イソップ寓話集①【アリとキリギリス】

 夏のある日のこと、食べては歌っての享楽的な毎日を過ごすキリギリスに対し、冬に備えてせっせと働き、懸命に食料を貯め込むアリが言いました。
「バカだね、目先の楽しみに流されず、もっと先を見据えて生きるべきじゃない? あっという間に厳しい冬が来るわよ」
 しかし、キリギリスには全く響きません。
 やがて、夏が終わり、朝晩冷え込むようになると、キリギリスは死にました。元々寿命が2か月程度、一夏だけの命です。冬に備えた準備なんて必要ありません。キリギリスは、限られた寿命を思いっ切り楽しんで過ごしたのです。そして、沢山の子孫も残し、心置きなく旅立ちました。
 一方のアリは、丸二年の生涯を、十数年も生きる女王の為に支え、休むことのない重労働だけに費やしました。そして、使い捨ての生涯にひっそりと幕を下ろしました。



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