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第7話 余韻

「そろそろ行かなきゃ……」

今回のバスツアーは、花火大会が終わった後に夜行で新宿まで戻るコースになっている。

私はこれから鹿児島まで南下する旅程を組んでいるので、友人やほかのお客さんとは会場でお別れだ。

3年ぶりの開催とあってか、ホテルもなかなか予約できなかった。3か月前に宿を探したものの、予約できたのは会場から電車で1時間半のところ。

混み具合や終電を考慮して、早めに会場を後にした。残りの花火は歩きながら鑑賞する。

私と同じような状況なのか、帰り支度を始めている人も多かった。通行止めになっている橋に向かって、長い行列ができている。もはや橋がどこにあるのかもわからないほど長い。

(初日からドラマティックな1日だったな...…)

新宿を出たのが何日も前のことのように感じられるくらい、感情が目まぐるしく動いた1日だった。

新宿に向かう旅路はいつもと違う景色に感じられて胸が高鳴ったし、バスのエアコンが壊れたときは花火を見られないんじゃないかとハラハラドキドキした。

たくさんの人の想いがつまった花火は涙が出るほど感動的で、旅暮らしを始めるために準備してきた1年半の努力が報われた気がした。

一緒に感動を共有できる友人と行けたことにも感謝があふれた。

長蛇の列に並びながら今日の出来事を振り返っていると、「通行止めを解除しまーす!」という声が遠くから聞こえてきた。

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