中医学的体質は2型糖尿病患者の全死亡リスクと関連しますか
はじめに
中医学における体質の背景
中医学は、中国でも世界でも人気のある補完統合医療です。台湾では国民健康保険が適用されています。中医学は体質の理論に基づいており、個人に合わせた医療を行います。個人の中医学的体質は、体内の陰陽のバランスによって決まります。陽は身体機能を維持するエネルギーに関係し、間質液、体温、臓器系の生理機能の調節によって評価することができます。陰とは、間質液や血液を通じて細胞に物質を送り届けることを指します(1)。
外的要因や環境刺激がバランスを崩すと、便が緩くなる、疲労感、悪寒、息切れ、尿量の増加などの身体症状が現れ、陽虚、すなわちエネルギー不足を示すことがあります(2、3)。一方、のどの渇き、尿量の減少、硬い便、ほてりなどの症状は、陰虚、すなわち体液や血液などの必須物質の不足を示すことがあります(2, 3)。さらに、手足のしびれ、めまい、胸のつかえなどの症状は、痰湿、すなわち動的調和状態のアンバランスを示すことがあります(4)。
過去の研究により、体質の個人差が病気や病気の進行に関係していることが示されています(4, 5)。中医学の専門家は、同じ病気の診断を受けている患者に対しても、個人の体質に合わせてさまざまな治療法を採用しています。この概念は中国語で 「同病異治 」と呼ばれ、個別化医療の概念に似ており、患者の徴候や症状に基づいて特定の中医学的治療を処方し、最も最適な治療結果を得ることを意味します(5, 6)。
アウトカム指標としての全死因死亡率の重要性
乳幼児と若年成人の死亡率は、公衆衛生と医療の改善により、過去20年間で減少しています(7)。一般集団では、若年成人は中高年成人に比べて死亡リスクが低く、特に糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患が原因となっています(8)。人口の高齢化が進む中、中高年者の死亡率に影響を与える因子を明らかにすることは、臨床診療や公衆衛生政策にとって重要です。人口動態の変化により医療費と医療制度が高騰する中、コスト削減のためには死亡率をターゲットとした予防サービスを優先する必要があります。
この研究課題で何が行われていないか
2型糖尿病の有病率と罹患率は世界中で着実に増加しており、臨床的、社会経済的に大きな負担を伴う公衆衛生上の重大な問題となっています(9)。糖尿病は死亡率の主要な原因であり、若年死亡の原因となる大血管合併症と細小血管合併症の両方に関連しています。死亡率に関連する因子を明らかにすることは、若年死亡率に対処し、死亡リスクの推定精度を向上させる上で有用です。糖尿病治療に関する研究では、中医学的体質と健康関連の生活の質(10)、糖尿病網膜症(11)、アルブミン尿の発症(12)など、さまざまな臨床転帰との関連が検討されてきました。しかし、中医学的体質と死亡率との関連を検討した先行研究はありません。そこで本研究の目的は、中国人の2型糖尿病患者を対象に、中医学的な体質質問票(BCQ)で測定したベースラインの中医学的体質と全死亡リスクとの関連を検討することです。
訳注)有病率は、ある一時点において、疾病を有している人の割合である。罹患率は、一定期間にどれだけの疾病者が発生したかを示す指標であり、発生率の一種である。罹患率と有病率との間には、平均有病期間がほぼ一定であるとき、以下の関係が成り立つ。有病率=罹患率×平均有病期間。
エビデンス
「2型糖尿病患者における中医学的体質と全死亡との関連:台湾の医療センターにおける前向きコホート研究」
【はじめに】
本研究の目的は、中医学におけるベースラインの体質と、中国人の2型糖尿病患者における全死因死亡率との関連を検討することである。
【調査方法】
2010年にマネージドケアに登録された2型糖尿病患者887人を対象とした。これらの個人を2015年まで追跡し、死亡状況は台湾National Death Datasetsを用いて決定した。陰虚、陽虚、痰湿を含む参加者のベースラインの中医学的体質を、質問票を用いて評価した。多変量Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した。
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