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<第12回>ヒットCMを生み続けた男の「発想の原点」とは?

『アイデアの直前』 
岡 康道著(河出書房新社)

❶イントロダクション~いまは品切・重版未定の一冊だが、読む価値あり

本書は2020年に他界された日本初のクリエイティブ・エージェンシー、「TUGBOAT(タグボート)」の設立者、岡康道氏のエッセイです。岡氏は、日本を代表するクリエイティブ・ディレクターとして活躍されました。また、TUGBOATが手がけたCMは、誰しもきっと観たことがあるはずです。現在は品切・重版未定で、電子書籍もありませんが(2021年11月15日時点)、読む価値のある一冊だと思います。

「おおっ!」と思った人もいるのではないでしょうか。
さて、岡氏のアイデアの源泉はいったい、何だったのでしょう?

では早速、読み解いていきましょう!!

➋独断と偏見のお勧めポイント:ファースト・ペンギンとして、電通から独立

「現実は、夢のとおりではなかった」

岡氏は電通時代、営業職を経てCMの企画制作に携わり、話題作も手がけられています。その後、部長職時代に部下を引き連れて1999年に独立。大手広告代理店から、ファースト・ペンギンとして最初の一歩を踏み出されたことは、その後の広告業界に大きな影響を与えたことは間違いありません。

独立直前、ヨーロッパのクリエイティブ・エージェンシーのビジネスモデルを社命で研究していた岡氏。広告業界のビジネスモデルの変化、手数料ビジネスから企画で儲けるフィー・ビジネスへの変化が日本でも起こることが、自身の研究でわかっていました。なぜなら、インドと日本以外の先進国では、そのビジネスモデルがすでにスタンダードだったからです。

ふと、岡氏は思います。これって、誰か近々、日本でやるんだろうな、そして、自分もやりたい。
いや、待てよ。クリエイティブ・エージェンシーに日本でいちばん詳しいのは、自分じゃないか……。

その1時間後には、一緒に退職する3人の部下の了承を得ていたというのですから、さすがです。
※部下から退職したい、と相談されていたときには、「自分が部長のときは辞めないでね(人事評価が下がるから)」と言っていたそうですから、よほど信頼されていたのでしょう。

しかし、岡氏がいちばん夢見ていたのは、自分たちに続いて、次々と独立が続き、日本の広告業界が一夜で変わることだったのです。現実は、自分たち4人だけが一瞬で変わっただけだった、と振り返っています。

❸深掘りの勧め:苦しいことや辛いことは必ずある

「生産性のある仕事をしていますか?」

岡氏は、広告の仕事について、自分が思うことをたくさん書かれています。そのほとんどは「困ったこと」や「辛かったこと」「苦しかったこと」。でも、仕事は楽しかったそうです。企画を出すのが辛い、と言っておきながら、100年くらい企画を出し続けてもいい、と考えていました。

どの仕事でも言えることですが、苦しいことや辛いことは必ずあります。うまくいかないこともある、いや、ほとんどうまくいかない、と岡氏は語っています。

大切なことは、何が問題なのか、を理解すること。そして、生産性(=結果)のある仕事をすること。
これは、「イシュー(問題)」を見極めることとも言えます。

「売上げが足りないから、とにかく何かやれることはないか?」
「上期の売上げ対策をとにかく考えてくれ」
と、いう世の中によくある「問題」は、真の「イシュー」ではありません。
岡氏のエッセイには、独立後のさまざまな「問題」の本質を突く、生産性を高める方法が何げなく書かれていて、ビジネスパーソンの心に響くのではないでしょうか。私は、理不尽さのほうに、かなり共感しました(笑)。仕事はたいへんだとわかっていても……いや、このへんにしておきましょう。(苦笑)

さて、あなたの今日の会議は合計、何時間でしたか? 実際に決まったことはありますか? やることがどれだけ決まりましたか?
仕事の生産性はいかほどか、改めて考えてみてはいかがでしょう?


◆今回の名言◆

「仕事の報酬は仕事だよ」
井深 大(1908~1997年/日本の電子技術者および実業家)

仕事があるって、成功していることだと思いますね。

★おまけ★最近読んでいる本

『ドムドムの逆襲』藤﨑 忍著(ダイヤモンド社)

著者は39歳まで専業主婦でありながら、その後、「109」のショップの店長となり、売上げを倍増。さらに新橋の居酒屋の女将となり、予約困難な人気店に育て、2018年にドムドムバーガーの社長に就任。
彼女の破天荒すぎる人生は、テレビ朝日「激レアさんを連れてきた。」でも紹介されました。「えっ」というエピソードとノーモーションの決断には、驚きの連続。お勧めです。