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フルオロキノロンはなぜ、濃度依存性の効果なのか?

 フルオロキノロンには、必ずフッ素原子が導入されている(下図参照)。
 フッ素原子は、電気陰性度が高く、イオン化しやすい。
 DNAジャイレースを阻害するという作用機序は、「キレート形成」を利用した作用なので、イオン化しやすい原子がある方が都合がいいからだ。

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 しかし、イオン化しやすいということは、以下のようなイメージで水溶性物質になってしまう。
 電気陰性度が高い=イオン化しやすい(極性が高い) → つまり、どうしても水溶性になってしまう(o/wが小さくなりすぎる)。

 極性が大きいと、細胞膜を通過しにくいため、まず消化管から吸収されにくい。
 さらに、作用部位である細菌の内部にたどり着くのも、(細菌の)細胞膜を通過する必要があるが、それも極性が高いと困難である。

 なので、受動拡散(単純拡散)の原理で吸収されるよう、一度に大量投与して「濃度勾配」をつけることで、若干強引に吸収させているイメージか。

 逆に言えば、一度に大量投与しないと、細菌の細胞内に十分量入らないといえる。
 なので、フルオロキノロンは「濃度依存性」の効果と言われるのだ。

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。