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#30 大阪の大好きなカレーたちについて熱くスパイシーに語らせてくれトゥナイト。

気負わない料理と気負わない人々。カレーを特別視しない姿勢が、大阪にはあるような気がした。ごたごた難しいことを考えるな、御託はいいから食え、うまけりゃいいじゃねえかという明るさ。それが、大阪のカレーにはあるような気がした。一言で言えば面白いし、さらに言えば美味しい。まだまだ全然行けていないけど、僕は大阪のカレーが好きだ。


とある雑誌によれば既に大阪のカレー屋は第五世代、5th Generationに突入したらしい。携帯電話より先に5Gの到来である。未来を行っている。

先日のカレー本まとめの中に東京と大阪の外食カレーの始まりについて書いてあったが、東京の外食カレーは新宿中村屋とかナイルレストランから始まったのに対し大阪は阪急百貨店の食堂が始まりらしい。そういった歴史的な経緯がすこしは東西のカレー観に関係あるのかも。


強そうで固そうなカレー屋

先日、定食堂金剛石という名前のお店を訪問した。カウンターだけの小さめのお店だが、お客さんは絶えない。メニューには定食とカレーがあり、半分くらいの人は定食を注文している。この日の定食は黒酢チキン南蛮定食。これにも惹かれたがそこはカレーで。カレーも日替わりで変わるようで、この日のカレーは粗切りラムマトンキーマと書いてある。そこに迷わずトッピング追加で砂ずりのアチャールを注文。

金剛石というだけあって、強そうなカレーが来た。粗切りラム入りのマトンキーマと豆乳ダル。さらにトマトアチャール、キャベツのポリヤルにナスの炒め、ジャガイモのマッシュ。
一日中仕事で疲れていたのもあったかもしれないが、口にした瞬間にカレーが沁みた。思わず、「うわっ、うまっ」と独り言を言ってしまった。なんだろう、このこなれた感。とても実直な味だ。そういえば、「ターリー」や「ミールス」、「ダルバート」も定食だ。カレーは、単なる定食の構成要素にすぎないのだよ。ご飯のおかずなんだよ。そんな声が聞こえてくるようだ。

マトンキーマには、ラム肉の一口大の塊が入っている。それが口に運ぶスプーンにランダムに混ざってくるのが楽しい。そして、それぞれのおかずを混ぜる。豆乳ダルとキーマを混ぜる。アチャールを混ぜる。そんなふうに無心で食べてしまった。

短い滞在時間だったが、心は確実にどこかにトリップしていた。灰色の男たちから時間を奪い返しては、またここに訪れたいと思う。



スルリと入るダルバート

ダルバート。ダル=豆のカレー、バート=ごはんであり、そこにいくつかおかずが加わったら立派な食事になる。ネパールでは食事=ダルバートらしく、「カナ」とか「カナセット」とか言われてどこでも食べられた。というかネパールに行った時には他の選択肢はほとんど無かった。ネパールでチキンカレーなんかを作るときは、ターメリックと塩と油を結構多目に入れる。おいしいんだけど、少し田舎臭い料理だなあという印象が拭えなかった。

しかしダルバート食堂のダルバートは洗練されていた。形が残らないくらいまで煮込まれたダル、すっきりと仕上がったチキンカレー。ムラコアチャールにティムールの効いたゴルベラアチャール、サグ炒め、じゃがいものタルカリ。要素は普通のダルバートと同じなんだけど、それぞれが行きすぎず、かなりスタイリッシュに纏まっている。

手を洗って、指で混ぜながら無心で食べる。サラサラとして水のようだ。実はこのとき既に一軒行っていて、連続二軒目だった。にも関わらずすんなりと胃に収まる。全く無理はしていない。旅のテンションもあったが、普通のダルバートではこんなにスルスル入ってこない。

店内でムラコアチャールを干していたし、ネパール愛がすごい。落ち着いて、色々話を伺ってみたかった。


結局定食が好きなのだろうか

結局自分は、定食が好きなのだろうか。いや、形式じゃなくてカレーが好きなんだ。先日久しぶりに大阪に行ってグッと来たのは上のふたつだが、大阪には何度もカレーを食べに行っていて、他にも好きなカレー屋さんがたくさんある。例えばバンブルビー

 先日やっと行くことができて、そのときはキーマ三昧を食べた。この店はすごい。何が凄いって、スパイスの量がすごい。キーマカレーしか無いんだけど、インドカレーとは全然違う。ハーブとスパイスの塊のようなカレーは、辛いというよりは、重い。マスターは重力操作系の能力の使い手。独特の空気が漂う店内のカウンターは、緊張感から自動的に味集中カウンターと化す。


それからヌワラカデ。大阪スリランカといえばロッダグループだが、自分は姉妹店のこっちの方がかなりしっくりきた。ロッダと同様に店員さんは全部混ぜて混ぜて!と激推しして来る。いきなり全混ぜするんじゃなくて、様子見しながら少しずつグラデーションを楽しむのが好き。

↓ギャミラサセット


さらには、関大前の老舗タンダーパニー
メニューはチキンカレーのみでサイズが普通から特盛まで選べる。かつて恵比寿で間借り営業をされていたあしたのはこのルーツ。生玉ねぎスライスや、骨からするりと肉が剥がれる手羽元など、共通点はたくさん。インド帰りの親戚からレシピを教えてもらったと言う、小麦粉を使っていないインドカレー。毎日大量の玉ねぎを炒めて三十数年、 これからもあと100年くらいやってほしいです。



自分の好きなカレーを知る。自分がどうすれば幸せになるか、自分がどうすればゴキゲンでいられるかを知る。そうやって、騙し騙し人生の暇つぶし。

書かなかったけど、表紙写真のカルータラが一番好きかも。


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