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【小説×音楽】宇宙人侵略譚

「おい、起きろ。また奴らの攻撃開始だ。」

 同僚に叩き起こされて俺は飛び起きると、急いで身支度を整えた。

「奴らは何機だ?」
「よくわからない。恐らく100機以上は確実だ。しかも、戦闘能力が高い乗組員の『ダイオウイカ』型が多い。」
「本当か。『タコ型』や『イカ』型ならどうにかなるが、『ダイオウイカ』型となると、かなり厄介だな。」
「とにかく急いで準備しろ。一旦奴らの人類への攻撃がはじまったら、収拾がつかなくなる。その前に先手必勝だ。」

 そう、あれは2カ月前のことだ。

 最初は、数か国で空飛ぶ謎の飛行物体の動画がネット上にアップされ、ニュースで話題になったことが事の発端だ。

 当初は、単なるイタズラや、某国の秘匿軍事技術の漏洩など、いろいろとウワサがたったが、特に人的被害などはなかったため、次第に忘れ去れるはずだった。このようなニュースはたまに世界中で流れては忘れられるのが通例だったし、誰もがそう思っていたはずだ。

 ところが、ある時状況は一変した。

 突然日本国の横浜みなとみらい上空に、巨大な宇宙船が現れ、人類を攻撃し始めたのだ。
 宇宙船は円盤の形をしていて、その直径は優に100mは超えている。恐らくこれ自体は母船だろう。何故なら、その宇宙船の真下がパカッと開き、無数の小型の小さな飛行物体が飛び出してきたからだ。その小さなその飛行物体はまさに当初のネット動画で公開された映像上に写ってるそれのシルエットと動きまさにそのものだった。

 母船を拠点に無数に散っていく飛行物体の数は一体何機あるのが不明だが、母船が横浜上空に現れてから数日間は横浜市全体の空を覆いつくした。空を見上げると、まるでテレビのスノーノイズのような情景が広がり、数日間は太陽を覆い隠して薄暗い日々が続いた。今はその時ほど空には飛行物体は飛んでないが、恐らく世界中に散ったのだろう。ニュースなどでも世界中でその話題にもちきりとなり、まさに大パニック状態だ。

 各飛行物体には、一体ずつ宇宙人が搭乗しているらしい。飛行物体は特定領域を探索しながら人類を見つけると下降し、地面に着陸すると、上面部の半透明な扉のようなものが「プシュー!」と音と共に煙を立てながら開き、中から登場する。その姿形は、地球上の生物で言うところの「イカ」や「タコ」に近く、くねくねとして動きをする。

 特筆すべきは、奴らの人類への攻撃方法だ。彼らは一度人間をロックオンすると、人間に飛び掛かり、攻撃を開始する。その様相はそれまでの人類の戦争におけるあらゆる攻撃法よりも残酷極まりなく、人は声が潰れて腹筋が痙攣するほど絶叫し続け、挙句の果てには失神してしまう。
これまでのどんな人類の戦争やパンデミックには見られない、まさに人類的に前代未聞な状況となった。

「地球人たちの反応はどうだ?」

 イカ型の宇宙人は、いくつかある触手の何本かを宇宙でフラフラさせながら、分析官のタコ型宇宙人に聞いた。

「はい、相変わらず逃げ回ってますね。何か我々の対応に問題があるのでしょうか?」
 目の前の有機的なコンピューター画面には、宇宙人が地球人との「接触」を試みる映像が映し出されている。
「ふむ。確かに何かとてつもない恐怖から逃げてるようにしか見えないな。もしかすると我々がただ『挨拶』をしたいだけであることに気づいてないのではないだろうか?」
「そうかもしれませんね。そしてそれは地球人にとっては何か恐怖や不快な体内現象を引き起こしている可能性もあります。」
「それにしても、この反応は一体何なのだ?我々の接触に伴って、一定間隔で連続的な音声を発生させ、彼らの視覚装置からは液体が流れ落ちる個体も存在する。そして、接触行為をやめると、また一目散に逃げだす。」
「はい。とりわけ、上腕の付け根や胴体の真ん中あたりの接触に対して、敏感に反応するようです。」
「地球人同士のこのような行動をとることはあるのか?」
「はい、地球上のいたるところで地球人同士で確認されてます。特に若年齢の地球人同士でも同類の現象が確認されてますし、会話時などにも特定の発話をきっかけに似たような行動をとることがしばしばあるようです。」

 二人の宇宙人は、コンピュータ―画面を見つめながら考え込む。

 そこには、宇宙人の触手によって体中をくすぐられ、笑い転げる姿があった。

 それから、5年後。

 全世界的な協力体制でようやく宇宙人たちを一掃することに成功した。
 ようやく地球の平和が戻ったのだ。各国では歓びの祝杯モードで満ち溢れ、世界中の人々は、しばらくお祭りムードで享楽した。

 一方、地球から遥か彼方離れた銀河系の惑星内。

建物が犇めくエリアのとある研究所員の宇宙人は、その部屋をノックして入った。

「それで、例の銀河系内の星の宇宙人の反応はどうだ?」
 コンピュータ―画面を見ながら何やらキーボードを叩いていた所員が、くるりと振り変える。
「お疲れ様です。反応は当初と変わりませんね。どうやらこの星の住人たちは、我々を一掃したと思ってるようです。」

 地球人とよく似た人体構造を持つこの星の生物は、両手を広げてそう報告する。

「そうか。そうすると、我々本体とは別のアバターが飛来したに過ぎないとは夢にも思ってないわけだな。」
「はい、そのようです。今なら油断してるので、我々本体が一気に攻め込めば全滅は容易いかと。」
「うむ。当初の我々の『挨拶』も通用しないようだし、友好条約を結ぶのも難しそうだな。よし、では本作戦に移行しよう。」

 そして、この星から、地球ほどの大きさの強大な宇宙船が、大量の殺戮兵器と兵士を載せて、地球に向かって旅立っていった。



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