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装わないという装い

昔から母親はほとんど化粧をしなかった。


化粧する女性は綺麗だと思うし、ここで化粧がいいか悪いかの話をするつもりは一切ないんだけど、とにかく普段うちの母親は一切化粧をしない。

でもその素朴な顔が、幼心にもとても凛として美しく見えた。

何か特別に外に出る時に、慣れない化粧をちょこんと乗っけてさあ出かけましょうという顔をするんだけど、その微笑みもどこか味があった。


この前久しぶりに会った時に、首に何か洒落たものをつけていたのでどうしたのと聞くと、「自分で作ったのよ」と言った。

そのパールの丸い粒たちが、彼女の首元にちょうど良く座りながら煌めいていて、すかさずカメラを取り出してしまった。


特別に洋服を買うこともなく、少しくたったカーディガンを何年も着ていたりするんだけど、うちの母親ほど内面から着飾った人を見たことがない。

そんな母親を見て親父は

「見ろ、お母さんを。何もしないのにあんなに素敵だろ。お前もああいう女性を見つけろな」

と盃を片手に毎晩語っていたのだった。


そうこうしているうちに桜の季節を迎え、ついに当の息子にもお相手が現れ、、、

という展開になった際はまた改めてご報告させていただきますね。

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