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読書感想文 | 青山美智子「お探し物は図書館まで」(ポプラ社)

 先週、カポーティ「ここから世界が始まる」(新潮文庫)の読書感想文を書いた。「カポーティ」とついていると、必ず手にとってみる、と書いた。
 コメント欄で、りみっとさんの場合は、「青山美智子」さんだと聞いた。
 恥ずかしながら、青山美智子さんのことを存じ上げなかったので、図書館で一冊借りて読んでみた。

 どれにしようか迷ったが、選んだのは、「お探し物は図書館まで」。なんとなくタイトルにひかれて。

 この本には、5つのお話が載っている。その中で印象に残ったのは、5章「正雄 六十五歳 定年退職」。
 四十年以上勤めた会社を定年した正雄。半年もすれば、自分の存在も忘れられるんだろうなという寂しさ。まだ、自分では若いと思っていたのに、近所の子どもたちを見ていただけて、「おじいちゃん」と呼ばれて、職務質問されたり。

 この章を読んでいて、渡辺淳一「孤舟」を思い出した。男性の場合、仕事だけの人生になって、いざ会社を離れたら何も残らない、という人が多いように思う。女性の場合は、たとえ仕事をもっていなかったとしても、日々家事したり、買い出しに行ったり、ご近所付き合いがあったり、社会との接点がある。

 無理して趣味を作る必要はないと思いつつ、「肩書き」というものがなくなったとき、余生が始まる。「肩書き」に依存してきた人は、会社がなくなると何も残らない。
 現役のうちから、少し余生のことを考えておいたほうがいいかもしれない。
 
 


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