マスコミの印象操作

NEWSポストセブンが行ったアンケートで、次のような結果が出たそうだ。

【政府が配布する「アベノマスク2枚」、あなたは使う? 使わない?】と題する緊急アンケートを行い(4月10日~13日投票)、男女1994人(男女比は6対4)から回答を得た。その結果、「使う」と答えた人はわずか24.1%にとどまり、「使わない」と答えた人は75.9%に上った。

(アベノマスク緊急アンケート 75.9%が「使わない」の理由、以下、引用は全て同記事より)

そもそもアベノマスクという表現を使っているところからして疑問を感じるのだが、わずか24.1%という表現、これは疑問の余地はないだろう。明確な印象操作情報操作の類である。このことは、使わないと回答した人の意見だけを紹介していることからも明白である。使うと回答した24.1%の声は隠蔽したのだ。

つまり、この記事は、国民をコントロールすることを意図して書かれているのである。勿論、今更驚くような話ではないが。マスコミはいつだってそうしてきた。

ちなみに、個人的には、24.1%というのは、かなり多い数字だと思ったのである。案外多い。だって、そもそもマスクを既に持っている人は使う必要がない。特にマスクが入手困難といわれている東京ですら、いざ外出してみると、9割の人がマスクを付けていることが分かるのだ。一体どこから調達してきたのだろう。もちろん私も外出時にはマスクを装着しているが。

ところで、今回この記事を紹介するのは、アンケートのコメントが面白いと思ったからだ。

「言い出しっぺの安倍首相はマスクをしているけど、他の閣僚は誰も使っていない。誰もいないんですよ! これは効果がないことを立派に証明しています」(80歳男性)

何も証明していない。(笑)

おそらく他の閣僚が使っていないのは、布マスクを持っていないからだし、他の人が使っていないということは効果がないことの証明にはならない。このような妄想に過ぎない意見を紹介しないといけない記者の苦労を思うと、そこはかとなく哀れな気持ちになる。もう少し説得力のある意見はなかったのだろうか。そもそも、この記事自体、

「使わない」と答えた人の理由で多かったのは、布マスクの効果が疑わしいとする言及だ。

と指摘しながら、

もっとも、全国的に不織布マスクの品薄状態が続いていることから、すでに代替品としてお手製の布マスクを所有している人は多い。

と述べるあたり、効果があるのかないのか、した方がいいのかしても意味がないのか、さっぱり分からない。結構苦しいアンケートに記者が頑張ったということかもしれない。なお、結論としては専門家が、

他につけるマスクがないならば、布マスクでもつけない選択肢はありません

と述べているので、やはり布マスクでも何もしないよりは付けた方がいいのだ。

ところで、次に指摘したいのは印象操作の技法として見習いたいところなのだが、次のような回答者がいるのである。

マスクがなくて困っている施設や個人に寄付するとの声も多く寄せられた。

つまり、使わないという回答の中には、マスクが役に立たないからいらない、というのではなく、マスクを必要とする人に使ってもらいたいという人が多く含まれているのだ。

単に「使わない」というと、マスクは使われずに無駄になるような印象があるが、寄付すればマスクは使われて役に立つから、そのような声が多く寄せられたのなら、それは「使う」「使わない」とは別に集計すべきなのだ。しかしそうしなかったのは、もちろん、そんなことをすると印象操作に失敗するからである。例えばそのような回答が半分以上あったら、このマスクが役に立つという印象を与えてしまいかねない。うまく選択肢を与えるというのは、アンケートの結果をうまく誘導するには基本の技である。

他に面白いと思った意見をもう一つ紹介したい。

「マスクに466億円もかけるのであれば、休業補償に回すべきと思う。あるいはマスクと一緒に10万円の小切手を入れるのはどうだろう。政府にはスピーディーで真に役立つ方策を考慮いただきたい」(63歳女性)

休業補償という発想は称賛すべきだと思う。ありふれているかもしれないが、国民の切実な願いであることは確かだ。休業補償とはちと違うかもしれないが、仮に466億円を5千万世帯に配ったら1世帯あたり932円も配ることができるのだ。例えば私の一昨日の昼の弁当が2人分で900円だった。932円あると、とても助かる。

もちろん、10万円の小切手という意見には賛成できない。小切手を持った人が銀行に殺到し、感染者がいたらクラスタが発生することが目に見えているからだ。それよりは思い切って現金を入れるべきだ。もっと効果的なのは、ほにゃららポイントを20万ポイント進呈、のようなやり方である。ポイントは有効期限切れにする人が大勢いるので、ポイントを配布すると予算よりも多めに配布することができて、結果的に使う人が得をするのである。10万円の予算で20万ポイント(予想)を配布できるのだ。ほにゃららを何にするかで大騒ぎになりそうな気もするが。想定外にどんどん使われたらどうしよう。

蛇足しておきますが、皆さん、小切手の換金方法って知っているんですか? ちなみに私は小切手を作ったことは何度かあるが、まだ換金したことがない。

話を戻すと、5千万世帯に10万円ずつ配ると5兆円が必要になる。最新のニュースでは全員に10万円ずつ配布という案が出ているが、日本の人口は 1億2千万人強らしいので、12兆円程度必要になる。そのお金はどこから出るかというと、安倍政権のポケットマネーから払われるわけではなくて、要するに税金だ。私達が国に預けた財布から持ち出すのである。ということは、余分に使えば後から回収する必要が出てくる。増税だ。そこを忘れている人が案外いそうな気がする。

長くなったので今回はこれ位にしたいが、後への伏線を一つ投げておきたい。この記事には、次のようなことが書かれている。

アンケート調査でも明らかになったように、466億円もの巨額の税金を布製マスク配布に費やすのではなく、医療崩壊を食い止めるための医療支援策に充ててほしいというのが多くの国民の思い。

これはジャーナリストの山田稔氏の意見だ。マスクを使うという人が4人に1人いるのは無視するとして、これで気になるのは医療支援策というのは一体何かということだ。

もちろん、政府は布製マスクの配布だけでなく、他の各種対策、もちろん医療支援策も含め、同時に進めている。布製マスクの配布は、その中の一つの施策に過ぎない。ただ、あくまで私見だが、アンケートに答えている国民の皆さんは、どうもそれを知らずに言っているような気がするのだ。実際、Yahoo!ニュースのコメントを見ても、マスク配る位なら医療支援しろ、みたいな意見がわんさかある。何でマスクを配る以外のことをしていないような勘違いをしてしまうのか。もちろん、それは印象操作が上手くいったからなのだ。


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