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#1 麻婆豆腐はカレー?人類最初のカレーを妄想する

毎週月曜更新、勝手にカレー哲学。
カレーは道であり、カレーはBGMです。


今回は極端な思考実験を通して、人類最初のカレーがなんであったか?というのを考えてみたいと思います。戯言だと思ってお付き合いください。


僕はカレーに取り組むアプローチを5つのカテゴリーに分けている。すなわち「作る」、「食べる」、「学ぶ」、「語る」、「愛でる」である。


カレーから一旦離れてみても、結局またカレーのことばっかり考えてしまう、これが「カレーを愛でる」という病気だ。それをまた哲学に絡めて考えてしまったりすると途端に話が抽象的になりややこしくなる。


我々にとって感覚できるカレーはひとまず食べ物である以上、あまり抽象的な話ばかりしていても意味がないのではないかと思ったり、言われたりすることはある。


しかし、カレーをカレー足らしめているのは言語による世界の分節化機能による。つまり、カレーがカレーであるのは『あなたが言葉によって「カレー」をそう定義しているから』に他ならない。

だから、「カレー」という概念の中身を分析していくことでカレーの新しい姿が見えてくる、かもしれない。


ということで今日はカレーを概念的に考えてみます。


 「カレーとは何か?」ということを考えるときによく例に出されるのが、「麻婆豆腐はカレーか?」問題である。


▼四川の名店珍々の麻婆豆腐。旨辛。

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この問いが出てくるということは、麻婆豆腐を「カレー」だと思っている人がそれなりにいるということを意味する。

では、何故麻婆豆腐を「カレー」だと思うのか?スパイスを使った料理をカレーとするならば、麻婆豆腐もいわゆるスパイスを使っているからだ。作り方は色々あると思うが、一般的な麻婆豆腐に使われている材料は以下のようなものだと思う。

油、豚ひき肉、醤油、豆板醤、甜麺醤、豆腐、唐辛子、ニンニク、しょうが、豆豉、鶏ガラスープ、長ネギ、片栗粉、花椒、塩

このうち、僕がスパイスとして数えたいのは、

醤油、豆板醤、甜麺醤、唐辛子、ニンニク、しょうが、豆豉、長ネギ、花椒

である。いわゆるハーブに分類されるものもあると思うが、ハーブはスパイスに包含されるものとする。いわゆるカレーに使われるのはにんにく、しょうが、唐辛子、花椒あたりだろうか(花椒はネパール山椒に似ているので)。


スパイスは香辛料とも呼ばれるように、その役割は味をつけることではなく、料理に「香り」、「色」、「辛味」をつけることである。日本でスパイスというと辛味のイメージが強いが、辛味を持つスパイスは唐辛子と黒胡椒、マスタードくらいで、スパイスの本領はやはり「香り」である。

そして漢方薬とインドのスパイスに共通のものがあるように、スパイスは古来より薬としても使われてきた。

スパイスの定義はかなり広く、人間が薬効や香りを摂取して活用しているような植物は全てスパイスであると言える。つまり、一見スパイスと思えないような中華調味料の甜麺醤、豆板醤、豆豉や日本の醤油、味噌なんかもスパイスと呼ぶことができる。

そればかりか、茶やマリファナ、タバコ、コーヒーなども植物の有効成分を人間が楽しんでいるという意味で広義のスパイスに含まれる。

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まとめます。

結論:麻婆豆腐はカレー。

1、カレーとは、スパイスが使われている料理の総称である。
2、スパイスは人間が薬効や香り、辛味などを利用しているような植物全般である。
3、麻婆豆腐にもスパイスが使われている。

スパイスは複数使わないとカレーとは呼べないとか、ターメリックを含まないといけないとか色々な意見がありそうですが、現時点での僕の考えはこうです。


ここで思考実験として、人類最初のカレーを妄想してみます。

火の使用を覚えた人類は、ウッホウッホといいながら、狩猟や採集によって得た肉や魚などのタンパク質を土器で煮ます。味が物足りないので海水で塩味をつけます。更に、同じムラの仲間が摘んできた香りのよい草を、具としてではなく香り付けのために鍋にぶちこみます。みんなで美味しく食べます。

これが、人類初のカレーの誕生です。


多分日本なら、海辺でとれた貝を土器で煮たのでしょう。そこに、三つ葉とか近くに生えていた良い香りのする草を入れて香り付けをし、調理して食べたのでしょう。日本人にとってのカレーの始まりは、こういうものだったのではないか。


以上、カレー哲学の妄想でした。


※本稿の中で「カレー」は広義での概念的なカレー、カレーは形而下のカレーを示します。



あまり更新してないけど、ブログもやっています。⬇︎


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