経済とつくることの試論①「坂口恭平という経済から考える」

経済とつくること、ここ数年僕はずっと考えてきたことなのですが、このことに関して一度しっかりと考えてみようと思いまして、noteを書いてみます。しっかり続けていきますので、ぜひ皆さんご覧になってください。

今回は「坂口恭平という経済から考える」ということで書いてみます。こういうことをしようと思ったのも坂口の本に触発されたからです。ここからスタートです。果たしてどのような旅になるのかとても楽しみです。

坂口恭平さんが、『お金の学校』という本を自分で出版されました。これはnoteにも全部公開されています。

ここには、経済の今の経済の考え方とは全く違う経済観が書かれています。ここでも読めますが、せっかくなので本を買いました。この本は晶文社からも出ることが決まっているようです。

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坂口経済の定義

坂口さんのいう経済の定義はこうです。(これを坂口経済としましょう。)

 経済=自分を救う=民を救う=共同体のルール=楽しい仕事=「大丈夫、きっとうまくいくよ」と自分に言うこと

経済とは流れなのです。停滞した瞬間にもうだめなんですね。今の世の中、坂口経済で考えると全くこうなっていないことはすぐにわかります。そもそも給料はすぐに払われるということは基本的にありません。その日その日に払われないし、どんなに忙しくても暇でも一緒のお金です。はっきり言ってこれは全く流れではありません。完全に固まっています。これが基本ですから、当然流れることはありません。頑張っても給料に反映されるのは半年先だったり、1年先だったり、ひどいときはどんなに頑張ったとしても一向に反映されるということはありません。その頑張った分は、自分の手元にも来ない。すべて資本家、経営者の懐に行きます。安定という名の固着を手にするために働いている。もちろん僕もサラリーマンだからそうです。しかし、坂口経済から言わせればこんなにしょうもないことはありません。

経済=自分を救う

まず、坂口経済では自分を救うという言葉が出てきますが、おそらく今の仕組みのことだけを考えていればこの言葉の意味は全く分かりません。なぜなら今の経済の仕組みでいけば自分を救うなどということはほとんどできないからです。ほとんどの人が嫌なことを嫌なタイミングに"仕方なく"しなければなりませんから。当然、そんな状態では自分を救うことはできない。むしろ傷つけてしまいます。身体も心もいつか悲鳴を上げます。自信も失います。

僕は医療関係者なので、この自分を救うということに関しては関心が深いです。僕は今の日本人が若くして生活習慣病やがん、脳や心臓の病気になってしまうのは、自分を救えない経済だからだと思っています。例えば心理学では病気になりやすさということからタイプA、タイプB、タイプC(最近はタイプDもあるらしいですが)性格という分類があります。詳細はリンクに譲りますが、タイプAは競争心が強くてイライラしがちな人。これは心臓疾患にかかりやすく血管を痛めやすいということがわかっています。タイプBは飛ばして、タイプCは、自分の意見を言えずに我慢するタイプです。落ち込みやすく自信がない。これはがんにかかりやすいことがわかっています。そしてタイプDに関しても読んでみたらとても面白かったのでよかったら調べてみてください。この人たちは否定的でネガティブな感情を抱きやすく、人とあまり関わりたくない人たちのようです。精神疾患、肥満、心疾患などにかかりやすいことがわかっているとのこと。さて、飛ばしたタイプBですが、この人たちはあまり人に合わせたりもせず、かといって我慢したりもせず、のんびりと生きているひとたちです。この人たちは病気にかかりにくいことがわかっています。そして、今の経済の仕組みは、タイプBの人を極端に作りにくい世の中になっています。みんなに競争させています。僕は競争というのは人の不幸の上に成り立つという発想なので、根っからすきではありません。競争が好きな人はタイプAでしょう。その競争に負けた人はおそらくタイプCになっていくでしょうし、競争などしたくないのにいやいややってる人はタイプDになっていったりするでしょう。坂口経済ではこういうふうにして病気になるな、といいます。タイプBのように生きていきませんか、との提案ではないでしょうか。そのためにまずは自分を救う。自分のペースで自分のしたいことをすればいいという提案。やりたくないことでもしなければ生きていけない。今の経済はそうです。もちろんときどきなら仕方ないでしょうが、ほとんどの人が毎日このような状況で動いています。ある意味、病気になっていくのは当たり前ではないでしょうか。僕は医療関係者だから言いますが、人に病気になってほしくないのです。でも僕らは基本的には病気になってしまった人とかかわります。病気になる人を減らす活動をする前に、病気の人が多すぎるので、手が回りません。だからこそ、違う仕組みで生きていこうという気持ちでいるのです。

経済=民を救う=共同体のルール

民を救う、共同体のルールと出ています。つまり、自分を救うという考えが、他者をも救い、集団の規律になっていくということなのです。坂口さんはここで文化人類学者のレヴィ=ストロースの言葉を出してきます。酋長(しゅうちょう)、村の長のことです。レヴィ―=ストロースは、村の長が決して財をたくさん持っている人ではないことに気づくのです。むしろ気前よくひとに与え、器用になんでもこなす人、これが酋長として選ばれていくのです。坂口経済とは、自分を救うことから敷衍して、他者を救い、共同体を作り上げていく考えでもある。坂口さんはこのお金の学校の文章もすべて無料公開しています。この気前良さが、他者を救い、共同体のルールとなっていく。だんだんとみんな坂口経済に参入していくのです。このような坂口経済の、つまり草の根的な経済の流れが広がれば、人はいろんな酋長のもとで営まれる経済に参入していくことができます。もちろんこの本を読んで、僕も酋長になろうと決心したわけですが、このようにすれば、政治家なんかに、何もわかっていない上の人なんかに頼らなくてもよくなるのです。もちろん今の日本の政治はめちゃくちゃで崩壊しているので、当然そのことに対しては「お前らいい加減にしろよ殺すぞ」と言い続けなくてはいけないのですが、そんなことだけをやっていても僕らの生活はまったくもってよくはなりません。だからこそ酋長になるか、酋長についていく必要があるのです。たとえば今の20代は悲惨な労働環境、悲惨な金銭状況で生きています。そしてみんな今の世の中の仕組みで動いていては自分たちの将来は本当にめちゃくちゃにされると気づいています。ある意味で坂口経済のような新しい仕組みを切望していたり、既に酋長になっているひとが現れ始めているころなのだと思います。坂口経済を通して、酋長が何人もあらわれていけばいい。そしたら世の中は確実に良い流れになります。ある意味で坂口経済はアナキズムでもあるのです。国家には頼らずに自分たちの手で生きていくという、アナキズム。そんなことを考えていたら、ミシマ社にいい文章がありましたので貼っておきます。岡山大学の松村圭一郎先生です。実は僕の母校も岡山大学なのです。こうやっていろんなところのリンクを貼っておくのも、流れなのです。経済なのです。坂口経済なのです。

経済=楽しい仕事=「大丈夫、きっとうまくいくよ」と自分に言うこと

そしてこの、自己、他者、共同体と広がる流れは"楽しい仕事"であるわけです。いやいやながらするような停滞とはまったく異なる。だからどんどん楽しくなって、自分も周りも楽しくなっていく。大丈夫きっとうまくいくよ、が経済の最後の合言葉のように書いてあります。しかしこれは合言葉でもなんでもなく、ただの事実であり、一つの真理であるということを坂口さんは言います。大丈夫きっとうまくいくよを植物に学んだというのです。つまり、人間は脳があるがゆえにあることないこと余計なことを考えてしまう。しかし、植物はそんなこと気にもせず、自己を周りの環境と適応させながらなんの不安も抱えることなく、動物や虫やほかの植物や大気や土を、そして人間を豊かにしながら生きている。植物という生き方を哲学的に書いた本があります。エマヌエーレ・コッチャ『植物の生の哲学』です。

「流動性とは物質の集積状態のことではない。世界が生物のもとで、また生物に対して自身を構成する、そのありようこそが流動性なのである。…自身の形状を、なにがしかの自己イメージに即して拡張してくような物質は、すべて流体なのだ。」

「世界にあるということが〈浸り〉であるならば、思考と行動、働くことと息をつくこと、動き、想像、感じることなどは分離できなくなる。浸っている存在が世界と結ぶ関係は、主体が対象と結ぶ関係になぞらえられるようなものではないからだ。むしろそれは、クラゲと、クラゲをあるがままの姿で居させる海との関係に相当するだろう。わたしたちとそれ以外の世界とのあいだに、物質的な区別はいっさいなくなるのである。」

ほかにもこの本にはいろいろ書いてあるのですが、坂口経済は植物の生き方と大体同じなのです。流れに沿って、自己を拡張していく。しかもその自己の拡張は周りの環境に浸りながら主体と対象は分離しなくなる。だからすごく楽しいのだと思います。坂口さんの本にはセックスの話ばっかり出てきますが、要する坂口経済とは周りの環境と"交わりながら"生きていくということなのだとわかります。「大丈夫だよ、きっとうまくいくよ」というのは、そんな言葉すらそもそもないかのようにうまく生きている植物のありかたそのものなのです。だから、「みんな植物になろうよ」という盛大な問いかけなのです。植物は自分の動きによって、自分のエネルギーを生み出します。人間にとってはそれが経済にあたる。経済の一部がお金です。だから自然にお金も増えていくことになります。自分の楽しくなるように動けば自然と実っているもの、それが本来の経済だと思うのです。僕も書いていてそういうことなんだ、と発見しました。ぜひこれを読んだ方は、『お金の学校』を読んで自分なりの坂口経済の解釈を行ってください。この営み自体ももうすでに坂口経済に参与しているということなのです。


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