「元の世界に戻してほしい」?いえ、「安心して過ごせる世界に進化させよう」

 こちらの記事。PCR検査を充実させて欲しいと主張している人に対して「検査したところで、本当に陰性かどうかはわからない」とド正論で対応していたことを反省し、その人達が抱えている不安に対して向き合うべきだったと反省している。病理医のヤンデル先生の記事です。

 「経済が死ねば皆が死ぬ」と主張して、高齢者を隔離して、若者は自由な経済活動をと主張する人もいる。確かに、COVID-19で死ぬよりも職を失って死ぬほうが確率が高い。

彼らが望むのは、もとのようにマスクもせず前のように人と人とが何も心配せずに楽しくワーワーできる社会と思われる。

 残念ながらそんな社会はしばらくは戻ってきません。 

こんな不安を抱える人達に医療従事者は事実を伝えて冷たく突き放すだけでいいのだろうか。
かといって、気持ちに寄り添うだけでいいのだろうか。
 医療的な正しさを逸脱してはならないが、国民の気持ちを踏みにじるのも公衆衛生に寄与していない、プロフェッショナルとしての振る舞いではない気がする。

 当noteでは、主に公的情報や根拠のある情報をもとに公衆衛生に寄与する方向性で行きたいと考えています。

 元の世界に戻れなくても、良い方向に進んだことはあるのではないか?
 

国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報ダウンロード2020年
今年に入ってからの各種感染症の発生状況を週報にしたものです。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html
こちらは、「平成11年4月1日から施行された感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)に基づき、感染症法に規定された疾患の患者が、全国でどのくらい発生したのかを調査集計しています。また、過去のデータとの比較なども提供しています。」
 これらの疾患はどのように報告されているかといいますと、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html#list06

厚生労働省の「感染症法に基づく医師の届出のお願い」のページです。こちらのサイトによると
診断したら即報告を必要とする感染症

指定された全国の一部の医療機関が報告するもの
があります。
それらを集計して、全国の感染症の流行状況を把握するものです。発生したら報告するものについては、どのようなルートで感染したのか調べたりするなど、より詳しい調査が必要なものです。(流行が拡大したら国民の生命の危機が及ぶので)

そこで、2020年の感染症の流行状況を参照してみましょう。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html
の最新号を参照しましょう。(ページの一番上)
これによると、今年に入ってから、ほとんどの感染症の発生数が減少(なかにはほとんど発生していないものまである)しています。
(対象となる疾患は
 インフルエンザ、咽頭結膜熱(いわゆるプール熱)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎(ロタウイルスも含めたもの/ロタウイルスによるい感染性胃腸炎も別にデータあり)、水痘(いわゆる水疱瘡)、手足口病、伝染性紅斑、突発性発疹、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎(いわゆるおたふくかぜ)、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎、細菌性髄膜炎、無菌性髄膜炎、マイクプラズマ肺炎、クラミジア肺炎U(オウム病は除く)、RSウイルス感染症
です)

 これは、3密を避けて、手洗いをしっかり行った結果ではないでしょうか?

こういう地道な感染対策は結果が見えづらいものです。実行しなかった場合との比較ができませんから。それでいて、継続し続けるのは大変で、苦行に思えます。

 きっちり手洗いをするだけで、これだけ病気が防げるのですから、この習慣は継続しましょう!

 
 なお、水痘に関しては2014年10月1日から定期接種の対象となり、それ以降は患者の発生(特に予防接種を2回行っている年代の幼児:が少なくなっています。
水痘ワクチンとは(1歳になってすぐと1回目接種から3ヶ月後の2回接種)
https://www.wakuchin.net/vaccine/varicella.html
水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化 ~感染症発生動向調査より・第3報~
https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/7620-varicella-20171020.html
(2015年には一気に発生数が減っています)
予防接種で対処できるものは予防接種を行い、手洗いうがいマスクで対応できるものはしっかり行い、自分で不安を減らしましょう。その実感を提供できるのがデータであり、それをわかりやすく伝える医療従事者の仕事です。



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