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大建中湯は腹部手術後の腸管機能障害を改善しますか

〇はじめに

腹部手術後の腸管機能障害は、入院期間の延長や医療費の増加につながる主な要因となっています。過去には改善方法が限られていましたが、最近では伝統的な生薬である大建中湯が注目されています。大建中湯はアジア太平洋地域で広く使用され、腸の機能障害の改善に効果があるとされています。さらに、副作用の報告もほとんどなく、腸の虚血関連疾患でも効果があることが示されています。しかし、大建中湯の腹部手術後の腸管機能障害への効果についてはまだ明確な結論が得られていません。そこで、関連するランダム化比較試験のメタアナリシスが行われました。

ゆき:術後の大建中湯、RCTを何件か見かけたことがあるのですが結果はまちまちでした。

さくら:被験者が少ないとそうなりがちだね。今回紹介するのはプール解析によるメタ分析だ。コクラン共同研究のロゴが、7つのRCTをもとに行われた系統的レビューを図式化したのは有名な話だね。人的/経済的損失を回避する福音になるか見ていこう!

〇はじめに

腹部手術後に生じる腸管機能障害は、入院期間の延長や医療費の増加につながる主な要因となっています。これは一般的な現象であり、避けられない結果と考えられてきました[1]。そのため、術後の腸管機能障害を改善することは非常に重要です。腸管機能障害は、腹部が張った感じや吐き気、嘔吐、排便や排尿の遅延などが特徴です。過去数十年にわたり、ファストトラック手術など多くの治療戦略が術後の腸管機能障害の改善に用いられてきました[2]。しかしながら、これらの方法は効果が限定的であり、副作用が完全にないわけではありません。

大建中湯は、アジア太平洋地域で最も広く使用されている伝統的な生薬の一つです。この薬には山椒、加工生姜、高麗人参などの有効成分が含まれています[3]。最近では、腸の機能障害の改善に向けて使用されており[4]、ほとんど副作用の報告がありません。腸の虚血関連疾患では、大建中湯が微小血管の機能障害改善に関連していることが示されています[5]。いくつかの研究では、大建中湯が上腸間膜動脈の血流を有意に増加させ、その結果、腸の機能障害が改善されることが示されています[6]。しかし、術後の腸管機能障害の改善における大建中湯の効果については、まだ明確な結論に至っていません[7,8,9,10,11,12,13,14,15]。そこで、腹部手術後の腸管機能障害に対する大建中湯の有効性を評価するために、関連するランダム化比較試験のメタアナリシスが行われました。

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