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#5 ピアノのレッスンが辛い人へ

こんにちは。きっこです。

数あるピアノに関わる書籍を要点を絞ってご紹介しています。今回は、樹原涼子著「教える人も習う人も幸せになれる ピアノランドメソッドのすべて」をご紹介します。

樹原涼子さんは、ピアノランドシリーズを出版されている作曲家でありピアニストです。ピアノランドは多くのシリーズや関連テキストが出版されています。

この本では前半でピアノランドメソッドの根底にある思いや考えを解説し、後半ではシリーズを全て紹介しているのが本書です。

中でも「幸せ」「センス」「カウンセリング」というキーワードに注目してみたいと思います。

ピアノ弾く人、習う人、教える人が「幸せ」になる。

習い事を始める理由は人によって様々ですが、多くの人が明るい将来を描いて始めるのだと思います。ピアノを弾き、音楽を奏でることで、生活に潤いや彩りがもたらされることを期待しているのではないでしょうか。

それなのに、思ったような潤いのある生活が訪れるどころか、練習が辛くなってしまったり、ピアノのレッスンに通うことが億劫になってしまったりと、習い事に苦しめられてしまうということが起きてしまうのが現状です。

特に多いのが本人に加えて親御さんが苦しんでいる姿です。自宅で思うように練習をしない、練習しても適当で投げやりに聴こえて苛立ってしまう、アドバイスをしても聞き入れず喧嘩になる、などよく相談されます。

ピアノを教えている立場で、こういう苦々しい場面に出会ったことのない方の方が少ないのではないでしょうか。

樹原さんはそんな現状を踏まえて「幸せなピアノレッスンのための具体策」を語ります。大まかにまとめると3つの視点があります。

1.ピアノを「弾かなくてはならないもの」ではなくする。

ピアノを習い始めると自宅での練習が同時に始まります。

「次のレッスンまでにこの曲を練習しなきゃ。」
「ここを弾けるようにならなきゃ。」

自宅練習は「〜しなきゃ」と弾かなくてはいけないものと追い込んでしまいます。ですが樹原さんは次のように、「〜しなきゃ」と強制されてピアノを弾くことのマイナスな面を語ります。

私たちの脳は、「嬉しい、楽しい」と感じる場面では集中度が上がります。
強制されたことや極度の緊張、恐怖を感じる場面では脳が働かず、集中力が続かず、上達することができません。
同じことをするのでも「楽しんでする」のと「嫌々する」のでは、まったく異なる結果になってしまうのです。
自分が成長することを、自分が喜ぶ。自分で自分を祝福できるなんて、本当にすばらしいことです。その体験を、簡単に奪うのが「強制」であることを知っていただければと思います。

このような理由を踏まえて、樹原さんはこう繰り返します。

ピアノは弾いても弾かなくてもいいものです。(断言!)
ピアノは「弾かなくてはならないもの」ではなく「弾いて楽しむもの」です。

「弾かなければ」を抜け出すポイントは「主導権」と周りの大人の音楽への姿勢です。

2、主導権は親でも先生でもなく「本人」が持つ

ピアノを弾くことの主導権を、習う人本人が持つ、それが、幸せなピアノレッスンの第一歩です。

「弾いて楽しむ」へつながる第一歩を本人が主導権をもつことだといいます。

家庭で親が主導権を握り、見事に弾くお子さんを時々出会いますが、そんな時の多くは本人は一生懸命に指を動かして弾いているものの、心ここにあらず、という感じです。

何よりも、演奏者の心が音楽とともにあるかどうか、が気になります。音楽に心が向かっているかどうか。そうでなければ、どんな専門的なアドバイスをしても双方が満足するいいレッスンにはなりません。

3、親や先生がピアノを通じて幸せになっているか?

本人に主導権を持ってピアノと向き合ってもらうには、親やピアノの先生がピアノがどんなに素敵なものかを感じさせるだけで十分だといいます。

そして、次のように問いかけます。

まず、ご自身の心がピアノを通じて幸せになることが先決だからです。ピアノを引くことを心から楽しみ、その音色と響きを味わい、幸せに浸ってみてください。それは、十分に魅力的な行為ではありませんか?ピアノは、弾かせようとしなくても、習う人が自ら弾きたくなる素晴らしいものではありませんか?


興味を持つことが「センス」アップにつながり、センスアップがやりがいにつながる。

センスとは違いがわかること。

樹原さんはこのようにセンスを定義して、幸せなピアノレッスンのキーワードだといいます。

主体性を持ってピアノに取り組むためには、本人の中に「こうやって弾きたい」という思いが必要です。その思いを育むものがセンスだということもできます。

 センスを伸ばすには、「興味を持つ」ことが第一です。
「好きになる」「もっと知りたくなる」のが最強!ということです。

小さな違いを「面白い」と感じて、「もっと知りたい」と自分からその世界に入り込んでいくことがセンスを伸ばしていくといいます。

そのためにも先ほどの「自主性」がが大切になってきます。

センスを磨くためにも「強制」という概念は入り込む余地がありません。

教える人がカウンセラーのような役を演じて導く「カウンセリングレッスン」

カウンセリングレッスンとは、樹原さんが1995年に名付けたレッスンコミュニケーションスタイルの概念です。

習う人が音楽を「我が事」と認識して能動的に取り組むために、教える人がカウンセラーのような役を演じて導く方法のことです。
レッスンが幸せな時間となるための大切なコミュニケーション方法。

先生から生徒に一方的に教えるというスタイルではなくコミュニケーションを丁寧に取りながらレッスンを進めていくといいます。

教える人も習う人も同じ人間同士、音楽の素晴らしさを分かち合う仲間です。

一方的なレッスンの場合、何かうまく行かないことが起きた時には、「練習してね」ということで済まされてしまいます。

カウンセリングレッスンでは、どこに問題があるのかをコミュニケーションを取るなかで探っていきます。

問題のありかを明らかにして、それに合った行動を助言します。

そうすることで、主導権が自分にあることを感じることにも繋がります。

年齢にかかわらず、「あなたのレッスン」であることを子どもが意識できる流れを作っていきましょう。

「主導権を自分が持つ=幸せなレッスン」
それぞれのキーワードが関連して生きていきます。

ピアノ習得メソッドに止まらず、レッスンスタイルのメソッド

以上のキーワードから見えてくるのは、楽譜の読み方や、ピアノの弾き方を習得するメソッドに止まらず、レッスンのスタイルを根本から構築しているメソッドであることがわかります。

コミュニケーションを密に取るカウンセリングレッスンで、主体的に、センスを磨きながらピアノと向き合う。それが、苦しいレッスンではなく「幸せなレッスン」に繋がり、幸せなピアノのある暮らしに繋がります。

実際にピアノの弾き方を習得していくメソッドにも、ピアノランドの重要なキーワードである「二段階導入法」など、ユニークな部分が多くあります。

樹原さんの提唱するレッスンスタイルに共感された方は、ぜひ、本書と「ピアノランド」を手に取ってみてください。



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