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世界は絶望と愛でできている

10代の10年間が、きっと最も長い10年になるのだろうな。

10代を終えたばかりだけど、そんな予感がする。


※※※

新海誠さんの最新作を公開日に見た。
(新海さんの作品に関するネタバレ注意です)

大学終わり教室を飛び出して、自転車に乗り疾走した時間はこの映画の記憶とともにずっと忘れない時間になった気がする。


新海さんの作品が好きな理由の一つにアニメーションの色がある。
言葉では表現できないあの色彩が本当に好きなんだ。
新海さんの初期の映画の絵は今とは異なっているけれど、色彩と景色の美しさはずっと変わらなくて見るたびに心が浄化される。

もう一つ、新海さんの映画が好きな理由として、登場人物の日常やひとりとひとりの人間関係を大切にして描いていることにある。絶望することが多いこの世界で出会い、お互いのことを強く想っているその姿が微かな希望を与えてくれる。それは、主人公の年齢が10代後半だからなのかもしれない。
もう私には決して戻ってはこない10代という時間に対して、私はいつの時代の10代も青くて青くてまっすぐで儚い、と思う。

「君の名は。」を見たときの私はまだ主人公より年下で、まっすぐな想いにただただ圧倒されていた。ちょうど、彼らの運命が変わる日が私の誕生日でなんだか物語の一部に私もなれた気がして嬉しかったことを覚えている。
そんな私は気がついたら彼らの年齢を越していて、だからこそ同じ作品でも感じることが少し変化し、より強く人がひとりを必死で守ること、人が人に守られることの大切さを受け取った。
ラストではお互いに必死で名前を呼び合い続けるが相手の名前を思い出せなくなってしまう。日々においても、忘れてしまうってどうしようもないことだけど、ともに過ごした時間があったことだけは確かだ、と思うんだ。

「天気の子」には、
「世界なんてさどうせもともと狂ってんだから」
「ぼくたちはきっと大丈夫だ」
という言葉を主人公たちが言うシーンがある。
10代の未熟な男女が放つこの言葉の強さは半端じゃない。
この世界に希望を抱くことはできなかったとしても、相手のことだけはちゃんと見えていて、どんな犠牲が生じても必死で守り抜くまっすぐな想いには言葉で表現できないものがあると思う。

「秒速5センチメートル」も「言の葉の庭」も「星を追う子ども」も「雲の向こう、約束の場所」もそれぞれの作品にはそれぞれの作品の良さがある。その中で、巨大で抗えないどうしようもないものに愛でぶつかっていく。何かを大切に想う気持ちがあればなんとかなるのではないか、と信じてしまう、信じさせてしまう力があって、そんな世界観が好きなんだ。


新海さんのいつの時期の映画を見ても、表には見えない、ふたりにしか分からない世界を描いているように感じる。だからこそ、心に響き、私の日常が少し色づく。

そして、日々を大切に生きること人を大切に生きることの重要さを改めて感じさせてくれる。
この世に人間という生き物は溢れるほどいるけれど、心を交わした相手はたった一人しかいないという素敵で儚く尊い感覚がひしひしと伝わってくる。



友だちを、家族を、誰かを、大切に想う気持ちが
誰かに大切に想われる気持ちが
この世を成立させているのだと最近は思うのです。





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