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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第8話 裏切らない友達

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


18.愛美 2023年5月17日

今日は部活の日でカメラを教える約束をしていたみつきさんには申し訳ないけど、今日は部活を休むことにした。
人形のマリーに似た彼女を追うのをしばらくやめていたが、やっぱり会いたくなってきた。
マリーは孤独だった中学時代の唯一の友達だった。
わたしはマリーのことが大好き。

わたしは学校が終わったら、すぐに彼女に会いに行った。
今日も美しくて、優しい表情をしていた。
彼女は可愛いわたしのお人形さんだった。

家に帰って、彼女の写真を見て考えていた。
彼女を自分の物にしたかった。
先週くらいから、頭の中にある考えが浮かんでいる。
しかし、実行することを考えると怖かった。

部屋で考えながら、ゆっくりしているとお母さんに呼ばれて食卓に向かった。
「愛美さんはどこの大学に行くのかしら。英語もできて成績も良いから海外の大学もいいんじゃないかな。」とお母さんは食事をとりながら笑顔でこんな話をしていた。
お母さんの期待は重かった。
期待に応えられないと、わたしはお母さんに怒られる。
中学生の頃、数学のテストの点数が79点だった。
それは中途半端な結果だった。
その点数を見たお母さんはわたしをリビングに呼び出して、わたしを痛めつけた。
「恥をかかせないで!」
お母さんは靴ベラでわたしの尻を30分くらい叩き続けた。
わたしは痛くて、泣いてしまいそうだった。
でも、お母さんの前では涙は我慢した。
小学生の頃から叩かれたことは何度もあった。
わたしはお母さんの期待に応えるため、叩かれなくないため勉強を頑張った。
その結果、わたしの成績は学年でトップになれた。
お母さんの笑顔を見て、叩かれたことを思い出してしまった。
最近は成績が常に上位なので、お母さんが機嫌を悪くすることも無くなってきた。
叩かれることも無い。
「愛美の将来が楽しみだ。佐々木家と会社を自信もって引き継げられるよう頑張ってほしい。」
父さんもわたしのことを期待している。
「わたし、頑張るよ。」
お父さんもお母さんも、わたしのことを大事にしてくれている。
わたしは特別で期待されていると改めて実感した。

食事を済ませて自分の部屋に戻ると、昔の写真を見た。
小学5年生の頃に撮ったピアノを弾いているわたしの写真を見た。
ピアノを弾いているわたしの後ろの窓にマリーちゃんがちょこんと座っている。
確か、その頃からお母さんに叩かれていた。
だけど、わたしの顔にはまだ笑顔がある。
次の写真は庭の花畑で小学2年生の頃のわたしとマリーちゃんがお揃いの花冠を付けている写真だった。
さっきの写真よりも笑顔だった。

写真を見ていると、小さい頃のわたしはマリーちゃんをとても大事にしていた。
中学生の時いじめられても、お母さんに怒られて叩かれた時もマリーちゃんはわたしにいつも笑顔で寄り添ってくれた。
マリーちゃんは絶対に裏切らなかった。
わたしにとって、マリーちゃんはただのお人形ではなく、大事なお友達だった。
あぁ、マリーちゃんに会いたいよ。

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