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現在の表現規制の原点・大本であるゼロ年代表現規制問題について


はじめに

昨今、生成AIについて推進派と反対派に分かれて論争が繰り広げられている。賛成派は「アニメマンガなどの表現の幅を広げる良いツールになりうるから積極的に扱うべき」、反対派側は「データ元の著作物からの無断盗用の問題=著作権違反になる」「データセット(データ元の画像)の中に児童ポルノがあるケースがあり、そこからディープフェイクポルノができるケース=人権侵害になる」ケースがあるとして反対論がある。現時点では私自身はどちらを取るべきかは決まっておらず、最適解を目指す為に両論を議論させて、問題解決に向かうべきではあると思う。が、今回、ある事が問題になっている。生成AIに反対する論者の中に、あるAI規制推進団体(IWF財団)と組むケースがあり、それが問題になったのである。

本題1・2000年代表現規制推進派が復活、漫画表現規制全体の危機再び

その団体(IWF財団)の関係者には、野田聖子自民党議員の名前があった。これは問題である。彼女は2000年代、児童ポルノ法による児童保護の名目で、漫画表現を規制しようとした自民党規制派の一人当時は自民党が表現規制推進のメイン。自民党が表現規制に関与しなくなったのは、山田太郎氏の入党後。)、彼女がそのIWFとつながりがあるのである。生成AIを否定する意見自体には口出しはしないが、彼女と組んでの生成AI反対運動をする事には反対である。何故か?理由の説明としてまずは、当時の彼女や彼女と一緒に表現規制を推進しようとした過去(2000年代)の自民党規制派の主張や動きを見て頂きたい

本題2・ゼロ年代自民党規制派の表現規制の一部始終

「表現の自由を制限し、青少年の健全育成に悪影響を与える有害図書を出版禁止に」(自民憲法小委) 「公の秩序を害する表現の自由は認めない」(自民改憲草案) 「表現の自由は漫画家の為にあるのではない」(平沢勝栄議員) 「表現の自由を盾にして害悪を世にばらまいている」(野田聖子議員)
これらは、当時の自民党規制派の主要発言である。
そして、彼女とは、他の自民党規制派と一緒に、アニメ・漫画・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化訴えるキャンペーンを展開したのである。(下記サイト参照)

その他の表現規制の動きは末尾に後述。参照されたい。

言うまでもなく、児童ポルノ法は「『実在児童』の性的虐待防止」の為の法律である。目的自体は正当である。しかし、問題なのは「被害者は存在しない」漫画表現などまで規制しようとした事である。言うまでもなくフィクションは現実の出来事ではない。そして、フィクションと現実の犯罪の因果関係は証明されていない。なのに、フィクション表現規制をしようとした訳である。つまり、漫画表現規制の強硬な推進である。

それに対して、当然、漫画家や当時は規制反対派だった野党は反対表明し、動いたのである。

本題3・当時の主要表現団体並びに、野党系表現規制反対派の反対活動

〇日本ペンクラブの表現規制反対意見表明

(上記の日本ペンクラブの声明から引用)日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は3月17日、児童ポルノ禁止法改定案に反対する声明を発表した。「漫画やアニメを取り締まりの対象とすることは、本来守られるべき表現の自由を著しく侵害し、ひいては表現行為やその内容の多様性を失わせる」と指摘。「児童ポルノ禁止法改正を名目とした言論表現規制に反対する」としている。

そして、当時の自民党政権の表現規制に反発して、当時の民主党を中心とした野党も児童ポルノ法による表現規制反対を表明し動いたのである。(下記の資料参照)

〇当時の表現規制反対の請願情報(紹介人は当時の野党議員)

上記の枝野幸男氏、吉田泉氏、辻元清美氏は民主党(立憲民主党の前身政党)、保坂展人氏(当時、社民党議員、現世田谷区長)
尚、当時の野党表現規制反対派の活躍事例を代表して、保坂展人(現世田谷区長)氏の活躍の記録の下記記事参照

その他の漫画関係者や主要表現規制反対派の主張については後述するが、このように当時の野党系表現規制反対政治家は当時の自民党表現規制推進派による表現規制に反発、反対活動をしたのである。

本題4・今後の生成AIの論争の進め方について

お判りいただけたであろうか?彼女を引き入れるという事は生成AIの規制に留まらず、非生成AIである漫画などの表現自体、表現全般が脅かされることを意味するのである。当時の時点ですらも「実在児童の性虐待保護を目的とした」児童ポルノ法で「被害者のいない」漫画などのフィクション規制をしようとした事でも分かるだろう。今の時代に彼女らを生成AI規制運動に引き入れれば言うまでもない。
そもそもは、クリエーター、漫画文化を守るために、生成AIに反対したはずである。なのに、生成AIを排除するために彼女と組んで肝心の漫画文化(クリエーター自身が作成した漫画、イラスト)を滅ぼしては本末転倒であろう。生成AIに留まらず、漫画文化自体の危機的状況に追い込むことになる。生成AI反対自体には口出しはしないが彼女と組むことだけは思いとどまっていただきたい。生成AI 規制運動は、彼女や自民党規制派とは組まないで展開を望む次第である。


資料1・表現規制推進派としての野田聖子議員(自民党)に関するデータ

〇"アニメ・ゲーム規制派"として有名な野田聖子議員の言動を振り返るhttps://togetter.com/li/1233280

読んで字のごとく、規制派としての野田聖子議員(自民党)の言動記録

〇ママパパ議連で漫画やアニメを自ポ法で規制する動きか?https://togetter.com/li/1954332?page=2

(一部引用)来賓挨拶では、野田聖子衆議院議員が法改正について言及した。野田議員は、児童買春・児童ポルノ禁止法の改正を推進している。
「1つ目は、単純所持の禁止を盛り込みたい。
2つ目は、子供ポルノアニメ・漫画の取り扱いに関する法律。これは、数年前にチャレンジしたが、インターネットで散々叩かれた。いずれにしても、児童ポルノ法や児童虐待防止法などを改正して対応したい」と述べた。

〇当時の彼女のメールマガジン
https://web.archive.org/web/20050424112430/http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501160040000000127727000  
(メールマガジン・キャサリン通信)
2004年に発生した奈良小1女児殺害事件を受けて、「容疑者の性的病癖を悪化させたものとして、ちまたにおびただしく存在する劣悪な性関連商品が指摘されています。表現の自由を盾にして、表現することの責任を全く考えない人々が世にばらまいてきた害悪について、今こそ猛省する時期ではないでしょうか」

〇野田聖子議員(自民党)のウィキペディアデータ

基本情報を把握したい方向け

資料2・表現団体による「児童ポルノ法による表現規制反対表明」の記録集

〇日本マンガ学会による反対表明

(上記日本マンガ学会より)1.本来、「実在の児童を保護する」ことを目的に作られた法律の中に、「漫画・アニメ等の創作物規制」を盛り込もうとしていること。

(中略)第一に、「児童ポルノ禁止法」は「実在の児童を性的虐待や性的搾取から保護する」ことを目的に作られた法律であり、その中に、実在の被害者のいない「創作物」規制を盛り込もうとするのは、そもそも立法目的にそぐわない。(引用終わり)

〇「児童ポルノ禁止法」改正法案への反対声明 2013年5月29日 一般社団法人 日本雑誌協会 人権・言論特別委員会 一般社団法人 日本書籍出版協会 出版の自由と責任に関する委員会
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/seimei130529.pdf

〇日本弁護士連合会

(引用はじめ)当連合会は、2010年3月18日、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の見直し(児童ポルノの単純所持の犯罪化)に関する意見書(以下「2010年3月意見書」という。)を発表し、現行法の児童ポルノの定義が曖昧かつ広範であるため、定義を限定かつ明確化することを求めるとともに、子どもの人権保障の観点から、児童ポルノの単純所持を、法律上明確に禁止することを提言した。他方で、比較的違法性が低い単純所持を犯罪として処罰することは、捜査権の濫用が危惧され、刑罰の謙抑性の観点からしても行き過ぎであるので反対すると主張した。
将来的には漫画・アニメーション等の規制を視野に入れていると思われる「児童ポルノに類する漫画等と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究」の推進を規定しているが、近い将来に、表現の自由に対する過度な制限規定が追加されることが危惧される。

雑誌協会・出版協会も児童ポルノ禁止法改定案に反対声明

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1305/29/news120.html

日本雑誌協会と日本書籍出版協会は5月29日、自民、公明、日本維新の会の3党が5月29日に衆院に提出した児童ポルノ禁止法改定案について反対する共同声明を発表した。

 同案について「性的被害にあっている児童の保護をうたいながら、その実態は表現の自由を規制する方向に進んでいると考えられる」と指摘。(1)「児童ポルノ」の厳密な定義なしに単純所持を禁止・処罰すること、(2)漫画・アニメの規制を検討すること――に反対している。

資料3・当時の野党による表現規制反対表明並びに動きの記録集

〇当時の与野党代表による児童ポルノ法による表現規制討論会記事
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1306/28/news149.html

(上記記事の解説)2013年当時の児童ポルノ法による表現規制関連の討論会。この時は自民党などの与党側が規制派、当時の民主党などの野党側が反対派と言う図式の時代。この時はまだ、山田太郎氏は世に出ていない(名前が少し出ていた可能性はある)。

〇当時、民主党衆議院議員の宮崎岳志氏(現在は日本維新の会所属)による児童ポルノ法による表現規制反対の質問主意書

〇児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)については、前回改正(平成二十六年六月二十五日法律第七十九号)の審議において、創作上の架空の人物(以下「非実在青少年」という。)を題材としたアニメ・ゲーム等を規制の対象にすべきかどうかについて議論された経緯がある。しかし、実在の未成年者を題材とした画像等と同様の趣旨・基準によってアニメ・ゲーム等における表現を規制することは、日本国憲法第二十一条に規定されている表現の自由を侵害するため違憲であると考える。
 したがって、次の事項について質問する。(後略)

〇当時の主要野党反対派の表現規制反対の請願並びに、都条例について紹介したポスト。

尚、野党が表現規制反対と聞くと、現在の野党側は表現規制主張が目立っている為、違和感を持つ人は多いだろう。が、それはつい最近の事で、ゼロ年代から少なくとも、日本共産党が事実上、山田太郎氏と表現規制反対で共闘していた10年代半ばまでは「表現規制反対の為に活躍していた」のである。これについては後日、改めて論じたい。

資料4・児童ポルノ問題についての解説サイト

〇表現規制反対の概略1(麻生政権時の表現規制の攻防戦の記録)
 https://note.com/phenixsaber/n/nad37b511b7dc?sub_rt=share_h


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