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フマル酸第一鉄1カプセルはクエン酸第一鉄ナトリウムだと何錠に相当する?

 汎用されている医療用鉄製剤の鉄含有量と用法用量は以下の通り。

○クエン酸第一鉄ナトリウム470.9mg/錠(鉄として50mg/錠)
 用法:通常、鉄として1日100~200mg(2~4錠 or 1.2~2.4g)を1~2回に分けて食後経口投与
○フマル酸第一鉄305.0mg/錠(Fe++(鉄)として100mg/錠)
 用法:通常、1日1回1カプセルを経口投与
○乾燥硫酸鉄を鉄として105mg/錠
 用法:通常、鉄として1日105~210mg(1~2 錠)を1~2回に分けて経口投与
○ピロリン酸第二鉄50mg/mL(鉄として6mg/mL)
 用法:6~15歳には通常、鉄として60~90mg(10~15mL)を3~4回に分けて経口投与。
 
※1~5歳については添付文書参照。

※ピロリン酸第二鉄製剤は通常小児適応だが、嚥下困難の高齢者に投与されることもあるので併記した。

 単純計算で「クエン酸第一鉄ナトリウム2錠=フマル酸第一鉄1カプセル≒硫酸鉄1錠」となりそうだが、鉄の吸収率を考慮した場合はどうだろう?

 ってことで、インタビューフォームから体内動態データを持ってきて比較。

 まずはクエン酸第一鉄ナトリウム。

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 次にフマル酸第一鉄。

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 そして、硫酸鉄。

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 ついで、ピロリン酸第二鉄。

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 これらの血中動態を見ると、フマル酸第一鉄と硫酸鉄は添付文書通りの使い方で同等と判断できる。
 クエン酸第一鉄は1回50mgで使われることが多いが、これを1回100mgにしても、フマル酸第一鉄や硫酸鉄の血清鉄濃度には少し及ばないことを理解しておく必要がありそう。
 嚥下困難な高齢者等にピロリン酸第二鉄が用いられることがあるが、これでフマル酸第一鉄や硫酸鉄と同等の血清鉄濃度150μg/dL程度を確保しようとすると、計算上は体重50kgの人で1回50mL程度の投与量が必要となり、あまり効率的ではない。(※2mL/kg投与で血清鉄濃度が100μg/dL→200μg/dLへ100μg/dL上昇しているので、50μg/dL上昇を狙うなら1mL/kgと推測。)
 ちなみに、ピロリン酸第二鉄は製剤1mL中に鉄として6mg含有されているので、他の製剤同様、鉄として100mg相当を投与する場合は、1回17mLくらいは投与しないといけないが、そうすると計算上、血清鉄の上昇はせいぜい20μg/dL止まりだと推察される。

 フマル酸第一鉄からクエン酸第一鉄に変更する場合は、1回2錠(100mg)が望ましく、1回1錠(50mg)で投与してるクエン酸第一鉄をフマル酸第一鉄に変更した時は、これまで以上に血清鉄濃度が上がる可能性を視野に入れおく必要がありそうだ。

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薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志
仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。