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てがみ

ああ、子どもっぽい。
 書き順が違うことが一目でわかる崩れた漢字。

 「半年間 会えないのは寂しいな…」

 ひらがなだってなんだかいびつで、小さいころからちゃんと勉強してこなかったって
すぐわかる。だから 大学を中退なんかしたんでしょ。
 誇らしそうに「これが俺の考えやから 後悔してへん」とか言って、言葉の裏の不安は丸見えだったのに
私と会えない間に バイトまでやめた。
わたしがとなりで支えられないってわかってたよね。 本当に頭悪い。

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好きな歌、教えて。ミックスリストに入れて会えない間、聞くから。
いちばんに送られてきたのは「wherever you are」。 

君がどこにいても 僕が君を笑顔にする。 君がどこにいても 僕は傍にいる

英詞。もちろんかっこいいけど、ちゃんと意味わかってた?
バカみたいにストレートな歌詞だって、ねえ、知ってた?

わたしは あの半年間に、この曲何回聞いたんだろう。
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「付き合えて幸せやで」
「…愛してるで。」

 ああ、だから子どもっぽい。 そんな言葉、単純すぎる。
 国語の語彙力もなかったんだから。


だから、よかった。
こんな単純なやつとは別れて正解だった。
「俺はいつまでも好きやから。忘れへんから。」
最後までそんなこと言ってた。


半年も会えない間にせめてあなたの何かを持って行きたくて、ねだった手紙。
便箋持ってないから書けないとか言うから
結局私があげた便箋。

「大好・・・」がにじんで、そこに穴が開いてる。 
その言葉をにじませたのが何なのか、私は知ってる。
ああ、どこまでも、子どもっぽい…


バカみたいに 純粋で まっすぐだった。
わたしの中を吹き抜けて、しっかり自分を刻んでいった。

時々思い出してるなんて、きっとあなたは知らない。

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