チョコレートドーナツ

映画記録、始めました。
みたものすべてとは言いませんが気に入ったものを自由気ままに紹介します。続くかどうかはわかりません。

長いことAmazon Prime会員でしたが、最近やっとこさNetflixデビューを果たしたので、2年くらい前にLiLiCoさんがJ-waveの番組内でおすすめしていたNetflixオリジナルの映画「チョコレートドーナツ」(原題"Any Day Now")を見てみました。

ネタバレにならない程度にあらすじを。


主人公はルディ、ゲイのドラァグクイーン。舞台は1970年代のアメリカで、まだ同性愛が全く認められていなかった時代だ。彼のお隣さんが薬物所持で逮捕されたことがきっかけで、彼女のダウン症の息子マルコを引き取ることになり、とんとん拍子で地方検事のポールと同棲、マルコを育てることになる。
(ここまででもうすでに、いわゆるアメリカの社会問題がギュギュっと詰まってる感がすごい、、、)

もちろん同性愛は悪しきものとされていて、ルディ(ドラァグクイーン)の界隈は身内での差別はないものの周囲からの視線は冷たく、ポール(検事)は職場の意地悪なボスにバレてしまって彼に対する差別意識からマルコの養育権を剥奪するための裁判まで起こされてしまう。

もちろん裁判はルディとポールに有利なようには働かない。なぜなら彼らが同性愛者だからだ。(え?)裁判長もめんどくさそうに、早く片付かないかな、と傍観している感じだ。なぜなら同性愛者が勝てるはずがないからだ。(ええ?)最後の最後にルディとポールが頼る凄腕弁護士はブラックアメリカンなのだが、彼は肌の色や性的趣向のせいで正当に扱ってもらえないのが普通だと分かったうえで(もうそれに関してはあきらめている感じ)、それよりも強い弁護をすることで勝利を得ている。(強い!)

ルディとポールの育児は素晴らしく、マルコも彼らの愛をたっぷり受けてそだったので彼らを親として認識し、親であり続けてほしいと願っていた。にもかかわらず「同性愛者である」というレッテルのみがすべてをぶち壊しているのは、本当に見るに堪えない。

ここでちょびっとネタバレ。この映画の結末は、ハッピーエンドではない。でも一生懸命にルディとポールがマルコを愛したこと、そしてマルコにも十分それが伝わっていたことが明らかになり、じーーーーんと心に来る終わり方だ。

(実話をもとにしたフィクションです)



ふぅ、、、いっぱい書きましたが、まあ見てみればわかります。

薬物依存、育児放棄、セクシュアルマイノリティへの差別、人種差別、訴訟社会、、、様々な問題が詰まっていて、本当に濃い映画でした。ちなみに私は異性の恋人がいますが、LGBTQ allyとして自認しています。みんな人間だしね。仲良くしたいな。


この映画のタイトルについても少し。
私は邦画はほとんど見ず、見るのは洋画ばっかりなのですが、いつも邦題がいまいち気に入らず、紹介するときに原題で紹介することが多いんです。でもこの映画は邦題が満点。原題ももちろん満点。
まず原題。Any Day Nowというのはみなさんご存じボブ・ディランの歌 I Shall Be Releasedからの引用です。ドラァグクイーンのルディが最後に、「この理不尽な世の中から解放してくれ、いつかこんなにつらい世界はおわってくれ」と切に願いながら歌う歌です。今のLGBTQのイベントの様子を見ていると、彼らはもっとパワフルにレインボーフラッグを掲げてプロテストしてるような気もしますが、当時は今よりずっと扱いがひどく、仲間も少なくほぼ社会的に無力だったのでしょう。もう何でもいいからかいほうしてくれないかなー、という疲れ切った、社会や周囲の理解のない人間に対してあきれた感じに私には受け取れました。
さて邦題です。チョコレートドーナツ、、、なんで?ってなりますよね。映画を見る前私も不思議でした。実はこれ、マルコの大好物なのです。ダウン症であまりちゃんと人に説明ができない上に、薬と酒と男におぼれて育児をろくにしてこなかった母親を持つマルコに、ポールとルディが好きな食べ物を聞いたときにポツンと言った「チョコレートドーナツ」。この邦題を改めてみたとき、(原題が同性愛者の差別に対する叫びとして表現されているのに対して)マルコに対する2人の愛の大きさと深さを1語でこんなに表せるのか!と感動してしまいました。


長々と語りましたが、百聞は一見に如かず。Netflix会員の皆さんはぜひ見ましょう。
価値観の押し付けは好きではありませんが、この映画は胸を張ってお勧めします。人種差別問題が騒がれている今観れて本当に良かった。どんな群を対象にしても、属性や勝手につけたレッテルだけで人を不当に扱ってはいけないということを再確認でき、そして人を精一杯愛することはとても美しく、どんな形であれ必ずその人に伝わっているのだと教えられました。

ありがとう、マルコ。




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