴かせて

藤井蓮がかなり前に「ギターメインじゃなくて、鍵盤メインの楽曲にシフトしたいんですよね」と私に言っていた。
それからというもの、ギターの弾き語りと同じくらい、ピアノの弾き語りをよく聞いたりするようになった。
(なんでギターとピアノ両方できんねん)
最後の不協和音ひとつで、この楽曲の意味がひっくり返るような印象を覚えた。
5分12秒をかけて、壮大などんでん返しを仕掛ける彼の大胆さにはあっぱれという他ない。

12.Loop

前曲の最後、不協和音が耳にこびりついているのを、徐々に剥がしていく「Loop」は、このアルバムの終わりを告げるのに相応しい、そんな楽曲だ。
朝日が登れば、沈むように。
始まりがあれば、終わりがあるように。
今日が終われば、明日が来るように。
日常は無機質に繰り返されていく。
でもそんな日常をしっとりと前を少し向きながら歌う彼の声を聞くと、将来の彼がどうなっていくのかがたのしみでならない。
それと同時にアルバムをループ再生しろという良い意味での脅迫すら感じる。

あとがき

このアルバムを数回聴いて思ったのは、彼の楽曲ひとつひとつに確かなメッセージがあると思う。
それでいて一貫して言いたいことは「それでも光を見ていたい」という仄かな希望だと感じた。
まだ全体の歌詞をしっかりは見てはいないものの、どんなことがあっても最終的には前を向く。
そんな意志を沸々と感じながら、このアルバムを通して何度も聴かせていただきました。

まさか藤井蓮という存在を初めて知ったあの時に、ここまで仲良くしているとは微塵も思ってなかったし、それでいて常に凄いなと思わせてくれる音楽仲間もそういないだろうなと今では強く思います。
音楽仲間の1人として、兄弟のような友達として、藤井蓮のファンの1人として、これから彼の変幻自在な姿を見られるのが楽しみで仕方ないです。

「0:00」最高のアルバムでした。
ありがとうございました。

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