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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第6話 ずっとそばに居たい

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


14.愛美 2023年5月13日

いつものように時計のアラームの音で目が覚めた。
今日は休日だった。

昨日の夜はマリーに似た人の写真を見ながら眠った。
子供の頃に戻ったような気分だった。
自分の部屋がある二階から一階に下りて、リビングのソファに座る。
朝になると、いつもお手伝いさんがホットミルクを用意してくれる。
わたしはホットミルクを飲みながら、朝食を待つ。
朝食ができると、わたしは食卓に向かう。
「愛美さん、今日の予定はありますか?」
わたしが朝食を食べ終わった後、いつものようにお母さんが休日の予定を聞いてきた。
「後で、プリンターのインクを買いに行くわ。」
今日はプリンターのインクを買いに行くつもりだ。
わたしは自分の部屋に戻って、支度することにした。
階段を上がっているときに、あることが思い浮かんだ。
マリーに似た人をついでに拝んでみたかった。

電気屋さんの近くをマリーに似た彼女が歩いている時間帯がある。
その時間帯くらいに行けば、彼女に会えると思う。
わたしは着替えてから、スマホの地図を見てここら辺というのを確認する。
先に行って、彼女が通るのを待とう。

家を出て、彼女が通る可能性がある場所に向かった。
電柱の横で待ち伏せして、来るのを待っている。

粘り強く待っていると、彼女が現れた。
きれいに輝く瞳、可憐な表情、人形みたいな顔立ち。
今日も美しかった。

彼女にもっと近寄って見てみたい。

わたしは美しい彼女のことがさらに気になってきた。
彼女に話しかけてみたい。
わたしは勇気を出して、声を掛けることにしてみた。
「あの~すみません。」
緊張して声が出なかった。
「ん?どうしたの?」
身長が高い彼女はわたしに気づいて、腰を低くして身長が低いわたしの目線に合わせてきた。
「ヨシダ電気ってどこですか?」
わたしは彼女が昨日、イヤホンを買った店の場所を聞いた。
本当は場所を知っているが、声が聞きたくて彼女に尋ねた。
「ちょうど、行先の途中に通るので案内しますよ。」
彼女はわたしを親切に案内してくれるようだ。
わたしは嬉しかった。
彼女に付いて目的地まで歩いていく。
近くで見ると、より可愛さが際立っている。
しかも、高身長でスタイルが良い。
まるで、小さかった人形のマリーが人間と同じサイズになって一緒に歩いているみたいだ。
「そこの角を曲がって、まっすぐ行って。」
彼女の声は優しくて透き通ったきれいな声だった。
もしマリーが人間だったら、こんな美しい声をしているのかな。
その声はマリーのイメージにぴったり合っていた。
姿も声もわたしの描いた友達だったマリーそのものだった。
ずっと会いたかった。

「ねぇ、この街って初めて?」
彼女はわたしに質問してきた。
「わたし、両親の仕事の都合でこの春からこの街に来たの。」
本当はこの街に土地勘があるが、道が分からないふりをして話しかけたので、ウソをつた。
でも、わたしは彼女と話せることにドキドキしてしまった。
「実は私もこの街に引っ越したばかりなの。」
彼女は笑顔でわたしの話を聞いていた。
まるで、マリーちゃんがわたしの話に自分から返事しているみたいだった。
子供の頃、マリーちゃんが動いて話してくれないかなとか想像していた。
実現していて、まるで夢のようだった。
「ヨシダ電気は昨日行ったの」
彼女は昨日、行ったことを言っていた。
わたしも確かに見ていた。
どうやら今まで気づかれてないみたいで、安心した。

彼女に案内されながら、目的地まで着いた。
「お姉さん、ありがとうございました。」
着いたら、彼女と別れた。
正直、寂しかった。
美しい彼女と歩く楽しい時間が終わらないで欲しかった。
「どういたしまして。」
彼女は笑顔でこう言って去っていった。

店に入って、プリンターのインクを手に取った。
そのまま、会計を済ませて帰ろうかなと思った。
しかし、あることが頭をよぎって考えてしまう。
彼女はマリーなのか、マリーではないのか。
わたしはマリーに似た彼女が本当にマリーだと思い込んでしまっている。
しばらく考えたが、不思議な感覚だった。

わたしはプリンターのインクと買う予定には無かった延長コードを買って、家に帰った。
自分の部屋に戻ると、プリンターにインクをセットしてマリーに似た彼女の写真を印刷した。
印刷した彼女の写真をアルバムに入れて、眺めていた。
やっぱりかわいい。

彼女に近づけたし、声も聞けた。
そのことが嬉しかった。
顔も見られたし、彼女を追いかけるのはもうやめておこう。

15.百合

道を聞いてきた女の子、可愛かったなぁ。
身長が小さくて、小学校高学年か中学生くらいに見えた。
案内した後、笑顔で「お姉さん、ありがとうございました。」と言われて、すごく嬉しかった。
なんか、良い事をした気分だった。

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