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【エンジニアリングとビジネス】:エンジニアチームの力とビジネス価値の関係性を紐解く〜『CTOの頭の中:技術を財務で表現する』から考える

こんにちは。
PharmaXエンジニアリング責任者の上野(@ueeeeniki)です!

noteを平日に毎日投稿するチャレンジも3週目に突入しました。

今日は、CTOやエンジニアチーム界隈で度々話題になる「エンジニアチームの力とビジネス的価値」の関係について、自分なりの理解をアウトプットしたいと思います。

この話題は、いろんなところで語られていますが、まだ自分の中ではしっくりきていないところも多かったので、これまでの数年間の集大成として自分の言葉でまとめてみました。

あらかじめ申し上げておくと、今回の記事はビジョナルCTO竹内さんの『CTOの頭の中:技術を財務で表現する』やピクスタCTO後藤さんの『経営とソフトウェアエンジニアリングの接続』などを参考に書いています。

他のCTOの例に漏れず、財務諸表のアナロジーでエンジニアチームの力(資産、BS的)から売上や顧客の喜びの感情などのビジネス的価値(フロー、PL的)がどのように生み出されていくのかを財務諸表のアナロジーで解説します。

今後、「エンジニアリングとビジネス」というシリーズで、エンジニアの生産性の話題や技術的投資の判断についてなど、CTOの方や経営層の方が気になる「エンジニアリングとビジネスをどのように紐付けて考えるべきか?」ということを議論していきたいと思います。

そもそもなぜエンジニアチームの力とビジネス価値の関係性を考えることが大事なのか?

改めて、なぜCTO界隈で度々話題になるほど「エンジニアチームの力」と「ビジネス的価値」の関係性が大事なのでしょうか?

一言で言えば、CTOが「エンジニアチームを強くすることを通じて、その企業がビジネス価値を生み出すこと」に責任を負っているからです。
一方で、エンジニアチームを強くすることは、必ずしもすぐにビジネス価値を生み出すことにはつながりません。

つまり、エンジニアチームに力のある企業が、ビジネスが上手くいくとは限りません。
こう言ってしまえばそれまでですが、仮にエンジニアチームの力がビジネス的価値を生み出さないのであれば、我々CTOやVPoE、エンジニアリングマネージャー、テックリードなどと大仰に呼ばれる人たちは一体何をしているんだ?ということになってしまいます(笑)

エンジニアもビジネスパーソンであり、最終的には売上などのビジネス的な価値を生み出さなければ株式会社に勤めている意味はありません。

この問いへの答えを出すためには、例えば、エンジニアチームで勉強会をしている時、我々は何をしているのか?すなわち何を高めるための努力をしていて、それがどのようにして最終的なビジネス価値の創造に寄与していくのか?という一連の流れを理解する必要があるでしょう。

この流れを理解することで、エンジニアチームは何をすべきなのか?マネージャーと呼ばれる人たちはどのようなことを考えて日々エンジニアチームを強くすることと向き合えばいいのかが明らかになってきます。
だからこそ、多くのCTOやマネージャーの方々が「エンジニアチームの力とビジネス価値の関係性」をがんばって言語化しようとしているのだろうと思っています。

エンジニア総生産力からビジネス価値が生み出されるまで

PharmaXでは、下記のような図でエンジニアチームの力からビジネス的価値が生み出されるまでの流れを可視化しています。

かなりややこしい図ですが(笑)、一つ一つ説明していくのでご安心ください。

エンジニア総生産力からビジネス価値が生み出されるまでの流れ

大まかには、資産・ストックがフローを生み出し、フローがまた資産となってまた別のフローを生み出すという関係になっています。

エンジニア総生産力(エンジニア資産)からエンジニア生産物が生み出される

まず、一番右側がエンジニアチームの力とこれまでぼやかして呼んでいたもので、私たちは、エンジニア総生産力(エンジニア資産)と呼んでいます。
これは、エンジニアチームにどのくらい生産物を生み出す力があるかどうかであり、会社としての資産です。

エンジニア総生産力をスキルに分解して解説するのは、記事が長くなってしまうのでまた別の記事で行えればと思いますが、実体はどこまでいっても、人=エンジニア、お金、ツールなどでしかありません。

このエンジニア総生産力によって生み出されるのは、例えばアプリケーションのソースコードやクラウドインフラの設定など(下図の右上に向かう矢印)です。
またエンジニアチームによって生み出されるのは、プロダクト系のアウトプットだけではなく、今私が書いているこの記事や社外イベントへの登壇など(下図の左下に向かう矢印)も含まれます。
もっと細かいところまで含めば、採用活動で私がエンジニアの方にお送りしているDMなども、ソースコード同様に労働によって生産された列記としたアウトプットです。

エンジニア総生産力からエンジニア生産物が生み出される

これまでの説明でなんとなくお分かりいただけたように、エンジニアチームとしての力をエンジニアリング力ではなく、エンジニア総生産力と呼ぶのは、エンジニアチームによって生み出されるものは、いわゆるエンジニアリングだけに閉じないからです。

注意していただきたいポイントは、これらのアウトプットは、すべてがプロダクトに活かせるわけではなく、そのままエンジニア総生産力に跳ね返ってくるものもある(図の上の矢印の循環)ということです。
例えば、勉強会はエンジニアチームの時間と労力をかけて行う生産活動ですが、チーム全体の知識量を底上げするため、エンジニア総生産力を向上させます。

また、技術的にどのように設計するのかの議論やデリバリーに対しての議論などを通じてエンジニアチームの総合力が伸びるということもあるので、 アウトプットの過程(いわゆるOJT)を通じてもエンジニア総生産力は高まっていきます。

エンジニア生産物はビジネス資産に転換される

次に、エンジニア生産物は下図のようにビジネス資産に転換されていきます。
ソースコードなどは、分かりやすくプロダクトという資産になるでしょう。

プロダクト資産としては、基本的にはコード、インフラやその他のシステムを動かすのに必要なツール類の設定などの分かりやすい資産から、
プロダクトの体験、顧客(患者)が感じるロイヤリティ、ブランド力などの目に見えない資産までが貯まっていきます。

エンジニア生産物はビジネス資産になる

生産活動を行えば、同時に負債も溜まっていきます。
プロダクトに貯まる負債の1つが、技術負債と呼ばれるもので、技術負債が貯まることで、コードを追加してもあまり資産が積み上がらないといった事態の発生します。
そして、技術負債を解消するためのリファクタリングなどの生産活動が必要になってしまい、せっかくのエンジニアのアウトプットが負債の活動に消費されます。

採用活動や広報などの採用系の生産活動は、記事などの目に見える形や知名度・ブランド力の目に見えない形で採用資産として溜まっていきます。
この記事などは分かりやすくストックとして溜まっていき、採用候補者の方に後からでも見ていただくことができます。
PharmaXでもありがたいことに、「イベントの動画見ました」「記事読みました」と言っていただけることも増えてきています。

ビジネス資産からビジネス価値が生み出される

そして、いよいよビジネス資産から売上などのビジネス価値が生み出されます。

ビジネス資産からビジネス価値が生み出される

先程の図からは意図的に省いていましたが、会社にとってのビジネス資産には、プロダクトチームが生み出したプロダクト資産の他にマーケティングチームやオペレーションチームが生み出したマーケティング資産(図内のMKT資産)やオペレーション資産(図内のOps資産)などが含まれます。

そして、対顧客市場に対しては、それらの資産を使って、営業・カスタマーサクセスチームが主に対価=売上というビジネス価値を生み出します。
その他にも、顧客の感情や顧客データなども生み出します。

その結果、例えば顧客の正の感情は、口コミや知名度という形で、新たなビジネス価値を生み出すためのビジネス資産となります。
実際、SNS上で口コミが広がるほどの素晴らしいプロダクトが作れていれば(=大きなプロダクト資産やマーケティング資産があれば)、売上を作り出すことはより簡単になるでしょう。
一方で、生み出してしまった負の感情は、例えばSNS上の悪評となって返ってきて、負のマーケティング資産となります。
また、手に入れた顧客データも資産となり、次のビジネス価値を生み出すために有効活用されるでしょう。

対労働市場に対しては、採用資産を使って、採用チームが採用活動を行い、主に人(=労働力)を獲得します。
採用活動を通じて、私たちは、労働市場から人を獲得するだけではなく、採用候補者の方の感情や採用データなどの価値も獲得します。
プロダクト同様、感情やデータも資産や負債となって蓄積します。

このようにビジネス的活動を行うのが、対顧客市場であっても、対労働市場であっても、市場で生み出されたものは、資産または負債となって返ってくるのです。

これまでの議論から分かるように、営業チームや採用チームは、エンジニアチームよりもビジネス的価値を生み出すまでの距離が近いのです。
だからこそ、営業チームや採用チームは、自分たちの活動がビジネス的価値を生み出みだしているということをよりダイレクトに感じやすいということなのでしょう。

このような構造があるため、営業が強い会社でよく聞く、営業チームとエンジニアチームの確執のようなものが生み出されてしまうのだと思います。

最後に〜フローが資産になり、積み上がった資産は新たなるフローを生み出す

最後に最初にお見せした全体図を再掲します。

資産とフローの循環

このように、資産からフローが生み出され、フローは資産となってまた蓄積されます。

エンジニア総生産力のところで申し上げたとおり、エンジニア総生産力の実体は、人・ツール・金でしかありません。
エンジニアが生産することで、生み出されたお金や人は、回り回ってエンジニア総生産力となって返ってきます。

このように、資産とフローは、何度も何度も循環し、ビジネスが上手く行って会社が成長している限りは、蓄積する資産も生み出されるフローも大きくなっていきます。
成長している企業では、まさに「螺旋状」に同じところグルグルと回っているようでいて、段々と上昇していくのです。

冒頭で、「エンジニアチームに力がある企業が、ビジネスが上手くいくとは限らない」と言いましたが、この資本主義社会では、実際にはそのようなことはあまり起こりません。
利益を生み出し続けている企業でなければ、強いエンジニアチームを維持し続けることはできませんし、逆にエンジニアチームが強くなければ、ビジネスで利益を生み出し続けることもできないのです。

まとめ

今回は、「エンジニアリングとビジネス」シリーズの第一弾として、エンジニアチームの生産力からどのようにしてビジネス的価値が生み出されるのか?をまとめました。

これで例えば、エンジニアチームが勉強会をすると何が嬉しいのか?ということが論理的に説明できるようになったのではないでしょうか。
当たり前のようでいて、言葉にするのは非常に難しいと感じますが、今回のように構造がきちんと頭に入っていれば、CTOやマネージャーとして自分たちの活動が生産活動のどこに寄与しているのかを迷うことはなくなっていくでしょう。

少しでもエンジニアチームをマネジメントする立場の方々の参考になれば幸いです。

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