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追悼 | 加賀乙彦さん

 おとといの新聞報道で、作家で精神科医の加賀乙彦(かがおとひこ)さんが亡くなったことを知った。93歳だった。
 作家として、加賀さんは「宣告」「永遠の都」などの長編小説を書いた。また、精神科医として、刑事司法や医療問題などの社会的発言をおこなったことで知られる。
 オウム真理教の裁判では、松本智津夫元死刑囚と接見し、意見書を書いた。裁判を打ち切った裁判所に対し、のちに「使命を放棄した」と批判した。


 私が加賀乙彦さんのことを知ったのは、20代のころだった。
 私の20代の読書は、ドストエフスキー一色だった。(ちゃんと理解したかどうかはともかく)ドストエフスキー全集を、長編小説だけでなく、評論や日記に至るまでほぼ全て読んだ。その中で出会ったのが、加賀乙彦(著)「ドストエフスキー」(中公新書)だった。

加賀乙彦(著)
「ドストエフスキイ」
中公新書

 この新書には、ドストエフスキーの作品に登場する、ラスコーリニコフ(『罪と罰』の主人公)の「夢」の分析や、スタブローギン(『悪霊』の登場人物)の心理分析が書かれている。精神科医でもあり作家でもある加賀さんだからこそ書けた、他の文学者とは異なる視点。ドストエフスキーを描いた名著である。再読してみようかな、と思っている。

 もうひとつ、「加賀乙彦」という名前を聞いて思い出したのが、有島武郎「或る女」。

 加賀さんは、有島武郎「或る女」を非常に高く評価していた。日本文学の最高峰にとどまらず、世界文学の最高峰だと著書の中でおっしゃっていたと記憶している。

有島武郎「或る女」(新潮文庫)

 有島武郎「或る女」は、だいぶ前に買ったのだが、まだ読んでいない。今、あとがきを見たら、加賀さんの解説が載っていた😄。
 
 誰かが亡くなったのをきっかけにして、既読本の再読をしたり、未読本を読むことに、少しためらいも覚えるが、こういう機会でもないと一生読まなそうなので、「或る女」を読んでみようかな、と思っている。600ページをこえる文庫だけれども。

 偉大な昭和の作家がまた一人旅立たれた。ご冥福を祈る。


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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします