見出し画像

【当院の活躍する薬剤師たち #3】:新潟大学医歯学総合病院救急科|八幡えり佳先生

「救急医療は薬剤師が活躍できる領域だと思います。ぜひ来てほしいですね」

今回お話しを伺ったのは、新潟大学医歯学総合病院救急科の八幡えり佳先生。「領域の専門性から病院薬剤師は欠かせない存在となっており、後進のためにもぜひお話させていただきたいです。」と快くインタビューを引き受けてくださいました。

新連載「当院で活躍する薬剤師たち」第3弾は、救急医療を専門領域とする八幡先生に、薬剤師の活躍の様子や期待する役割などについてお話を伺いました。

▼病院のご紹介
新潟大学医歯学総合病院は3次救急医療機関として高度救命救急センター、新潟県東部ドクターヘリ基地および救急外来、集中治療部を担っています。その中で救急科は、日本海側最大規模の急性期疾患診療ユニットとして日々活動されています。年間2,000人近い重症患者さんの治療にあたり、ドクターヘリの要請も全国最多規模。24時間365日体制で手術・カテーテル治療・ECMO(体外式膜型人工肺)を含めた高度救命治療が可能な体制を確立しており、ドクターヘリによる広域搬送を有機的に活用することで、まさに新潟県における「最後の砦」と言っても過言ではない医療機関です。


Q: 新潟大学医歯学総合病院の救急科における病院薬剤師の役割を教えていただけますか?

八幡先生: ICU(集中治療室)と救命救急センターを担当する薬剤師の役割は非常に重要で、なくてはならない存在です。
救急の患者さんは昇圧剤や抗菌薬など多くの薬剤を投与しますし、その上病態は刻一刻と変化するため、常に病態を捉えながら薬の調整を行う必要があります。重症患者を少数の医師で診ているので、薬剤師さんの存在が頼りになります。
集中治療部・救命センターには選任薬剤師が3名いますが、患者さんの中心静脈栄養のプランや腎機能、肝機能などを見ながら薬の投与計画を自主的に立ててくれています。また「点滴でこの薬を使うと配合変化が起きてしまうので別ルートから投与してください」「腎機能が下がっているのでこの薬の量を減らしてください」など薬に関して随時アドバイスをくれます。
一昔前までこういった投与計画の検討や薬の調整はほぼ医師が全部やっていたのですが、現在は薬剤師さんが自主的にやってくれるので大変助かります。おかげで患者さんの診療やご家族への説明に使える時間も増えました。

Q: まさにチーム医療ですね! こうした状況はいつ頃できたのでしょうか?

八幡先生: 5~6年前から薬剤師さんのかかわりが大きくなってきた印象ですね。以前勤務していた違う施設でも同様で、施設間で差はあるものの、集中治療という分野においてはチーム医療が進んできていると感じます。
ICUにおいては、薬の投与ルートが限られることが多いのですが、一方で重症ゆえ多数の薬を同時に投与せざるを得ない、という状況も多くあります。ただ複数の注射薬を混合すると配合変化といって薬の効果を減少させる状況を招く恐れもあり、どのルートでどの薬剤を投与するかを決めるルート管理が非常に重要となります。その他にも、VAP(人工呼吸器関連肺炎)やCRBSI(カテーテル由来血流感染)などの治療やそれに関する臓器障害予防するために、血中濃度に応じて抗菌薬の投与速度や投与量を計算してコントロールする必要があります。
このように複雑な調整が必要な上、即座に薬を調整して投与する必要がある場面が多いので、毎回薬剤部へ問い合わせて対応、といった時間はとれないのです。現在、病棟に薬剤師の方がいてくれて、すぐ相談でき即座に対応してくれるので本当に助かっています。
あと、やはり実際に顔が見えるというのは大きいです。お互いのことがよくわかりますし、関係性が構築されることで何かあればいつでも相談できるという安心感が生まれます。
当院の場合、かなり重症度の高い患者さんも多数運ばれてきますが、各専門家がそれぞれの役割を果たすチーム医療を実践することで、最適な治療が行えていると感じています。

Q: 薬剤師とのやり取りはフロアで行われているのでしょうか?

八幡先生: はい。薬剤師さんは基本フロアにいるので直接やり取りします。「投与量はこのくらいかな」「内服に変えたいんだけど何がいいかな」と気軽に聞いています。患者さん一人一人の点滴ルートを確認して、状況を把握した上でカルテを書いておいてくれているので大変心強いです。
私が不在の時は、薬剤師さんがメモを残してくれています。「採血の結果がこうなったらこのように薬を変えてください」など具体的な提案に加え、状況によっては複数のパターンを提示してくれているので、迷うことなく治療に専念できます。またカンファも一緒に参加しており、医師とは異なる視点からアドバイスをくれるので気づきが多いですね。
当院は看護師の看護体制(病棟ごとの入院患者に対する看護師の数)が2:1もしくは4:1なのですが、重症患者が多く複数の薬剤を投与されているケースがほとんどです。そのため看護師も薬剤に関してわからないこと、気になることが出てくる場面も多く、そんな時は薬剤師さんに聞いています。「この薬とこの薬は一緒に投与されていても大丈夫ですか?」と直接聞いてしまった方が医療安全的にも安心ですし、仮に薬剤師がその場でわからなかったとしても1時間もあれば調べてきてくれます。また当院の薬剤師は栄養士と一緒に栄養ラウンドにも回ってくれていますし、まさに感染管理と栄養管理の要的存在ですね。

Q: 頼りになる存在ですね。最後に、薬剤師の方々に対するメッセージをお願いします。

八幡先生:: 集中治療室や重症フロアはどんどんチーム医療に移行していますし、薬剤師が活躍できる領域だと思います。最近は日本集中治療学会でも活躍している薬剤師さんをよく見ます。重症患者管理のセミナーの講師で参加されている薬剤師もおりますし、他の職種と一緒に高めあえる存在です。専門性が高く他の病棟ではほとんど使わない薬を扱うので薬剤師の育成も大変、と伺ったこともあります。モチベーションがある方は是非この領域に来てほしいですね。

いいなと思ったら応援しよう!