連載小説 | 蛍光女⑥
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私は何度も自分の運命を呪ってきた。なぜ私の顔は蛍のように光るのか?そして、父と母は私に占いなんて学ばせるのだろうかと。占い師としての英才教育を受けて、確かにあたる占いが可能になった。だが、人の運命を変えることも出来なければ、自分の運命も変えることが出来なかった。ホントに私自身に存在意義があるのかどうかさえ、分からなかった。心の中の空隙を埋め合わせることが出来なかった。
けれども胡桃ちゃんの背後霊として、変質者を撃退できたことは、私に自信を与えてくれた。
「ケイコさん、ホントにありがとうございます」って胡桃ちゃんが言ってくれたとき、とても嬉しかった。この光を発する顔に「なんで私だけなの?」と恨めしく思うことばかりだったが、ちょっとでも人の役に立てたことが実感できた。
今から思えば、その頃からだったのかもしれない。私が微笑むことができるようになったのは。
道往く人から挨拶されたり、クラスメートの男子から話しかけられることが増えた。
「蛍子ちゃん、最近、ニコニコしていることが多くなったね。前までは、大きな悩み事を抱えているみたいで話しかけづらかったけど、今はとても朗らかでホントにかわいいなと思うよ」
「そうですか?ありがとうございます」
先輩の言葉が素直に嬉しかった。
「じゃあ、また。これから家に帰らなければならないので」
私が家路につこうとしたとき、先輩に呼び止められた。
「あ、待って、蛍子ちゃん。今度、僕と一緒に花火大会にいっしょに行ってくれないかな?」
「えっ?」
私は驚きつつもとても嬉しかった。だが、花火大会は当然暗くなった夜に行われる。私は青白く光った自分の顔を見られることは極力避けてきた。気持ちだけいただくことにした。
「すみません。うちは門限が厳しくて。夜の外出は難しいかも、です」
先輩は少し沈黙した後にこう言った。
「間違っていたらごめん。本当は蛍子ちゃん自体が夜、外に出るのがイヤなんじゃないのかぁ?夜は顔が光ってしまうから」
「それを知っていて、私を花火に誘ったんですか?ひどい!」
私は裏切られたような気持ちになった。泣きたくなった。そして、先輩に背を向けた。
「待って!」
先輩が私の腕をつかんだ。
「離してください。私になんか、ただモノ珍しいから声をかけたんですよね?」
「蛍子ちゃん、違うってば。僕には蛍子ちゃんがどれだけこれまで苦労を重ねてきたのか分からない。でも、運命は変えられない。僕は蛍子ちゃんにもっと自由になってもらいたいんだ。光っていてもいなくても、蛍子ちゃんであることに変わらない。僕は蛍子ちゃんが好きだ」
先輩の顔は真剣そのものだった。
「信じていいんですよね?」
先輩がコクリと頷いた。
…つづく