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喘息のないGERD患者をPPIで治療すると、喘息の新規発症を増やしますか

〇はじめに
胃食道逆流症(GERD)は、慢性咳嗽の一般的な原因です。GERDは喘息症状の一因となることもあり、また喘息の引き金となる可能性も指摘されています。GERDの有無にかかわらず、喘息患者におけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の喘息転帰に対する有効性を確認するため、多くの研究が行われてきました。3カ月のPPIが、GERDを有する喘息患者の73%で喘息症状と肺機能が改善したとする報告もあります。一方で、PPIは無症候性GERDを有する喘息患者の喘息コントロールを改善させなかったとの報告もあります。今回紹介する研究の目的は、非喘息患者におけるPPI療法と、その後の喘息の発症との関連を明らかにすることです。

〇GERDと慢性含嗽:GERDは喘息のトリガー?
臨床的に、胃食道逆流症(GERD)は慢性咳嗽の一般的な原因であるとしばしば報告されています(PMID: 15684286;PMID: 16428686)。GERDは喘息症状の一因となることもあり、また喘息の引き金となる可能性も指摘されています(PMID: 3224694; PMID: 8052276; PMID: 12928073; PMID: 28797732)。その原因は、酸や胃内容物が気道や肺胞に誤嚥され、下気道の受容体を刺激したり、慢性的な炎症や肺胞-毛細血管膜の損傷を引き起こしたりすることです(PMID: 17099032)。GERDと喘息はしばしば併存します。喘息患者におけるGERDの有病率は30~90%であるのに対し、非喘息患者では平均24%です(PMID: 19817951;PMID: 29193245)。

〇GERD治療とPPI:GERD併発の喘息ではPPIにより喘息改善の報告
GERD治療にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用が含まれますが、これは最も一般的な胃酸分泌抑制薬であり(PMID: 18174564)、第一選択薬です(PMID: 10868896)。PPIはGERDとの関連が疑われる慢性咳嗽の経験的管理に用いられることが多い薬です(PMID: 27614002)。実際、2つのプラセボ対照試験では、PPI治療がGERDに関連した慢性咳嗽を緩和することが示唆されています(PMID: 12928073)。GERDの有無にかかわらず、喘息患者におけるPPI療法の喘息転帰に対する有効性を評価・確認するために多くの研究が行われてきました。例えば、オメプラゾールによる積極的な酸抑制療法を3ヵ月間行ったところ、GERDを有する喘息患者の73%で喘息症状と肺機能が改善しました(PMID: 7924731)。

〇喘息を有さない患者へのPPIは喘息の新規発症と関連するか解明したい
PPIはGERDによる慢性咳嗽の治療における重要な要素であり、一部の患者では喘息症状と肺機能を改善する最適なレジメンです。今回紹介する研究の目的は、非喘息患者におけるPPIの使用とその後の喘息有病率との関連を明らかにすることです。タイトルは「プロトンポンプ阻害薬と喘息との関連: 集団ベースのコホート研究」です。

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