歴史マンガセット 主要四社の比較+α
はじめに
*この記事の2021年版を作成しました。この記事はもう古いので、残してはおきますが読まないことをオススメします。改訂版はこちらです。
新型コロナウイルスのため、学校が休みになって3日目。この空いた時間は、学びに役立つ本を読んでおきたいですよね。特に歴史マンガは、受験にも直接役立ちます。
また、歴史マンガを買うべきと思っていても、どの会社のものがよいか、決めかねている方もいるでしょう。
そこで、各社から出ている歴史マンガのよい点と問題点を挙げていきたいと思います。また最後に、主要四社以外の歴史マンガセットについても述べていきます。()内の年数は初版が出版された年です。
集英社版 学習まんが 日本の歴史(2016年)
学研、角川の新版発行を受けて全面改定。最新の内容に対応し、全20巻と分量も多く、取り上げる内容も詳細です。中学受験だけでなく大学受験にもある程度対応できます。重要な利点は、表紙絵を描いているのは岸本斉史、荒木飛呂彦などの著名なマンガ家ということです!
もう一つの利点は、全20巻のうち、明治以降の近現代が8巻を占めることです。最近の受験は、中受も大学受験も、近現代の割合が大幅に増えています。学校や塾の授業ではフォローしきれないことが多いのですが、集英社版では対応できます。
問題点はなんといっても、「表紙と中身の絵が全然違う」ことです。荒木飛呂彦の絵を期待していたら、中身は普通のマンガなんですよ! また巻ごとの絵のばらつきも大きいです。ギャップが大きいので、それを前提にして判断すべきでしょう。(画像は18巻)
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角川まんが学習シリーズ 日本の歴史(2015年)
量的には本編15巻と、集英社、小学館には及びませんが、すらすら読めるように工夫されているので、歴史の入門に適しています。また表紙は集英社版と同様、吉崎観音や小畑健といった、著名な作家が描いています。
利点は、集英社版と違い表紙と中身のギャップ、巻ごとのギャップが少ないことです。表紙とマンガの作者は違いますが、表紙絵に近い絵柄で描いているのです。また巻ごとのばらつきも少ないです。(画像は1巻。吉崎観音の絵によく似ていますが、描いているのは岩本佳浩です)
もう一つの利点は、別巻3巻の「よくわかる近現代史」が非常によくできていることです。戦争に至る流れが十分に説明されていますし、戦後とのつながりもわかりやすいです。ここだけ買ってもいいですね。
別巻3巻のスタッフを見てみると…シナリオを書いているのは戦前・戦中史の専門家ですし、マンガのコンテを作っているのは、知る人ぞ知るといったマンガの名手です。なるほどわかりやすいのも当然です。
目立った問題点はありませんが、強いて挙げるなら分量が少なめ、ハードカバーではないので本が傷みやすい、他社より本が小さい、といったところでしょうか。
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学研まんが 日本の歴史(2012年)
歴史マンガを現代風の絵柄に変える動きに先鞭をつけたシリーズです。全14巻。内容は、人物に焦点を当てているため四社の中で一番簡潔で読みやすく、入門に向いています。また全編カラーなのもポイントです。
マンガの作者はそれほど名前が知られていない人が多いですが、同人誌や商業誌で実力が知られていた人たちです。その力は1巻冒頭を読むだけでもうかがえます。試し読みを読んでみるとよいでしょう。(今どきFlashなので要注意)
問題点は、まず良くも悪くも分量が少ないことです。全14巻なので経済的負担も小さめですが、その分、量も少なめです。また絵柄の巻ごとのばらつきが大きく、巻によって好き嫌いが出る可能性があります。10巻の伊藤博文が判断基準になるかもしれません。
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学習まんが 少年少女日本の歴史(1988年、小学館)
このシリーズの最大の特徴は、全24巻と分量が多く、内容も最も詳しいことです。コマ内の情報量が多いこと!注釈も多いこと!「ビリギャル」で話題になりましたが、大学受験にも対応できます。
1988年当時の歴史学の叡智を結集した、文句なしの大名作です。現代風の絵柄に変える動きがないのもわかります。歴史に本格的にはまった子には、より深い楽しみを教えてくれる、いわば「歴史沼」の入口ともいえます。
ただこのシリーズは、明確な問題点もあります。とにかく絵もマンガ的技法も古いのです。2018年に出た平成編も、88年の本と統一感を出すためでしょうか、2000年代後半とは思えないほど古いのですね。今のお子さんに合うかどうか…。(上の画像は88年の16巻、下は2018年の「平成の30年」)
もう一つの問題は、詳しい分内容が煩雑で、内容をつかむのが簡単ではないことです。合わない子は徹底的に合わないかもしれないのですね。歴史に苦手意識を持っている子に最初に提案するのには向いていません。
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まとめと歴史マンガの買い方
以上四社の歴史マンガの特徴をまとめると、次のようになります。
集英社…◎分量も新しさも十分。×表紙と中身の絵が大きく違う
角川書店…◎新しさは十分。入門に向いている。近現代史の別巻がよい。×あまりないが強いて言えば本が小さく読みづらいかも
学研…◎フルカラー。入門に向いている。×内容少なめ。巻ごとのばらつきが大きい。
小学館…◎内容は最高に濃厚。×表現が古い。内容が濃すぎて入門には向かない。
…といったところでしょうか。お子さんの状況に合わせて、考えてみるとよいでしょう。
買うなら全巻まとめてが基本です。セットだと割引もありますし、おまけがついてくることも多いです。結構いい値段になるので、図書館や試し読みを利用し、お子さんが気に入ったものを選ぶようにしましょう。
次に、あまりおすすめできないシリーズを挙げてみます。
日本史探偵コナンシリーズ(小学館、2017年)
歴史物に限りませんが、コナンやドラえもん、クレヨンしんちゃんなどのキャラクターを使った参考書は、全体的に推奨できません。それぞれのキャラクターや設定に引っ張られてしまうからです。コナンが超好きという子なら、入口にはよいと思います。
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集英社 まんが版 日本の歴史(2007年)
集英社の歴史マンガの旧版を文庫化したものです。それなりに定評がありましたが、絵も内容も古いので、今選ぶ理由はありません。文庫で10巻と持ち運びしやすい、というメリットは一応あります。
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石ノ森章太郎 マンガ日本の歴史(文庫版1997年)
中公文庫版55冊セットが出ていますが、これは明確にオススメしません。そもそも後半は本人が描いていない(この時期石ノ森は体調を崩しており、後半はシュガー佐藤が代筆しています)、キャラクターの見分けがつかない、歴史観的にも疑問が多いと、悪い点ばかりです。家にあったとしても、新しいものを買ったほうが無難です。
以上、歴史マンガの特徴とおすすめを挙げてみました。皆さんの選択の助けになれば幸いです。
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