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「山田太郎氏のコスプレの著作権ルール」に対する私の方針について

(注・1月24日時点)

上記ツィートを山田太郎氏が発信したことにより「山田は、コスプレ規制をするつもりか?」「コンテンツ産業のJASRAC化を目論んでいるのか?」などの憶測交じりの非難が出てきて、Twitterの表現規制反対クラスタ内で疑念が渦巻いているのが現状である。

上記に対しての私の主要意見は現時点では「山田太郎氏や政権が、どのような内容のルールや運用方法を想定しているかが判明するまで」静観である。何故なら、これが分からなければ、対応のしようがないからである。

そもそもの前提

現在、注意してほしいのは山田太郎氏や政府はまだ、コスプレの著作権法について、大まかなアウトラインをまだ、発表していない。単なる啓発か、著作権者を明示、データベース化して、権利関係を明確化するだけか、著作権違反と判断したら一定の罰則をつけるレベルか、これらが分からない事には判断のしようが無い。例えば、著作権者が誰かや著作権の権利関係の明確化をするだけで、運用自体は従来通りの親告罪(権利者が訴えなければ、罪にはならない)なら、単に交通整理をするだけとなり、運用の大まかなやり方は従来通りという事になる。

非親告罪(権利者が訴えなくても、政府やJASRACなどの著作権機関が独自に被害判断する)で政府や、著作権団体が介入できる余地を拡大すると言う話なら警戒の必要がある。

例えば、銀河英雄伝説の田中芳樹氏は著作物を使う際「特定の政治宣伝や、性的描写はダメ」等の指針を示しているがコスプレ規制が上記でいう交通整理だけで、親告罪なら従来通り、上記の指針継続となる。それらを明確化に近い運用になる。

非親告罪(権利者ではなく、政府や権利者団体が判断する)だと、同作品の主人公であるラインハルトのコスプレを権利者である作者自身は問題視していなくても、政府などの判断で著作権侵害の判断が可能になり、事実上の表現規制法となる

つまり、上記のように親告罪かそうでないかという一点だけでも、運用方法が違ってくるので大まかな運用の概要を示さない限り、判断ができないのである。(他の論点も当然、考えないといけない。)

著作権法の目的

仮に著作権法自体は変えず、啓蒙活動などの強制力のない穏当手段だとしても、下記のような批判もある。

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確かに、表現の自由という観点から考えれば、正当な批判である。しかし、著作権法や知財関連の法律の立法趣旨を思い返していただきたい。表現の自由以外にも「権利者保護」の目的も忘れてはならない。

読者諸氏は、漫画村問題を覚えているだろうか?漫画などをネットで無料公開する事で、クリエーター達にお金が支払われない事で彼らの権利侵害になっている問題が、数年前に起こった。当時、漫画が無料公開されると、著書の購入が途絶え、執筆者、出版社などの権利者に正当な収入が入らなくなる=権利侵害問題が発生する。当時、人気アニメの主人公役の声優・緒方恵美氏も、この状態に苦言を呈していた。コミケの自由な表現も重要だが、同時に彼らの権利尊重もセットになる性質の問題でもある。事は、表現の自由だけではなく、クリエーターの権利の問題も重要な論点になっている。この点を忘れるべきではない。

クリエーターの権利を守られない究極形は、今のアニメーターの劣悪労働条件で表れている。これで、中国企業に人材が引き抜かれまでに発展している。勿論、これは労働問題としての性格が強いが、クリエーターとしての彼らが尊重されていない面も原因になっている。
つまり、著作権法は「表現の自由とクリエーターなどの権利者の権利の衝突の調整法」として必要性があるから存在しており、基本的なこれを踏まえる必要があるのである。この観点から「コスプレ著作権が、キチンと上記のバランスをとっているか?」をキチンと監視する。そして、この調整のための制限が「必要最低限度にとどまっているか?」をチェックし、不必要な制限は批判して撤回させる。これが、この問題のやるべき事である。

つまり、論点は「表現の自由だけではなく、クリエーターなどの権利との調整」と「この目的を達成させるための適切な運用がなされるか?」である。

最後に

コスプレ関連の著作権政策は具体的中身が判明し、その上で山口貴士弁護士や小倉秀夫弁護士などの表現規制反対派弁護士アカウントや、野党系の知財に強い政治家垢などの論評を待つしかない。中身を公開した上で、専門家の検証がなければ、上記の問題がクリアされているかを、素人である私は判断できないからである。これらをご理解いただければ、幸いである。

参考資料

コスプレと著作権(小倉秀夫弁護士の記事)

小倉秀夫弁護士は、知的財産分野を得意分野とする表現規制反対派弁護士なので是非、彼の記事もご覧いただきたい。

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