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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第15話 友情 後編

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


34.愛美 2023年6月25日

港で春香さんと周りの風景を撮影していた。

「でも、疲れたね。あそこで休憩しない?」
撮影の後、春香さんの提案で花が咲いている木陰で休憩することにした。
木陰に着くと、春香さんは花を摘んで花冠を作って、わたしに乗せた。
「うふふ、とても似合ってる。」
春香さんはカメラで私を撮って、にっこり笑っていた。

「愛美ちゃんって、身長が小さくてかわいいね。」
春香さんはわたしを見て、こうつぶやいた。

「愛美って、チビだねぇ。」
「まるで、身体も趣味も小学生みたい!」
赤井詩音とその仲間がわたしをバカにしている。
その後ろで前田美雪はこっそり笑っている。

中学生の頃、周りからバカにされて発育が遅れた身体に劣等感を抱いていた。
嫌な思い出が浮かんできた。

「春香さん、やめてくれる?」
「わたし、自分の小さい身体が嫌いなの。」
わたしは春香さんにこう伝えた。
今でも、街を歩くと自分が小学生か中学生と思われることもある。
周りから子供としか見られない身体が嫌だった。

「ごめんね、愛美ちゃん。」
春香さんはすぐに謝った。
「いいのよ、春香さんに悪気なんてないと信じてるから。」
いつ、春香さんがまた傷つけるかわからないけど、春香さんは悪い子じゃないと信じたいから許した。
その後、春香さんが作ってくれたお弁当を食べた後、写真撮影を続けた。
お互い、いっぱい写真を撮った一日だった。

でも、人間って怖いな。

35.春香

今日は楽しみにしていた、愛美ちゃんと写真デート。
一緒に写真を撮っていた。

しかし、ちょっと愛美ちゃんに悪い事をしてしまった。
私は愛美ちゃんのことを身長が小さくて、可愛いと思っていた。
でも、愛美ちゃんはそのことにコンプレックスを抱いていたみたい。
愛美ちゃんは表情が固くて、笑っているか怒っているかわかりにくい。
「春香さん、やめてくれる?」
しかし、私は愛美ちゃんの声のトーンから怒っていると感じた。
謝ると、愛美ちゃんは優しいから許してくれた。

でも、愛美ちゃんと写真を撮っていると楽しかった。
今日はいい写真がいっぱい撮れた。
ずっと、愛美ちゃんと友達で居たい。

帰路の途中で、ビラを配ってる人を見かけた。
配られてるビラは最近行方不明になった小柳百合という人の情報提供を呼び掛けるものだった。
私はもらうのは断った。
でも、この人が早く無事で見つかるといいけど。

36.愛美 2023年 6月25日

春香さんとの用事が終わって、帰るところだった。
もう、午後4時。
本当は早く終わらせて、マリーちゃんに会いに行く時間を作りたかったが、できなかった。

目的のバス停の近くまで歩いていると、広場に人が集まっていた。
「小柳百合さんの情報提供お願いします。」
ビラを配っていたみたいだ。
わたしも声を掛けられて、ビラを受け取った。
そのビラにはマリーちゃんに似た人の写真が乗っていた。
「小柳百合 18歳 身長170センチメートル」という情報がビラに書かれていた。
わたしが捕まえた日の服装を着ている監視カメラの画像まで載っていた。

わたしは悪い事なんてしてないはず。
小柳百合という人なんて、消えたの。
この人、本当はわたしのお人形さんのマリーちゃんなの。

殺人で逮捕されないかという事が思い浮かびそうになったが、わたし人殺しなんてしてない。
わたしはそのビラをカバンに入れて、バスを待った。

バスに乗って、家まで帰った。

帰宅すると、自分の部屋に戻ってもらったビラを眺めた。
小柳百合、素敵な名前だね。
でも、あなたは「マリー」という名前が一番似合っているよ。
そして、ビラに大きく載っている写真ではスーツを着ていた。
似合っていて、大人っぽくて素敵。
あぁ、スーツ姿も新鮮だね。

わたしはスケッチブックを取り出して、絵を描いた。
スーツ姿のマリーちゃんを想像して描いていた。

カッコよさとマリーちゃんの元々の可愛さが両立していて、良かった。

シェリルちゃんの新しいお洋服も考えてみた。
お花が好きなシェリルちゃんは花柄のワンピースも似合いそう。
ぜひ、着せてあげたい。

暗い自分の部屋で二人のことを考えていると、楽しい気分になれた。

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