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なぜ下北沢で、フォーを提供するのか/フォーミン下北沢

皆さん、はじめまして。
私は、昨年12月から下北沢でベトナムの国民食であるフォーを中心としたカフェ&バー『フォーミン』を展開している阿部幸製菓という会社の専務を務めている阿部と申します。

日本ではまだまだ馴染みのないフォーを、もともとは食品メーカーである私たちが、下北沢という土地から広めていきたいと考えた理由やこだわりを少しでも多くの皆さんに知ってもらいたいと思い、このNoteを書くことにしました。

フォーミンを運営する阿部幸製菓株式会社は、新潟県小千谷市に本社を構える食品製造メーカーです。柿の種を中心とした米菓の製造販売が主な事業ですが、「食」を経営理念の中心に置き、中食事業や海外展開も積極的に展開しています。

今回は、これまでの挑戦の中でもとくに我々の経営理念を大切に、一人でも多くの人に「食」の素晴らしさとそれによって笑顔になってもらいたいという想いの詰まった事業になります。

1.フォーミンとの出会い

2019年、私はベトナム・ホーチミンを訪れました。

これまでも何度か訪れたベトナムで、偶然か必然か、運命の出会いを果たすことになります。もともとは本業である米菓事業のビジネスチャンスを探して、東南アジアを巡っていた最中でした。

我々の会社の経営理念である「世界の人々にわたしたちの食品を通じて笑顔にしたい」ということを体現するため、世界共通である「食」の可能性を私自身も追い求めています。その一環として東南アジアにも頻繁に足を運んでいます。

誰もが美味しい食を食べれば笑顔になれる。そんな力を秘めているからこそ、日本だけではなく世界で事業を展開していきたいというのが会社、そして私の信念でもあります。

実はベトナムという国は、かつて少し事業を展開していた土地であったが、近年はそこまで深い関係があるわけではありませんでした。

今回もたまたま知人を介して、米菓ビジネスの可能性を探るためにベトナム視察に訪れただけでしたが、そこで運命の味と出会うことになってしまいました。

ベトナムの国民食であるフォー。日本ではまだそこまで馴染みのある料理ではないですが、名前くらいは何度か聞いたことがあるという感じだと思います。実際、何度かベトナムを訪れていた私もここ最近まで、フォーに対しては苦手意識がありました。まずパクチーが得意ではなく、麺もスープも少し物足りない感じがあり、好んで食べたことはありませんでした。

しかし、今回偶然にも出会ってしまった。
人生で最も美味しいと思えるほどのフォーに、すっかり虜になってしまった。

フォーミンを知ったきっかけは、たまたまホーチミンで知人と食事をしていた時に、「せっかくならホーチミンで一番美味しいフォーを食べてみたい」という会話になったことがきっかけでした。

その店のオーナーにオススメの店を聞くと「PHO'MINH(フォーミン)だよ!」と教えてくれたのですが、実はこのオーナーの友人でもあり、お店の料理長でもある人が、PHO'MINHのオーナーでもあることは後で知ることになります。

PHO'MINHがあるのは、ベトナムの南部にある経済都市ホーチミン。観光客が賑わう繁華街からは少しばかり離れた閑静な場所に突如として現れる。イメージとしては東京の神楽坂のような裏路地にディープで美味しいお店があるようなそんな場所にある。

ベトナムの国民食であるフォーですが、実は北部ハノイが発祥の地とされています。ハノイ発祥のフォーを南部ホーチミンで広めたのが、PHO'MINHだと言われています。1947年にホーチミンで創業者が移動販売車でフォーを販売したのがきっかけで、約70年間続いているフォーの名店です。

PHO'MINHの創業者であるチャン・ミン氏が、北部の食べ物だったフォーを南部の人向けに改良を重ね、70年以上たった今で提供し続けているその味は、現地の人々に愛され続けています。

しかし目立った看板もなければ、場所もわかりづらい。こんなところで大人気のフォーが提供されるのか、些か不安にもなるのだが、PHO'MINHは、朝6時から10時までしか営業しておらず、たった4時間で約200食販売するほどの人気店だというのだから最初は戸惑ってしまったことを覚えています。

最初に訪れたときは朝8時前にも関わらず、外国人観光客と現地住民が行列を為していました。私もその行列に並びながら、「本当に美味しいフォーが出てくるのだろうか」という一抹の不安を抱えていました。

そんな不安は、そのフォーを口に入れた瞬間に微塵もなくなり、感動すら覚える衝撃に変わっていた。牛骨ベースのあっさりとして味わい深いスープに、米粉からできたスッキリとした歯ごたえの麺に、シャキシャキした香草が絶妙に絡み合う。これまでのフォーの概念を覆されたそんな瞬間だった。

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しかもPHO'MINHのフォーはここで終わらない。なんとフォーと一緒にミートパイを食べるのがPHO'MINH流。もともとはフォーが提供されるまでの前菜的な立ち位置で提供されていたらしいが、いつしかそのミートパイをフォーのスープにひたして食べることが主流になったとのことだ。

あっさりしたフォーと濃いめに味付けされたミートパイが絶妙にマッチして、2度3度楽しめる味わいになる。これが衝撃的で忘れられなかった。

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ホーチミンにあるPHO'MINHのフォー。本店でも牛骨の他に、4種類の部位の牛肉を使ってスープを仕込んでいます

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ミートパイとセットで食べるのがPHO'MINH流


「この味を日本でも再現して提供したい!」

すぐにオーナーとコンタクトを取り付けると、PHO'MINHを教えてくれたレストランのオーナーだったことは上述したとおりだ。まんまとやられたと苦笑いしてしまいましたが、その後PHO'MINHを調べていくうちに、本当に現地で最も愛されている店だと確信できたので、よかったです。

日本に展開するにあたり、全面協力してくれたPHO'MINH の現オーナーDiさんには感謝してもしきれません。ありがとうございました。

2.なぜ下北沢でフォーをやるのか

すっかりフォーミンの虜となった私は日本で展開をする準備に取り掛かりました。日本人にとって馴染みのある料理ではないフォーをどう発信していくべきかを考えた時に、日本の中で独自のカルチャーを発信している場所がいいと考えました。

そこでいくつか候補をあげた中に下北沢があって、そこを拠点にしており、新規事業を一緒に探しに行った仲間でもあるBARE NOTE STUDIOの黒木さんに相談しました。

黒木さんと話していく中で下北沢という場所は古着やオシャレなカフェ、ライブハウスなど日本らしいカルチャーを持っている土地だということがわかり、新しいことをやるにはピッタリだと思いました。

シンプルに現地のものを持ってきて同じようにやっても日本には馴染まない。けれど現地の味やこだわりはできる限り再現をしたいと思っていたので、中身は忠実に再現しつつ、それを表現する空間としては日本らしいカフェスタイルで、カジュアルだけどオシャレに、新しい食文化を楽しんで欲しい。そんな想いにピッタリな場所が下北沢でした。


3.フォーミン下北沢のこだわり

フォーミンのフォーは、その伝統が物語る通り、長きにわたり、現地の人々を笑顔にしてきました。現地の味は現地でしか味わえないものだとも思っていますし、現地の味は日本人好みでないかもしれないなと感じました。

実際食材の関係で現地の味をそのままそっくり真似るということはしていませんが、それでもできる限り私が体感した感動を一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと、かなり忠実に再現をすることを目指しています。

「現地の味を、日本で味わう」という想いで、我々のグループ会社で持つ製造のノウハウをベースに、現地の味を再現しつつ、日本人好みのアクセントを加えたフォーとなっています。

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フォーミン下北沢店のフォーミンセット。現地と同じくミートパイとセットで食べるのがフォーミン流。香草や薬味はお好みでどうぞ!


スープも日本人には少しあっさりしすぎているという意見もありますが、素材の選定から味付けまで現地のものをベースにしています。現地では好みの調味料や香草をあとで追加していくスタイルなので、2種類のソースと3種類の香草を用意し、お好みで入れて頂く形で楽しんで頂きたいと思っております。

また現地のスタイルであるミートパイをセットで提供することで、さらにフォーの美味しさを引き出しています。あっさりしたスープをベースにしたフォーと濃い味付けにしたミートパイを一緒に召し上がって頂くことで、現地で75年愛されているフォーミン流のフォーを楽しんで頂けるようにしています。

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「ゆったりカフェで、自慢のフォー。」をコンセプトに、音楽やファッション、食べ物のトレンド発信地である下北沢から、新しい文化である「モーニングフォー」を発祥の地としていきたいと思っています。

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