染まるよ チャットモンチー [歌詞]

概論

登場人物は「わたし」と「あなた」のふたり。主人公である「わたし」が一人称視点であなたのことを考えながら、独り歩いている。

1番


歩き慣れてない夜道をふらりと歩きたくなって
蛍光灯に照らされたらここだけ無理してるみたいだ

夜ふと散歩したくなることは経験ある人も多いだろうが、この歌の主人公はあえて歩き慣れてない道を歩きたいらしい。何か変化を求めているのか、それとも新鮮さを味わってみたいのか。「ふらり」という言葉が入ることで、一人ぼっちで歩いている状況を想定させる。街の蛍光灯に照らされた時は自分にスポットライトが当たったようになる。ただふらりと散歩しているだけの、しがない自分という存在を主役に引き立てても、無理矢理感が否めない。

大人だから一度くらい煙草を吸ってみたくなって
月明かりに照らされたら悪い事してるみたいだ

今まで、無垢に育ってきて煙草を吸ったことはない。でも自分がちょっぴり悪い事をしてると感じたくて、「大人だから一度くらいは」と理由をつけて煙草に興味を示してみる。でも本当は煙草を吸いたいわけじゃなくて。月明かりが照らすのは、盗人か指名手配犯だと相場は決まっている。主役みたいに蛍光灯に照らされるのも、悪役みたく月明かりに照らされるのも、どっちもなんだか似合わない。


あなたの好きな煙草
わたしより好きな煙草

あなたの好きな煙草を自分も試したくて、似合ってなくても煙草が気になってしまう。自分がどれだけ好かれていたのか、煙草ってもんを確かめてやろうと。冷静に考えて、煙草の方が彼女よりも好きだなんてことがないのはわかっている。でも自分を煙草に負けた惨めな存在だと考えてしまう。

いつだってそばにいたかった
分かりたかった 満たしたかった

あなた=元彼に見放された今ではもう遅いが、後悔が募る。でも自分はあなたの中で大事にされなかったという事実だけが、わたしに残っている。

プカ プカ プカ プカ 煙が目に染みるよ
苦くて黒く 染まるよ

煙は普通モクモクと上がるもの。でもそれをプカプカと表現しているあたり、やっぱり煙が似合っていないし、煙草に慣れていない。目も染みてしまうし。それでも煙草に勝ってやるんだと頑張ることしか、わたしが今できることはない。そのくせ煙草の味は苦くて、煙は目の前を黒くして、自分の気持ちを表してるみたいだ。

2番

火が消えたからもうだめだ
魔法は解けてしまう
あなたは煙に巻かれて 後味サイテイ

慣れない煙草を吸って気分を紛らわせていたけれど、それも終わってしまう。煙草があなたとわたしを繋いでくれていたけれど、煙草と共に消えてしまった。慣れない事をしてみても、たいした変化もなく、ただ消えてしまった。残ったのは煙草の苦さだけ。

真っ白な息が止まる
真っ黒な夜とわたし

まだ煙草に火がついていた時、私にはまだあなたが残っていた。煙草があなた色で染めてくれていた。でもあなたの白さはもうなくなってしまって、代わりに残ったのは月明かりしかない真っ黒な夜の空とそれに染まった自分。

いつだってそばにいれたら
変われたかな ましだったかな

1番のサビでは「そばにいたかった」だったが、この2番のサビでは「そばにいれたら」になっている。もう煙の火は消えていて、あなたとのつながりが無くなってしまった今、あの頃に戻れたらという願いが強まる。でも戻れたとしても、あなたを分かって、満たすことができたかどうかは自信を持てない。

プカ プカ プカ プカ 煙が目に染みても
暗くても夜は明ける

こうやって落ち込んでいる間にも夜は勝手に明けていくけれど、黒く染まった自分は明るくなれるのだろうか。

あなたのくれた言葉 正しくて色褪せない
でも もういらない

わたしはあなたを満たすことはできなかった。あなたがわたしから離れて行ったのも、おそらく正しいことだったのだろう。その理由も真っ当なもので。だからそれを今更思い出して、こうしていればよかったのではと考えるだけ無駄なのだ。だからこれ以上あなたに、正しい言葉を言ってもらう必要はない。

いつだって あなただけだった
嫌わないでよ 忘れないでよ

あなたはわたしだけじゃなかったのかもしれない。でもわたしはあなただけだった。だからあなたのことは忘れられないし、でももう戻れないのも理解してる。あの頃に戻りたいとは言わないけど、せめてあなたの中にわたしを残しておきたい。

プカ プカ プカ プカ 煙が雲になって
朝焼け色に染まるよ

消えてしまった煙草から微かに上る煙は雲の一部になる。わたしは煙を通して、真っ白なあなたのような雲の一部になる。そしてわたしは黒から朝焼け色に染まり変わって、新しく生きていける。

振り返り

1人の女の子が別れた彼との日々からなんとか解放されようとする「染まるよ」。この歌で最後に「わたし」は朝焼け色になる。朝焼けはその日の始まりの色。彼女は自分の中に彼を残しながらも、再び前に進み始められる事を表現しているのだろう。


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