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マリア・ジョアン・ピリスのピアノリサイタル

昨日は、サントリーホールにマリア・ジョアン・ピリスのピアノリサイタルを聴きに行きました。ピリスは、今、生きている女性ピアニストの中で、一番好きな人です♪ 現在78歳とのことですが、5年前の引退宣言で落胆していたところ、最近演奏を再開していることを知り、チケットを予約していました。昨日のプログラム解説によると、当時の引退は、マネージャーと仕事に対する意見が合わないことからだったようですね。

私がピリスを好きなのは、演奏の素晴らしさはもちろんのこと、母国ポルトガルの村などで若手ピアニストたちと共同生活を行い、「音楽家である前にひとりの人間であること、丁寧な生活やディスカッションの中から音楽は生み出される」との信念で教育活動を行うなど、ものの考え方に共鳴して尊敬しているからです。

ここで、ピリスをご存じない方は昨年のこちらの動画を♪ マルタ・アルゲリッチとの夢の競演ですが、短髪の人がピリスです。アルゲリッチも素晴らしいけれど、やっぱりピリス、好きだなあ。

さて、昨日の演奏曲目は以下の通りでした。
シューベルト:ピアノソナタ第13番 D664
ドビュッシー:ベルガマスク組曲
シューベルト:ピアノソナタ第21番 D960

登場からすごい拍手でしたが、シューベルトが始まって最初の2小節で泣きそうになりました。2小節で泣かせるなんて、凄い!(それを言うと、最初の1音で、という人がいそうですが...笑)音色といい表現といい素晴らしくて、こんなにも美しいものを聴いていいの?と思う瞬間がありました。こういうの、ゾッとするような美しさ、というのかしら。続くドビュッシーは、ピリスの主要レパートリーではない印象ですが、ストイックなピリスらしい演奏で、新鮮な感じがしました。

そして、後半のピアノソナタ第21番ですが、これはシューベルトの最後のソナタで、亡くなる直前に書かれたものです。シューベルトの孤独や苦悩、天上の世界、そしてピリスの内面の表現にどっぷり浸りたいところでしたが、せっかく生で聴ける機会なので、ピリスのどこがうまいのかを、目を閉じて聴いていました。私は自分でテンポの運びと音楽の流れ的なところに課題を感じていて、そこに注目して聴いていましたが、少し分かったような・・・、今日から早速トライしたいと思います♪ ピリスのうまいところは、いろいろありますが、私は特にハーモニーの作り方に惹かれました。その場その場で絶妙な深い響きがしていて、響きの作り方やバランスにとても拘っているのだろうな・・と感じました。

シューベルトの21番は、聴いていて長いな~と感じることもありますが、昨日は、もうすぐ終わりかぁ、終わらないでー!と思いました(笑)さすがはピリス!!そして、終わると割れんばかりの拍手。立って拍手する人もいたので、私も迷わず立ち上がって拍手しました。アンコールはドビュッシーの「アラベスク第1番」1曲だけで、最後は会場の明かりがついて、多くの人が立ち上がって力いっぱい拍手し、サントリーホールが地鳴りするようでした。最初と休憩後に感染対策で「ブラボーなどの声援はお控えください」とアナウンスがあったにも関わらず、最後は何人もの人が「ブラボー!」と。これはもう、言ってしまいますね(笑)

拍手をしながら、しみじみと、ピリスは世界の宝だな~!と思いました。これからは「引退」など言わず、同世代のアルゲリッチとともに弾き続けて欲しいです。そして、また日本に来てくれる時には、ぜひ聴きに行きたいなと思っています♪

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