脂溶性が高すぎる分子は吸収されない!
「脂溶性が高いと吸収されやすい」・・・これが医薬品業界の常識だ。
しかし!
脂溶性は高ければいいというものではない。
高すぎると吸収されなくなる。
それは、細胞膜の構造を思い出せば納得できる。
細胞膜は「脂質二重膜」と言われるが、内側も外側も表面は親水性になっているから。
また、脂溶性が高すぎると胃液や腸液に溶けないというのも理由の一つだろうと思われる。
医薬品分子は、ある程度親水性部分も合わせ持っておかないとバイオアベイラビリティが悪くなるのだ。
例として、トロンビン阻害薬の「ダビガトランエテキシラート」が挙げられる。
ダビガトランの油水分配係数は「logP=3.8」。これは脂溶性が「10の3.8乗」であることを意味しており、油への溶けやすさが水の6,300倍以上であるということ。
そこで酸塩基乖離(pKa)の性質を利用して、ダビガトランは酒石酸と一緒に製剤化すること(下図参照)で、消化管のpHを下げて分子型とイオン型をコントロールして吸収能を高める製剤技術などが用いられている。
しかし、酒石酸が非常に吸湿性が高いため、一包化に適さないというデメリットも合わせ持つことになった。
「酸塩基乖離(pKa)」の詳細については別稿にて。
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仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。