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人生に必要なのは恋と音楽とビリヤニ/世界の台所探検家とお話した:カレー哲学の視点(21/8/8〜8/14)

人生に必要なのは恋と音楽とビリヤニだ!

この言葉はまさしく真理である。親に内緒でシェフ修行を積んだ主人公が勘当され、祖父の営む海辺の大衆食堂で働きながら人生に大切なものを探していく『ウスタード・ホテル』という映画のワンシーンのセリフ。この映画はYouTubeで公式に公開されていたヒンディー語バージョンしか見たことがなく、一部の単語と雰囲気しかわかっていないのだが素晴らしい映画らしい。この言葉だけがいつまでも脳裏にぶらさがっていて、ふとしたきっかけで思い出す。

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恋も音楽もビリヤニも、別になくたって人間は死にはしない。ただ、それは死にはしないというだけだ。生命維持には特に必要のないものかもしれないが、それがなくても生きていけるかというと別の話だろう。

僕だけかもしれないが、ビリヤニを見ると異常にテンションが上がる。瞳孔が開く。心拍数が上昇する。それは米に対する具材の肉の多さだったり、過剰なスパイスの量による刺激だったり、かつて与えられてきた糖と脂肪と塩分の記憶に紐づく生理的な欲求によるものなのかもしれない。

ビリヤニを毎日のように食べるようになって思うのは、特別な日だからビリヤニを食べるわけではなく、ビリヤニを食べるからその日が特別になるのだということだ。

ハレとケ、日常と非日常、暮らしと旅。アップダウン。A面B面。どちらも生きていくのに必要なものだし、表裏一体のものなのだと思う。

いま「暮らしと旅」という言葉で、インド旅のことを思い出した。空港から外界に出て熱気と喧騒に巻き込まれた瞬間、いつも「また来てしまった...」という期待と後悔の入り混じった気持ちを抱えながら旅が始まる。しかしそのうちそのドキドキも日常になり、リズムがつかめてくれば旅の風景が当たり前になってくる。どこかのタイミングで、日常と非日常の反転が起こる。

同じように、毎日ビリヤニを食べているとその刺激が当たり前になってしまい、だんだん感動が薄れてくる。やがて、表面が油でも塩でも包まれていないプレーンなお米が食べたくなってくる。要するにビリヤニや旅をちゃんと楽しむためにも普段のくらしをしっかりやる、みたいなことなんだろうか。

飽きることはないと思っていたけどビリヤニを食べ過ぎて飽きた。それをいうためだけにここまでの文字数を使った。

ビリヤニは派手な恋人。たまに会うと刺激的だけど毎日一緒にいると胃もたれする。一生連れ添うならプラオみたいな一軒地味だけどちゃんとおいしいヤツのほうが飽きが来ないのかもな。

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東京おっこい堂さんとコラボしたトリプルビリヤニプレート


世界の台所探検家とお話した

「世界の台所探検家」の岡根谷さんをマサラ部室にご招待してお話した。最近はメキシコとスリランカにハマられているらしく、そのご縁で東京マサラ部室でビリヤニ会をすることになった。

ご著書の『世界の台所探検』には、世界16カ国に旅し、台所に潜入したエピソードやレシピが載っている。キッチンを見れば、その国の事情や暮らしぶりが赤裸々に見えてくる。まさに、台所には「生きるのすべてがある」のである。

このときはビリンジと白ビリヤニを炊き、ブルガリアのパプリカの保存食リュテニツァをごちそうになった。言ってしまえば蒸し焼きにしたパプリカのチャトニー。日本のパプリカを使うとどうしても水っぽい仕上がりになってしまうらしいのだが、とても甘くビリヤニとも相性がよかった。

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話題はメキシコのことからインドのこと、ヨーロッパでのスパイスの使い方まで多岐に渡った。トルティーヤのためにたくさんのとうもろこしを試されているという話が面白く、どうやらイドゥリを作るためのウェットグラインダー(電動石臼)がトルティーヤの生地を作るのに適しているという。

しばらくインド亜大陸の料理に囚われてしまっているが、世界の国の料理に広く目を向けてみると多くの食文化に驚くような共通点があるし、構成はわりと似通っていたりする。そういった驚きを見つけるためにも、はやくワシは旅に出たい。

そういえば、このとき差し上げたバスマティライスが甘酒になったらしい。アミロペクチン含有量がポイントのようですね。

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