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シクレソニドで新型コロナの症状改善

「シクレソニドが新型コロナの肺炎症状を改善させる」
朝、このニュースを見てビックリしました!
アビガンや抗HIV薬の有効性がなかなか見いだせないなか、明るいニュースとなりましたね。

シクレソニドってどんな薬?

シクレソニド(商品名:オルベスコ)は気管支喘息に使われる吸入タイプのステロイド剤で、2007年に販売開始されてます。
スプレータイプで1日1回吸入。気道の炎症を抑え、喘息による咳の発作などを予防することができます。喘息治療薬として小児にも使用されています。
薬価は2000円前後(用量や吸入器によって異なります)
副作用は 嗄声 、咽喉頭不快感 、咽喉頭疼痛等がありますが、吸入薬のため全身性の副作用は少なく、安全性が高い薬です。

抗ウイルス作用を併せもつ

シクレソニドは抗炎症作用があるので肺炎を改善させることはなんとなくわかるのですが、驚くことに抗ウイルス作用も併せもつとのこと。しかも現在有効治療薬として投与されている抗HIV薬のロピナビル・リトナビルと同等、あるいはそれ以上のウイルス増殖防止効果がみられたようです。

気管支喘息の治療に使われる吸入タイプのステロイド剤はいくつかあるのですが、シクレソニド以外のステロイド剤では抗ウイルス作用は現時点では認められていません。

新型コロナウイルスの対するステロイド治療は、ウイルス血症を遷延させる可能性や糖尿病の合併症が指摘されており推奨されていないのですが、それは全身投与した場合。
シクレソニドは吸入薬のため、局所(肺や気管支)の表面にとどまり全身性の副作用は起こりにくいのです。

症例は3例

実際に投与された症例を見ましたが、副作用もなく、快復に向かわれています。
【症例1】は抗生剤投与・抗HIV薬を投与したものの効果がなく、食事が取れない、見当障害があった状態から回復し陰性反応となっています。

【症例1】
2月 4 日 咽頭痛、倦怠感、食欲不振
2月 7 日  38℃の発熱
2月 8 日 検体提出
2月10日 陽性判定
2月11日 入院開始、倦怠感が強くほとんど寝たきりの状態で食事も摂取できない状態。疎通不良と見当識障害あり。抗生剤の投与開始も38℃以上の発熱継続。
2月14日 抗HIV薬の投与開始。解熱傾向となるも食欲改善せず、倦怠感も著明。
2月19日 CTにて陰影の増強・範囲拡大を確認。
     抗HIV薬の副作用発現のため(下痢と肝機能障害、食欲不振)抗HIV薬の投与中止
2月20日 シクレソニド吸入開始。
2月22日 37.5℃以上の発熱は認めず、食欲回復。 
     全身倦怠感も改善し室内独歩可能となる。
2月25日 陰性反応
2月26日 陰性反応
2月28日 退院。シクレソニド継続使用中(外来にて診察継続)

【症例2】は肺炎中期の方に投与。陽性反応がでているものの快復に向かわれているようです。

【症例2】
2月 6 日 乾性咳嗽、倦怠感、食欲不振、下痢が出現。37.4℃の発熱あり固形物はほとんど食べられなくなった。
2月16日 陽性反応となり、入院。37.2℃の発熱
2月17日 38℃の発熱。
2月20日 呼吸機能低下。酸素吸入開始。シクレソニド開始
2月21日 食欲改善し、継続していた下痢も回復し普通便となる
2月22日 酸素吸入中止。倦怠感・食欲改善。
     室内で日課のスクワットをする程度まで回復。
2月25日 陽性反応あり
2月27日 陽性反応あり、シクレソニドを増量し継続中。

【症例3】は肺炎初期の方に悪化しないために投与。こちらも陽性反応は出ているようですが、快復に向かっているとのこと。

【症例3】
2月 6 日 乾性咳嗽
2月 8 日 倦怠感、関節痛が出現
2月 9 日 38.9℃の発熱、食欲不振、下痢が出現し、
     食事がほとんど摂れなくなる。
2月16日 陽性反応、体温36.4℃で倦怠感あり。
     食事は半量程度。
2月20日 増悪予防のためシクレソニド開始。食欲改善傾向
2月21日 酸素吸入開始
2月22日 症状改善のため酸素投与中止。全身倦怠感の改善あり
2月25日 陽性反応
2月27日 陽性反応。吸入量を増量し継続中。

これらの症例より、抗ウイルス作用と抗炎症作用によるウイルスの早い段階での陰性化や重症肺炎への進展防止効果が期待されるため、投与時期は感染初期~中期あるいは肺炎初期が望ましいとされています。

臨床応用についての検討が必要

シクレソニドの喘息治療としての成人用量は1日1回400μgを吸入(最大投与量は1日800μg)となっています。
しかし、新型コロナのウイルス増幅時間が6~8時間であることや肺胞に十分量の薬剤を到達させる必要があることから、頻回かつ高用量の投与を推奨しています。

新型コロナウイルス陽性の肺炎に対して
(1)シクレソニド200μg1日2回、1回2吸入を14日間(1日800μg)
(2)シクレソニド200μg1日3回、1回2吸入を約9日間(1日1200μg)

用法用量は(1)を基本とし、重症例、効果不十分例に対しては(2)を検討するとしています。
実際に【症例2】【症例3】に対しては1日1200μgが投与されています。高用量になればなるほど副作用のリスクも高くなりますが、現段階では出ていないようです。

今後の使用症例の蓄積と検討に期待。

今回の報告症例はまだ3例・・・。
抗ウイルス作用があるとされながらも【症例2】【症例3】はまだ陽性反応が出ています。用量も推奨の段階でまだ未確立。

しかし、明るいニュースであることにはちがいないですね。
シクレソニドによる早期投与治療は、安全性に加え安価でもあることから、新型コロナの治療に大きなメリットをもたらすと考えられます。
今後の使用症例の蓄積と検討が望まれます。


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