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感性ってなに?

日常で「感性が強い人、豊かな人、鋭い人」または「感性が乏しい人」と言葉を使うことがあります。

でも「感性」とは一体何でしょうか。

日常的に人々が「感性」という言葉を使う時、感性が強く豊かな人は、植物や音楽や絵画などに対して感動を覚える人であり、感性が乏しい人は、植物や音楽や絵画などに対して感動を覚えない人。

と使い分けている気がします。

実際自分でも「感性」という言葉をこのように使うのですが、

「それは感性ではなく感受性のことなんじゃないだろうかー」と頭の隅で考える事があります。

感性と感受性は違うのか?と考えると…おそらく違います。

感性とはなんでしょう?


例えば美しい景色に遭遇しました。とても美しい「ヤバイ」景色です。その「ヤバイ」景色の内容を言葉で過不足なく表現することはとても難しいことです。

その「ヤバイ」景色をどんな言葉を使っても、自分の感じた「ヤバイ」を上手く表現できず歯がゆい気持ちになった経験が誰しもあるでしょう。

言葉で表現をするプロの方々でも、その時感じた「ヤバイ」を全く同じ形で他人に伝えて、感じさせることは不可能だと思います。

このようなことは、美しい景色でなくても日常的に無制限に起こっています。

例えば「漢方薬」は、植物などを煮出して使う薬です。
でも人によっては「信頼できる植物由来の薬」、またある人は「植物由来でなんか怪しい薬」と思うかもしれません。

「漢方薬」に対して、先天的な性質や経験、記憶などを集めて感じる「何か」は多種多様で、この「何か」はあまり言葉を用いて共有されることはないです。

「植物由来の薬」という認知は共通しているとして、その意味のみ抜き出して伝えますが、それはその人が感じている「何か」の欠片にすぎません。


「感性」という言葉の由来は、19世紀の哲学者である西周(にし あまね)が、カントの「純粋理性批判」を訳した際に作り出した造語だそうです。

カントはその本のなかで「Verstand は直感的に知ることができない、Sinnlichkeit は考える事ができない」と述べて、これらは独立な領域であって、相互に変換できないとしました。このVerstand  Sinnlichkeit を西周がそれぞれ、Verstand=悟性(ごせい)Sinnlichkeit=感性と訳したそうです。

悟性とか…何のことだかさっぱりですよね…説明します。

悟性とは「広辞苑」によると

「カントにおいては、感性に与えられる所与(しょよ)を認識へと構成する概念能力で、理性と感性の中間にあり、科学的思考の主体」のこと。

結構難しい説明ですね。

これを簡単にいうと「感性は「何か」を感じる能力で、悟性は感性を言葉で表し論理的な思考を紡ぎ出す能力」ということだと考えられます。

感覚を通りもたらされる全てのものに対して、人間はまず感性で「なにか」を感じ、それを悟性を使って認識まで持ってくるということでしょう。

もちろんこの過程は脳の中では一瞬ですので、私達が意識することは殆どありません。


長くなりましたが「感性 広辞苑」の意味をググってみると

  外界の刺激に応じて感覚・知覚を生ずる感覚器官の感受性

  感覚によって呼び起こされ、それに支配される体験内容。
  従って、感覚に伴う感情や衝動・欲望も含む。

という説明がありますが、前者ですと受動的なものだけになり「何か」が抜け落ちています。

これまで説明した「感性」の話は、様々な器官から飛び込んでくる全てのものに対して、自分を通して発生した「何か」で飾り付けていく能動的なものを含んだ概念でしたので、後者のほうがしっくりくると思います。

ここまで説明すると、このnoteを読む前に思っていた「感性」はなんか違いますよね。

では「感受性」は?というと先程の

”外界の刺激に応じて感覚・知覚を生ずる感覚器官の感受性”

とありますので、感性の一部分を抜き出した言葉でしょう。

したがって「感性が強い、豊かな人」とは「感受性が強い、豊かな人」であり「刺激(感覚などの)に対して反応する器官が敏感」だから植物や音楽や絵画などに対して感動を覚える。

「感性が乏しい人」は「感受性が乏しい人」であり「刺激(感覚など)に対して反応する器官が鈍感」だから植物や音楽や絵画などに対して感動を覚えない。

のであり、感性には強い弱いはなく最終的に認知しているのであれば全ての人間がもつ能力だと考えられます。


ですが感性が「何か」を感じる能力だとすれば人間だけではない生き物にも感性があると思いませんか?

でも「感動する」というこの不思議な気持ちは無いように思えるのです。

感性の一部分である感受性は人間の高度に発達した脳ならではの現象かもしれません。

そして、もしかしたら感受性とは最近でてきた謎の言葉「人間力」の正体かもしれませんね。

おしまい

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