見出し画像

ヨーロッパで行われているサッカー選手の救急処置


初めまして。イギリスの大学で理学療法を専攻している加藤です。


渡英してはや3年が経ちます。気づいたら大学も残り1年。臨床実習、インターン、卒論等、今年はやること盛りだくさんです。


先日、イングランドサッカー協会(FA) の Level 4 メディカルコースを受講したので、その内容について数回に分けてまとめていきます。


FA メディカルコース


FAのメディカルコースは5段階にレベルが分かれており、今回は去年取得したレベル2からレベル3を飛ばしてのレベル4受講でした。受講者はフィジオセラピスト、スポーツセラピスト、マッサージセラピストと様々でしたが、みな自身のクラブで Picth Side First Aider としての役割を担っています。レベルはプレミアリーグからナショナルリーグまで幅広い印象でした。受講資格等はFAのサイトに記載されているので、興味ある方はとんでみてください。



救急処置 DR A-E Approach


さて、本題に入ります。今回はイングランド及びヨーロッパで行われている救急処置方法についてです。


救急処置と言えば 2017年のアトレチコ vs デポルティーボ の試合が記憶に新しいと思います。フェルナンド トーレス選手が相手DFに後ろからチャージを受け、ピッチに頭を打ち付けて気絶しました。


このような状況でメディックがどのような対応をするのか。そのプロセスについて順をおって説明します。(あくまでざっくりの説明です。参考程度に読んで頂けたらなと思います。)


軸となるのが  DR  A-E Approach  です。ドクターAトゥーE アプローチと呼びます。DからEまで順番に行わなければいけないので、気道の確保(A)ができていないのに呼吸の確認(B)を行うといったことはありません。



どのような状況下でも、この DR A-E Approachが用いられますが、今回は意識の失った選手の処置にフォーカスします。


レフェリーが試合を止めている場合、基本的に 周囲の安全が確保 (D) されているのですぐさま選手にアプローチ、反応の確認  (R) をします。この際、声をかける前に行うのが頚椎の固定です。Manual in-line Stabilisation (MILS) と呼ばれ、頭部を両側から押さえることにより首を固定します。トーレス選手のように、頸部の怪我が疑われる場合は必ず行う必要があります。


声を掛けても反応がない場合は、耳たぶをつまみ、痛みでの反応確認を行います。反応レベルには APVUスケール を用います。今回は Unresponsive (反応なし)だったと仮定して次に進んでいきましょう。


Airway 


反応の有無の確認ができたら、気道確保 (A) です。口内がクリアである事を確認した後、下顎挙上法 により気道を確保します。一般的には頭部後屈顎先挙上が使用されますが、スポーツの現場では頸部の損傷が疑われることが多いので下顎挙上法が好まれます。経口エアウェイや経鼻エアウェイも状況に応じて使用されます。


Breathing 


そして 呼吸の確認 (B) 。10秒以内に呼吸音や胸の動きで呼吸の有無を判断。していない場合、すぐさま 心肺蘇生法 を始めます。


呼吸はしているが呼吸数が 10回/分 未満の場合、バッグバルブマスク(BVM)を使用。呼吸数が 10回/分 以上で酸素が必要と判断した場合は 非再呼吸式マスク を使用します。いずれも酸素流量は 15L/min呼吸を評価する際に使われるのがRIPPA Assessment ですが、今回詳細は省きます。


Circulation 


続いて 循環の確認 (C) です。

呼吸の有無の確認とほぼ同時進行で行えるのが 頚動脈の触知 。呼吸数と心拍数はベースラインとなる大事な情報なので、実際は酸素マスクや呼吸の評価を行う前に触知します。気道確保 (A)から呼吸数 (B)、心拍数 (C)の測定。この一連の流れを Mini ABC と呼び、ベースラインを得た後、再びAに戻りそれぞれを詳しく検査、処置するという流れです。


脈拍が確認できない場合はすぐさま 心肺蘇生法 


確認できた場合は、続いて橈骨動脈の測定ブランチテストを行います。頚動脈は存在するものの、橈骨動脈の確認ができない場合は出血を伴うケースがほとんどです。空洞への内出血があるか触診しましょう。主に胸部、腹部、腰背部、骨盤、長骨をチェックします。



Dysfunction 


選手が通常どうり呼吸しているのにも関わらず、意識がない場合は再び意識レベルを AVPU スケール を用い確認します。最終的に意識レベルは Glasgow Coma Scale を用いて判定しますが、これは通常ピッチサイドではなくメディカルルームで行われるものです。


Expose / Examine 


最後に処置、治療が必要な部分があれば、検査する (E) といった形です。今回は意識を喪失した選手の処置にフォーカスしましたが、仮に足首の捻挫もしくは骨折のみ疑われる選手にアプローチをする際、(A) (B) (C) (D) はあってないようなものなので この (E )がメインとなります。もちろん、(C)で足背動脈や内果動脈の確認、ブランチテスト等は必要ですが。


(A)から(E)までの処置が完了し、選手が安定している場合のみピッチからの救出を行うといった流れです。もちろん、メディカルルームでも (A)ー(E) を使って二次アセスメントをします。


まとめ


どうだったでしょうか。サッカー選手の救急処置方法、DR A-E Approach についてざっくり説明させて頂きました。個人的にすごく分かりやすいプロセスでしたので、シェアしてみようと思った次第です。


意識のない選手においてはとくに、Pitch Side First Aider の迅速な対応が求められます。数秒のディレイが生死を分ける世界。自分も自身のクラブでフィジオとして活動させて頂いてるので、責任を持って行動していきます。



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

32
イギリスの大学で理学療法専攻中。Non Leagueで 1st Team フィジオやってます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。