業界では何かと話題のそごう・西武の元旦の新聞広告は、良い広告なのか悪い広告なのか。。
元旦のそごう・西武の新聞広告が、一部の業界では話題になりました。
https://mobile.twitter.com/seibusogo_jp/status/1212177879993204736
https://mag.sendenkaigi.com/brain/202003/up-to-works/018188.php
三が日がすぎて、そろそろ皆さんが興味がなくなってきたと思いますので、この広告についての、個人的におもったことを忘れないうちにまとめておきたい思います。なにせ、けっこう皆さんヒートアップしていて正直怖かったもので、三が日は黙っていました。
私は、企業につとめてすぐに宣伝の仕事を始めました。そして最初の仕事では新聞広告で仲畑貴志さんというものすごいクリエーターが広告をつくっていただきました。怖そうなおじさんでしたが、コピーを読んだときにあまりのすごさに衝撃うけて鳥肌がたったのを覚えています。わけわからないお願いをしたのに、説明していないことなのに、いわれてみれば一番いいたかったこと。いわなければいけないことが、コピーに書いてありました。それ以来広告が大好きです。
その後、広報の仕事をして、自社のWEBサイトの仕事をして、広告の仕事にもどりました。今の担当は、広告・広報・WEBサイトのトリプルメディアの現場責任者です。テレビ広告だけでなくデジタル広告も頑張ってやってます。もちろん刈り取り系といわれる皆さんから見たら甘っちょろいレベルなのですが、ブランド系広告主ではそこそこやっていると思ってはいます。
トリプルメディアのコミュニケーションを実務として企業の中でやっているおじさんのあくまでも個人的な見解です。(流派すなわちデジタル広告やアナログ広告やPRなどやっている仕事によって意見がちがうとの分析がありますが、私はおそらくどの流派にもちょっとだけ属しているでの、少しは各流派の思うことが解るつもりです。あくまでもつもり。)
この広告が悪い、良いと大きく二つに分かれました。
極論すれば
悪い派は、これで売上が上がるのか?上がらない広告など許せない。
良い派は、ブランドの広告であり、短期的な視点でみるのは間違い。売上につながらなくていい広告もあるのだ。
というご意見です。
おまえはどう思うのかというと
まったくわかりません。
です。
一見無責任に聞こえますが、私からすれば外部から広告について良いとか悪いとかいうほうがよっぽど無責任なのでやめてほしいと、ほんといつも思っているので、こうなってしまいます。
そもそも企業が高いお金をだして広告するからには、本来その広告で達成したいこと、つまり広告の目的があります。良い広告か悪い広告かは、その目的に対しての評価であるべきですよね。(もちろんそこが曖昧なことこともありますが、基本的には目的がある)
私が広告の仕事をしていて、一番悩ましいのは、関係のない外部の方が本来の広告の目的ではない目的を勝手に決めつけて、その目的には広告の訴求内容が、ふさわしくないから、悪い、だめな広告と言われることです。たとえば学生向けのリクルート広告をテレビでやった場合、高齢の方からわかりにくい、悪い広告だといわれることだったりします。ターゲットではないのですがテレビなので広告に接触されることはわかっています。なので不快感をあたえてはいけないと細心の注意を払っています。ただ、わかりにくいのは当然です。広告の目的がわからないのに、自分で目的を決め込んで、自分が対象の広告だときめこんで良いとか悪いとかいわれると。
わかるけど、ちょっとどうなのかと、
不快感をあたえたらあやまらないといけないのですが、わからないからと悪い広告といわれたり、怒られる筋合いはないのでは。。。。
今回も目的がわからないのに目的を外から決めつけなくてもいいのではと思いました。
企業が広告するときには、いろいろな目的があります。一番が売上であることは言うまでもありませんが、売上以外の目的や、間接的に売上をあげることを目的にすることもありえます。
売上以外の目的の例でいうと、代表的なのは社員のモチベーションアップです。
ある"社員が3000人の企業'が新聞広告を出しました。
そうすると働き盛りの40代の社員が帰省をしたら時に、年老いた親が新聞広告をみて、りっぱな会社につとめているのだと涙を流して喜んでくれた。子供に新聞をみせてこれはお父さんやお母さんが働いている会社なんだよというとすご~いといってくれた。
新聞広告費が仮に3000万円として(仮です。実際の価格は知っていますがあくまで説明なので、解っていないとかいわんといてください~)
3000人の社員にひとり1万円配るのと、親や子供が喜ぶのとどっちが社員のモチベーションが上がると考えたのかということです。
今回の広告の目的が仮に社員のモチベーションアップで、社員のモチベーション上がったらこれは良い広告です。でも社員がそう感じなければ悪い広告ということだけです。
あと気になったのは、デジタルの方は売りにつながることを重視されていおまずが、その方法論は消費者に売りにつながる魅力を伝えることだけでなかったりするのですよ。アナログ広告の世界では、商品を販売するお店の棚をとることがとても重要でそのために巨額のテレビ広告を実施します。目立たないところに商品がおかれるよりも、目立つところに商品が置かれるだけで売上が1.5倍になる。日本中のお店でそれが実現できるとすると、消費者に売りの訴求をするよりも。どこに商品をおくのかを決める人のためだけに、決める人に伝えたい広告する、これを目的とする方が売上増に効果的である場合もありえるということなのです。この広告は外からみると全く売りにつながらないと思えますが、実は一番売上増が確実だったりします。
一方で、ブランドの向上が目的としたら、この一回の新聞広告だけでは当然ブランドはつくれません。ましてこの広告は、大丸でも三越でも違和感がない広告、なんでそごう・西武がこの広告をだすのか?の人にとっては腑に落ちないのも当然といえます。ブランドのためというなら、広告だけではなくそごう・西武のこれからの企業活動がいままでのことをひっくりかえすことを実行できなければ、結果として売りにつながらないお気楽な広告といわれても、しかたがないことになります。広告を短期的な視点のみで評価するのは間違いです、ただブランドづくりという名のもとに、単におもしろいから、楽しいからというお気楽な広告がいっぱい存在するのも残念ながら事実です。この点から、デジタルの方の指摘は一面の真理を指摘しているといえます。今の時点では、どの百貨店でもいえることを表現しているのですから。
つまるところ、良いか悪いかは目的次第。